「仕事」が大きなテーマの映画 3選|春から仕事に就く新社会人に届ける“前向きなメッセージ”

Column

文: 安藤エヌ  編:Mao Ohya 

多くの若者が新社会人としての一歩を踏み出す4月。慣れない環境や人間関係の中で悩んだりすることも多いだろう。本記事では、「仕事」を物語の主軸に置き、新社会人の背中を後押しする映画『私は光をにぎっている』『魔女の宅急便』『プラダを着た悪魔』を紹介。それぞれの作品から「共感ポイント」「元気が出るポイント」をピックアップする。

多くの若者が新社会人としての一歩を踏み出す4月。慣れない環境や人間関係の中で生活するのは誰にとっても難しく、落ち込んだり悩んだりすることも多いだろう。

「どうすればもっと上手く仕事をこなせるだろう」「上司や同期と上手くコミュニケーションできるようになりたい」……壁にぶつかった時、友人や家族にアドバイスを求めたりSNSで同じ悩みを持つフォロワーと交流するのも解決方法のひとつだが、映画にもそんな新社会人を後押しし、悩みを解決するきっかけを掴める作品がある。

ある者はキャリアアップのため、またある者は子どもから大人へと成長する過程で、厳しい現実を目の当たりにしたり、与えられた仕事をこなそうと奮闘する。物語を通して成長していく映画のキャラクターたちは、きっと若者にとって共感できる部分が多く、彼らの姿を見て励まされる人も多いはずだ。

今回は「仕事」が大きなテーマとなっている映画を3本紹介し、それぞれ「共感ポイント」「元気が出るポイント」をピックアップ。この春から仕事に就く新社会人に、明日も頑張ろうと思える前向きなメッセージを届けたいと思う。

やり遂げることの大切さを説く『私は光をにぎっている』(2019)

主人公は、両親を早くに亡くした20歳の宮川澪。祖母と2人で切り盛りしていた民宿を畳むことになり、父の親友が経営する都内の銭湯に身を寄せるため上京する。銭湯の仕事を手伝いながらさまざまな人々と交流し、慣れない都会で居場所を見つけられるようになった矢先、銭湯が区画整理のため閉店しなければならないことを知る。別れと出会いを経験し、成長していく澪が心に決めた事とは――。

共感ポイント:20歳の澪が経験する仕事の「リアル」、失敗と挫折を経て学んでいく姿

上京したての澪は都会での仕事探しに苦戦し、スーパーで働こうとするも先輩である女性との折り合いが上手くつかず、すぐに辞めてしまう。また、銭湯で働き出してからも客たちに対し上手く対応できず、クレームをつけられてしまう場面も。

澪が仕事において失敗したり挫折する姿は、きっと誰しもに同じ経験がある。筆者もまだ10代の頃、アルバイトを転々としたり、何かひとつでも上手くいかないことがあるとすぐに投げ出してしまうことがあった。本作は、そんな「誰しもが感じるであろ“仕事をすることの難しさ”」をリアルに描いている作品といえる。

揺るがない芯を持って仕事に取り組む、というのはなかなか難しく、それが出来るようになって初めて大人の仲間入りを果たす。さまざまな局面、人とのコミュニケーションを通して要領が掴めてくるようになり、次第に仕事が板についてくる澪の姿は、“一人前になって働くことがどれだけ難しいか”を痛感している人々の共感を呼ぶだろう。

元気が出るポイント:立ち止まった澪に亡き祖母が語りかける言葉は、すべての悩む人の心に響く


「見る目と聞く耳、それがあれば大丈夫。最後までやりきりましょう。

どう終わるかって多分大事だから」

澪と一緒に民宿を切り盛りしていた祖母の久仁子は、故郷で静かに息を引き取る。人生の終わりを悟った彼女だからこそ語れる言葉は、都市開発で閉店せざるを得なくなった銭湯を失う事で悩んでいた澪の心に響く。「人生」とも「生き方」ともとれるこの言葉は、何事も中途半端で投げ出していた上京したての澪を叱咤激励するものでもあり、そして同時に、厳しい現実に直面する人々の背中をそっと押してくれるものでもある。

大事なのは始まりよりも終わりであり、やり遂げたという事こそが自分を成長させる。これはすべての「始まり」を経験する人に伝えたいメッセージであり、筆者も何かを新しく始めようとする折には必ず思い出している言葉だ。

始まりよりも終わりを意識するというのは人生そのものだけでなく、あらゆる仕事の流儀にもつながる、やる気を出す時に思い出したい身に沁みる格言である。

次ページ:スランプの時に観たい『魔女の宅急便』(1989)

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