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2022年夏、水面下で再興の兆しを見せるエレクトロニカを再定義するかのような1stアルバム『風が凪ぐ』をリリースしたSSW/トラックメーカーのUztama。 ギターとデジタルデバイスの二刀流でかき鳴らされるハイブリッドな音像と、cosgasoが手掛けたクリアな情感伴うアートワークが想起させる物語性をもって、シーンを越え広く注目される存在となった。
しかしながら、そんなUztamaの多くを知る人は未だ少ない。たとえば、彼の音楽的バックボーンに根ざす要素が「ロックバンドの持つストレートな熱量」であることや、空想上の世界を愛すること、など。
アルバムの後日譚をイメージしたシングル「茜」をリリースしたばかりの彼に、次に向けて思うこと、今までとこれからを訊ねた。
ーまずは遍歴から改めて伺えればと思うんですが、コロナ禍以前はバンドマンだったんですよね。現在のUztama名義でソロワークを始めるようになった流れについてお聞かせください。
バンドは学生時代からやっていたんですけど、自分が引っ張っていくワンマンタイプのプロジェクトだったので、メンバーの移り変わりが激しくて…。バンドからエレクトロのユニットに移行したりしつつ活動してたところ、新型コロナウイルスの流行で何も出来なくなってしまったんです。どうしようかな、と悩んでいたときにclubasiaの系列店(VUENOS、Glad、LOUNGE NEO)の閉店直前にやってた配信イベントを観て。そこで電子音楽に可能性を感じて、それまでのこととか何も考えずもう一人でやった方がいいかもしれないなと思って、方向性を一気に切り替えました。
ー葛藤の中、自分でやりたいことを優先した結果今の形になったわけですね。
そうですね。コロナ禍も絶対すぐには終わらないだろうなぁ、みたいな閉塞感もありましたし。そのとき目にしたDTMやDJなどでソロワークに取り組んでいる方々の縦横無尽さ、ある種の自由さに憧れを抱いたのも、今の活動に至るきっかけかもしれないですね。
ーGalileo Galileからの影響については時折公言されていますが、『風が凪ぐ』のリファレンスが並べられたプレイリストには例えば神聖かまってちゃん、FACT、銀杏BOYZなんかも出てきたりしますし、逆に今では少数派なのでは?という雰囲気さえ感じます。そんなUztamaさんの音楽の趣向の変遷についても伺いたいです。
昔はロック少年みたいな感じでした。転換期は中学生の頃で。浦沢直樹原作の映画『20世紀少年』のメインテーマ、T・レックス「20th century boys」に感動して。叔父がHR/HMどっぷりで、CDたくさん持ってるような人だったので、色々貸してもらって他の曲も聞いたらめちゃくちゃかっこよくて…!
そこからまずストレートなロックにハマっていきました。T.Rexを聞いた後に叔父に何枚かCDを貸してくれって頼んで借りたのはRed Hot Chili Peppers、The Clash、The Rolling Stonesのベスト盤とか、デヴィッド・ボウイの一番有名なアルバム…。
ー『ジギー・スターダスト』?
ですね。で、それとなぜかMetallicaの2ndアルバムとかも(笑)。
その中で特に刺さったのがThe ClashとRed Hot Chili Peppersで。色んなアルバムを聴けば聴くほど面白い音をずっとやってる人たち、表現の幅広さを感じる人たち、というか。
普通絶対逆だと思うんですけど、中2ぐらいからは海外の歪んだメタルとか、ポップパンクとかしか聴いてなかったですからね…。レッチリからマキシマム ザ ホルモンを知ったり、さらにホルモン経由でHi-STANDARDとかも逆輸入みたいな感じで聞き始めて。いわゆるAIR JAM世代のバンドをずっと聞いてた時期もあったりと、とにかくTSUTATAで気になる全部CD借りてiTunesに入れて聴く、みたいなのをやってましたね。
ーサブスクではなくTSUTAYA世代な音楽との出会い方も、今では希少な体験というか。
その時はまだスマホも持ってないし、ゲームにもそんなにはハマらず。中2で始めたギターをずっと一人で練習するか、好きな音楽聞くか、みたいな時間を過ごしてました。マジで今の『ぼっち・ざ・ろっく!』※ってアニメ…あれの一話が、もう自分を見てるようでうわーって気持ちになって…。
※芳文社「まんがタイムきららMAX」連載中の日常系作品。「陰キャならロックをやれ!」がキャッチコピーの、内気な少女がバンド活動を通して一歩ずつ成長するストーリー。2022年冬季のアニメ化が話題を集めた。
ーまさにですね(笑)。そんな日々をしばらく過ごしたのち、高校生ぐらいの頃からはバンドが始動し、そこで日本語ロックの魅力にも気づきはじめたような流れでしょうか。これもかなり「ぼざろ」的なエピソードではありますが…。
高校に上がってからジャンルレスに音楽を聴くようになって。それはGalileo Galileiと銀杏BOYZがきっかけかもしれないです。エレクトロに興味を持ち始めたのも、きっかけは銀杏が最初みたいなところがあって。『光の中に立っていてね』というアルバムに「I DON’T WANNA DIE FOREVER」っていう曲が収録されてるんですけど、キックが全部ガバなんですよ。めちゃくちゃ歪んだシンセの感じに衝撃を受けて、それでノイズとかエレクトロニカにも興味を持ち始めて。その後、Galileo Galileiに出会って、「ああ、俺がやりたいことってこれなのかも」と思いました。足りないピースが埋まったような感じで、そこが音楽的にも分岐点というか。あとは俺、The 1975も凄く好きなんですけど、それもGalileo Galileiが「Chocolate」って曲の日本語カバーをYouTubeに上げてたのが知るきっかけで。受けた影響は本当に大きいです。
ーオルタナティブロック特有のひねくれた姿勢と、出音をポップスに落とし込んでいくみたいなスタイルがフィットしたわけですね。
そうですね。高2の終わりぐらいから高3とかにかけてはバンド活動をずっとしてて。一番最初はモロ銀杏に影響を受けて青春パンクをやったりとか、自分は良くも悪くも、めちゃくちゃ影響を受けやすいタイプなので…(笑)。特にガリレオは、「盗めるもん全部盗んでみよう」ぐらいの勢いで、憧れと尊敬の気持ちを持って歌い方やメロディの作り方を研究するように聴き込んでみたり、インタビューとかも全部読んだりしました。
ー影響を受けやすいタイプって言われてましたけど、それも逆にいろんなアプローチが身につくきっかけみたいなのになっていそうですね。
結局自分が歌えば自分のメロになるな、という謎の自信はずっとバンドの時からあって…(笑)。俺はバンドよりDTMの方がリファレンスの咀嚼をやりやすいと思ってるんですよね。「何かっぽい感じ」にはなるけど、完全に同一にはならない、ってことが表現しやすいですし。
例えばハードコアテクノやブロステップの「ビルドアップ入ってからブレイクでブチ上げて」みたいな展開なんかも、メタルっぽい音楽の感じと楽しみ方は似てますし。ジャンルは違っても展開という点ではガッツリ影響を取り入れつつ自分の世界が表現できる、そういうところでも自由度が高いなって思うんで。良い意味でハチャメチャなことが通用してしまう自由度に惹かれて、DTMに取り組んでるところがあります。
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