文: 加藤修平(NOT WONK) 編:riko ito
永遠の旅というものがあったとして、その旅の目的とはなんだろうか。“永遠性について”と名づけたアルバムをリリースしたばかりの私と、“新しい旅”というこの特集のテーマは一見食い合わせが悪いようにも感じる。永遠とは決して終わらないことだけれど、旅には必ず終点が存在し、そこに辿りついたからにはいつかは必ず帰路に着くものだから。元いた場所に帰ってようやく旅になる。そのように考えると、永遠に続く旅なんてどこかにあるのだろうか。
それがあるんだね。音楽を感じるとき、間違いなくその存在を一緒に感じる。音楽を作るとき、まだどこにも辿り着いていないし、どこにも折り返しは見当たらないような永遠性を感じながら、何かの終わりに向かい続けている感覚がある。ひとつの目標や目的の点に辿り着いたとき、そのずっと奥に新しい地平が見えてくる。その地平はもしかしたら見えていなかっただけで新しくもなんともなくて、永遠に前からそこに存在していたのかもしれない。例え辿り着いた場所が中間地点だったとしても、そこを終点としてしまえば旅は終わるはずなのに、先に進まないと戻り方がわからない。来た道がもう風化して見えなくなっている。まあしょうがなしに進んで次の地平に近づいて寄ってみると、それがまた微細な点だったことがわかる。そのとき自分には何の驚きもないんだ。むしろ自分の音楽の終着がここではなかったんだと理解して、少し安心する。安心感から自分の音楽にもたれかかって前傾する。その慣性でまた進んでいる。NOT WONKと私の音楽はそんな風に作られてきた。
そしてNOT WONKの新作『Bout Foreverness』の制作は、その慣性を擬似的に作って取り出すことを目標としていた。失ってしまいそうな気配があったから。特段の感傷もなく、ほぼ永遠性っぽい何かを手に取ってただ眺めてみたかった。その手触りからわかったことは、私はこの旅が終わってしまうのを嫌っているということ。限りなく永遠に近い、矛盾した旅を望んでいるということ。頭の中だけで聴こえる音を求めながら、いつまでも自分の理想が叶いきらず、決して全ての地平に辿り着ききらないことを願っている。そして少しの傾きから得られた慣性でいつまでもゴロゴロと転がっていたいもんだな。気が向いたら始まりの場所を思い出したりとか、思いつきでバックスピンとかカーブとかかけたりとかなんとか。
PROFILE
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NOT WONK(ノット・ウォンク)
北海道・苫小牧で2010年に結成。結成当初は加藤修平(Gt. / Vo.)、高橋 尭睦(Dr.)、藤井航平(Ba.)で活動を行っていたが、2024年10月に藤井が脱退。以降、2人体制で活動を行っている。エモ/ソウルを表裏一体として捉えた、情熱的かつ幅広い音楽性と、“よりよい社会”への想いを基盤に、“パンク”という概念の再定義を試みる、ラディカル・リアル・ロックバンド。
2015年に1stアルバム『Laughing Nerds And A Wallflower』を〈KiliKiliVilla〉よりリリース。その後<RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017>や<FUJI ROCK FESTIVAL ’18>など、数々の大型フェスにも出演を果たした。
2023年は、加藤のソロプロジェクト・SADFRANKと合わせて多数のイベントに出演し、ライブを中心に活動を行った。そして2024年年3月には、USインディロック界の重鎮SUPERCHUNKとのスプリットツアーを開催し、10月には加藤が発案者となり地元・苫小牧の仲間たちと<”表現の交換市”『FAHDAY 2024』 >を開催した。
2025年2月5日に5thアルバム『Bout Foreverness』をリリース。現在、東名阪と北海道の4箇所を回るワンマンツアー<Bout Foreverness>を開催中。
RELEASE INFORMATION
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NOT WONK New Album『Bout Foreverness』
2025年2月5日リリース
Label:Bigfish Sounds
フォーマット:配信 / CD
販売価格:CD ¥3,300(税込)Tracklist:
1. About Foreverness
2. George Ruth
3. Embrace Me
4. Same Corner
5. Changed
6. Some of You
7. Asshole外部リンク
TOUR INFORMATION
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