オルタナバンド・Tilly Birdsを形作る“予測不能性”。注目の3人組が語るタイの音楽シーンと日本への想い

Interview
タイのオルタナティブポップバンド・Tilly Birds(ティリー・バーズ)が2024年10月1日に新曲「Retro-39」をリリースした。日本のファンベースを着実に築いている3人組に、海外の音楽シーンに精通しているライター・竹田ダニエルがインタビュー。

タイの3人組ポップバンド・Tilly Birds。2011年に結成した彼らは「Just Being Friendly」(2021年)や「Same Page?」(2020年)などのヒット曲によりタイの音楽シーンで注目度を高め、国内外の大型フェスにも出演するなど確かな地位を築きつつある。

これまではタイ語の歌詞の楽曲が多かった彼らだが、10月1日にリリースされた最新シングル「Retro-39」は全編英詞で綴られており、世界中へと活動の規模を広げていこうという意欲が感じられる楽曲となっている。また、今年は日本で初のライブを開催したほか、日本のアーティストとのコラボレーションも楽しみなアーティストだ。

今回はメンバーの3人に、フリーランスの音楽エージェントとしても活動しているライター/ジャーナリストの竹田ダニエルがインタビュー。最新シングル「Retro-39」についてはもちろん、タイの音楽シーンや日本への想いについても語ってもらった。

タイの音楽シーンに新たな風を吹かせたい

ー新曲「Retro-39」のリリース、おめでとうございます! 日本のファンの間でも、MVが話題になっていて最高ですね。新曲リリースのニュースなどにもSNSで反応してくれていて、Tilly Birdsがとても愛されていることを実感します。このインタビューでは来年リリース予定の新しいアルバム、そしてタイの音楽シーンなどについて教えてもらいたいです。新アルバムに向けて、ファンはどんなものを期待できますか?

インタビュイー画像

Third(Vo.):

アルバムや曲をリリースするたびに、ファンから「何を期待していいかわからない」と言われることが多いんです。その予測不可能さこそが、僕ららしさなんですよね。リリースされてからの驚きも、楽しみの一部っていう。

ーアルバムには特定のテーマがあるのでしょうか、それともレコーディング中の流れに任せていった感じですか?

インタビュイー画像

Billy(Gt.):

テーマは元々あったけど、徐々に発展していったものでもあります。「Retro-39」を作る頃にはアルバムのテーマも固まっていて、それに合わせて曲を書きました。すでにリリースされているシングル「White Pills」と「Retro-39」の2曲を比較するだけでも、随分サウンドが違うのがわかりますよね。アルバム全体でも…そういった楽曲の多彩さに期待できると思います。

ー「Retro-39」の制作の発端は何でしたか?

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Billy(Gt.):

実はアルバムに入れるために作っていた軽めの曲がもう1曲あったのですが、それがカットされてしまって。それで、その穴を埋めるために新しくこの曲を作ることになりました。

ー新しいリスナーを引き込むことを期待していますか?

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Billy(Gt.):

もちろんです。新曲を出すたびにそう願っていますが、この曲では特にそうですね。

ー私が去年12月、タイの<Big Mountain Music Festival>に行ったときも感じたのですが、タイの音楽シーンはとても活気がありますよね。特に若者のエネルギーがすごいのと、面白いポップミュージックがたくさんある。日本でもタイ音楽には強いファンベースがありますが、今のタイの音楽シーンについてどう感じていますか?

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Billy(Gt.):

ここ4年だけを切り取っても、タイの音楽シーンは大幅に変化しました。特にコロナウィルスのパンデミック以降、インディ音楽やポップミュージックを代表するような新しいアーティストも増えたし、ヒップホップ、R&Bの人気もどんどん増した。T-POP、特にボーイズグループやガールズグループの台頭も重要です。コロナ以降、定番バンド以外にも新しいバンドがどんどんシーンの中で台頭してきて、シーン全体を変えた。

ただ、2024年のタイ音楽シーンはここ数年ほどの面白みは感じられないかもしれません。Spotify Thailandの上位ランキングを見ても、K-POPや他の国の音楽が占めていることが多い。そういうこともあって、僕らで新しい風を吹かせられたらと思うし、若い世代にとっても共鳴するような存在であり続けたい。なにしろ、はじめてツアーをした2020年には僕らもまだまだ若いと思っていたのに、2024年にツアーをしたら観客のほうが僕らより若かったからね! 4、5年って意外と長い年月だし、いろいろなことが変わるということを実感したよ。

日本との深い繋がりとSIRUPやAile The Shotaらに感じるシンパシー

ータイ以外での展開はどう考えていますか? 具体的な目標などがあれば聞きたいです。

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Billy(Gt.):

