文: 石角友香 編:Kou Ishimaru
現代ジャズ、ラージアンサンブル、そんなワードが並ぶと難解なイメージを持つリスナーもいるかもしれないが、実際の音楽はすでに私たちの日常に溶け込んでいることが多い。Robert Glasper(ロバート・グラスパー)以降の文脈でKamasi Washington(カマシ・ワシントン)やAlfa Mist(アルファ・ミスト)などを系統立てて聴いている人もいるだろうし、石若駿率いるAnswer to Rememberの作品を聴く人もいれば、彼が関わるポップス作品が好きな人もいるだろう。星野源の新作『Gen』もポストジャンル的なポップミュージックとして象徴的だと言える。いずれにしても現代ジャズは意外に身近だ。今回紹介するCARATORIUMはバイオリンやヴィオラ、チェロといった弦楽器を主軸にジャンルにとらわれずに新しい音楽表現を模索するプロジェクト。主軸となる所属ミュージシャンは作詞 / 作曲も担当する神子巧(Perc. / Synth.)、大原敏生(Vl. / Viola.)、小野葉月(Vo.)、斎藤理(Ba.)、岡本侑(Dr.)で、そこに管楽器や打楽器も加わり小編成も大編成もフレキシブルに展開していく。主な活動としては、都内でもジャズのライブハウスが多い墨田区の<すみだストリートジャズフェスティバル>や、downyやトクマルシューゴらと共演した渋谷WWWでのイベント<Area No.9>への出演などがある。またfox capture planをフィーチャリングゲストに展開したライブ開催などで、このプロジェクトのおおまかな傾向が窺える。
CARATORIUMの初のEP『First Report』は主にこれまでシングルリリースしてきた楽曲のソロパートや一部のバッキングを再録した新たなバージョンを収録している。「Halcyon」はジャズのトリッキーなビートに、ネオソウル的なアンサンブル感、管の豊かなアレンジ、さらに弦や声が加わることでプリミティヴな体験をもたらしてくれる。これはEP全般に言えることなのだが、シングル時よりグッと音像の臨場感が増しているのも聴きどころだ。「Rational Faith」は深い森を思わせるエレクトロニックなイントロに始まり、弦やピアノの生音が視界を拡げてくれる。さながら歌が主人公だとすれば、さまざまな楽器のフレーズは気づきを与えてくれる自分以外の生き物のように聴こえてくる。「Kingdom」は本作中最もコンテンポラリージャズと言われて想起するコード感や構成に近いと思うのだが、管の豊かなアンサンブルとソロパート、リズムのせめぎあいから、ジャズのみならずインストゥルメンタル・セッションの楽しさを素直に享受できる。ボーカルも意味と音の両方の魅力を届けることに成功している。
EP初収録の「Fractal Sky」は、ピアニスト / マルチ楽器奏者として活動する大村優介がプロデュース。一定のリズムで進行するこの楽曲は、むしろポストロックやチェンバーロックに親しむ人には入り込みやすいかもしれない。そして本作の中で最もボーカルが歌詞の意味も伴って聴こえるのが「In the Chamber」だろう。ベースミュージックの要素に加え、無機質に聴こえるビートやグリッチ的な音と有機的な弦や管の対比がこのプロジェクトならではの個性に繋がっている。
実験的でありながら、複数のミュージシャンが呼吸を合わせるオーガニックな楽曲は大げさじゃなく共生を音で実感できる。ラージアンサンブルの魅力を味わってみてほしい。

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