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全世界を震わせた歴史的コロナショック。こと音楽業界に関しては、コンサートやファンミーティング等、数え切れないほどのオフラインイベントが中止となり、CDや映像作品のリリースも相次いで延期になった。影響を受けたのはお隣の国、韓国も同じだ。
世界中の人々が厳しい環境下で悲鳴を上げる中、韓国のミュージシャンたちがコロナ禍に抱いた感情を続々と歌に昇華し始めた。今回は、そんなコロナにインスピレーションを受け誕生した韓国ミュージックを、K-POPからインディの楽曲まで前編・後編に分けて紹介したい。この記事をきっかけに、韓国からのエールが日本の皆さんの耳に届いたら嬉しい。
今や聴いたことがない人はいないのではないかというほど世界中で大ヒットした名曲。BTSのこれまでのダークでワイルドなスタイルからガラッと変わり、ポジティブで爽快感溢れる本楽曲の制作意図は「癒し、慰めのメッセージをコロナで憔悴しきったファンに届ける」こと。そのメッセージが既存のファンの枠を飛び越えて、今までBTS、いやK-POPすら聴いたことのなかった人たちにまで凄まじい勢いで広がり、リリースから早1年が経とうとしている今も尚、ダイナマイトのように私たちを明るく照らし続ける。
公式のMVは見飽きた…という方のために、韓国・ソウルのレコード・ショップ『Vinyl & Plastic』から発信された米の公共ラジオ放送NPRの人気企画『Tiny Desk Concert』の映像をご紹介。ビンテージなルックスで、バンドの生演奏とともに終始リラックスしたムードで歌声を披露。普段のダンスバージョンとは異なり、ボーカルに集中するメンバーの姿を見て、改めてこの曲の歌詞の意味を噛みしめることができる。
「《僕たちは夏を失った。僕の季節を返してよ。》夏の終わりを想起させる物悲しいトロピカルサウンドに乗せてコロナブルーを素直に歌った1曲。
この曲は、1990年代後半のIMF通貨危機を歌ったHANS BAND(한스밴드)の「ゲームセンター(오락실)」にインスピレーションを受けて作られたそうだ。同曲は明るく軽快な曲調だが、歌詞を紐解くと《夜遅くにお父さんのため息》《重いパパの顔、もしかして明日も会社に行くのが嫌なのかしら》と若者の不安な心情を表現している。多くの企業が倒産し失業者が増え、先の見えない不安が世の中を覆った当時の状況に、今のコロナ禍と似た雰囲気を強く感じるのだろう。
IMF危機克服のために作られ、当時国民に広く愛された楽曲「常緑樹」を「2020年版」として編曲し、公開された楽曲。前述の「We Lost The Summer」に続き、通貨危機を歌った楽曲がこれまた形を変えて登場している。
MVは、「COVIDー19と闘っている世界の医療スタッフにこの曲を捧げます。」という表示と共に始まり、最前線で患者の治療を行う医療従事者の写真が織り込まれる作品となっている。自国を飛び越え、コロナから患者を救うべく日々尽力している世界中の医療従事者に感謝の気持ちと敬意を届けようと、EXIDのソルジやスーパージュニアのキュヒョン、リョウク、イェソンなど、韓国の有名アーティスト総勢24組、34人が参加している。
2020年10月22日に女性シンガーソングライター・ジョンミラが3年ぶりにリリースした正規3集『CheongPa Sonata』の収録曲。
《疫病も始まりました。春来れば始まるものも多かったはずなのに、すべてが止まった。》こんな風に多くのことを失い、少し学んで。非日常が日常になる今を生きていきます。》アコースティックギターが奏でる軽快なメロディからは想像もできないが、実はこちらもコロナ禍の情景を歌に乗せている。
アルバムタイトルにある「CheongPa(チョンパ、青坡)」は、首都・ソウルのど真ん中にある、ソウル駅と接しているエリア。周辺の再開発が進み、バイクの音やソウル駅を出入りする電車の音が一日中聞こえるにも関わらず、チョンパには未だに古い建物が残っており、夜明けには鳥の鳴き声がうるさいくらいに聞こえるのだという。現実から逃避するために、非日常感漂うチョンパを散策するうちに、いつしかそのエリアの音を集める採集家になり、この度、本アルバムに織り込んだのだそうだ。「Journal During Troubled Times」を聴き終えたらぜひ、アルバムを通しで聴きソウルの音を耳で感じてみてほしい。
2020年9月1日にリリースされたアルバム『CELLOPHANE(セロハン)』の収録曲。同アルバムは、セロハンのように様々な色を発する日々の移ろいを表現しており、その中の1色として、本楽曲「ALIENS」が存在している。
《あなたと二人きり。私たちはエイリアン。私たちの島に行きましょうか。》初めて経験する世界的パンデミックに過激に不安を煽るメディア、怒り狂う人々。ころころと状況が変わるコロナ禍に生きる自分たちだけがまるで異邦人のようだと歌う。
Frommは、2021年に登場した低く落ち着いた幻想的な歌声が魅力的なシンガーソングライター。デビュー直後から、EBSのインディーズアーティスト発掘番組「Hello Rookie」へ出演したり、韓国大衆音楽賞にノミネートされるなど、現地で注目を浴びている。デビューしてまもない頃はフォーク、アコースティック中心の楽曲が多かったが、『CELLOPHANE(セロハン)』の前作となるEP『Midnight Candy』以降はドリーム・ポップ、モダン・ロックなどバンドサウンドへと音楽の幅を広げている。
シンガーソングライターのWoodyが “ステイホーム” を歌った、まさにコロナがなかったら生まれてこなかったであろう楽曲である。韓国メディアのインタビューにて、普段自分を取り巻く環境にインスピレーションを受けて楽曲に落とし込むことが多く、今回コロナ禍を表現した楽曲をリリースしたのは自然な流れだったとコメントしている。MVには、実の兄であるサムスン・ライオンズ所属の野球選手 キム・サンスが出演しており、リリース前から話題を呼んでいたようだ。
《苦しくても少しだけ我慢しよう。一寸先は闇。どこかに行きたいと思っても、ちょっとだけ先送りにしておこう。》数年後にこの曲を聴いたら、きっと今のパンデミックの状況、その時抱いていた気持ちが鮮明に蘇ってくるに違いない。
コロナに打ち勝つための応援歌を紹介した。来月公開予定の後編もぜひお楽しみに。
PROFILE
Akari Hiroshige
会社員として働く傍、『BUZZYROOTS(バジールーツ)』 という韓国インディーズ音楽に特化したサイトを友人と立ち上げ運営中。韓国のミュージシャンや業界人に取材をしたり、オススメの楽曲を紹介したりと、微力ながら韓国音楽愛好家として活動している。気づけば韓国音楽担当というブランディングに繋がり、本メディア・DIGLE MAGAZINEでも韓国のインディバンドSURLのインタビュー記事や、ライブレポート等、韓国関連の記事を担当。
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