もちろん目標はあります。タイで初めてブレイクしたときのように、新しいオーディエンスにリーチし続けたいと思っていて。あの「出会い」や「発見」の瞬間を、まったく新しい市場でも再現したいんです。よりグローバルな規模でのツアーを行うことも、その一部です。今言ったら背伸びしすぎみたいな大きな目標もたくさんあるけど、一歩一歩進めています。どこのスタジアムで演奏したいとか、どのフェスに出演したいかとか、具体的な目標もある(笑)。

ー具体的かつ規模が大きな目標があることは、とても大事なことですよね。音楽業界で働いている当事者としても思うけど、音楽業界は常に速いペースで動いているから、アーティストがモチベーションを保ち続けるのは大変。グローバルな成功といえば、台湾の落日飛車 / Sunset Rollercoasterを連想します。彼らは<コーチェラ>にも出演したし、アジアのバンドが世界で成功するのはかなり刺激的です。

次に、みなさんの日本との繋がりについてお聞きしたいと思います。日本のファンも本当に熱狂的ですよね。日本でのライブや滞在の経験はどんな感じでしたか?

インタビュイー画像

Third(Vo.):

今年の<タイフェスティバル東京 2024>や単独公演で日本に行ったのですが、どちらも素晴らしい経験でした。ツアーで訪れた国の中でも、最高の観客だったと思う。僕らのことを本当に楽しみにしてくれていて、会えたことに喜んでくれて。歌詞の意味をわからなくても一緒に歌ってくれるファンもいて。精神的にとても繋がれたと思うし、あんなに温かく日本のファンに迎え入れてもらえたことは、とてもハートウォーミングでした。

最後の曲のときには、あるファンが泣き出してしまって、僕も涙をこらえるのが大変だった(笑)。昔、日本語を勉強したことがあって少しだけ日本語を喋れるので、ステージ上で頑張って話そうとしたら、英語と日本語がごちゃごちゃになってしまいました。でも、日本に着いた瞬間に日本語が予想以上に戻ってきてびっくりしました。日本語をもう一度ちゃんと勉強しようというモチベーションにもなったし、ステージ上でも思い出せて良かったです。
インタビュイー画像

Billy(Gt.):

Miloは日本と深い繋がりがあるんだよね?
インタビュイー画像

Milo(Dr.):

そうなんです。僕の父は仕事で日本とタイを行き来していたので、小さい頃から日本の文化に囲まれて育ちました。ゲームやお菓子、音楽、アニメなど、全部日本のものでしたね。X JAPANみたいなJ-ROCKバンドを聴いて育ったし、ドラムを始めたのもYOSHIKIさんの影響です。日本語を話すのは得意じゃないけど、日本の文化はずっと僕の生活の一部でした。日本で演奏するのは、まさにその文化との繋がりが結実した瞬間のような感じでした。

ー素敵すぎるエピソード! そして安心してください、日本のファンは、たとえ少しでも日本語を使ってくれること自体にとても感謝すると思いますよ! 日本のアーティストとのコラボレーションは考えていますか?

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Billy(Gt.):

はい、アジア各国のアーティストとのコラボをたくさんフィーチャーしたEPを作りたいと思っていて、いろいろなアーティストに声をかけています。日本のアーティストでいうと、SIRUPAile The Shotaは合うと思うし、すごく楽しみです。このインタビューを読んだ日本のファンには結構なネタバレかな(笑)。

ー最高すぎる! 私も、アジア全体でのコラボレーションこそがアジアの音楽シーンにとって明るい未来になると思っています。新しい音楽が生まれる、とても大きな可能性がありますよね。

RELEASE INFORMATION

Tilly Birds New Single「Retro-39」

2024年10月1日(火)リリース
Label:GMM Music Public Company Ltd.

▼Spotify
https://open.spotify.com/intl-ja/track/0dlObt3L90XxFk93xFFAEZ?si=8fa96ae3f21644a1

▼Apple Music
https://music.apple.com/jp/album/retro-39/1766545357?i=1766545358

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Tilly Birds(ティリー・バーズ)

タイ・バンコク出身のオルタナティブバンド。メンバーは、ギター/プロデューサーのBilly(写真右)、作詞/ボーカルのThird(写真中央)、ドラム/アレンジのMilo(写真下)。2011年にバンドを結成し、10年以上共に活動。独特のサウンドと個性を備えた音楽を生み出している。
「Just Being Friendly」や「Same Page?」などのヒット曲でタイの音楽シーンで確固たる地位を築き、香港の<Clockenflap>や韓国の<Busan Rock Festival>などの主要な音楽フェスティバルに出演。さらに、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ラオス、カンボジア、シンガポール、台湾、オーストラリア、日本、中国でのライブなど、アジア太平洋地域でのツアーを成功させた。
2024年10月1日に新曲「Retro-39」をリリース。来年には新アルバムのリリースを控えているなど、今後世界中のオーディエンスに音楽を届けることが期待されている。
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