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感動的なアルバムだ。Age Factoryによる2年3ヶ月ぶりの新作『Songs』。ロックバンドとしての矜持と祈りが、アンセミックな歌とブライトなサウンドに乗って突き抜けていく。ミックス、マスタリングは西口直人(Ba. / Cho.)が担当。「今のモードを綺麗に出せた」というその音は、スタイリッシュにしてスケールがあり、闇の中で発光するような鋭さを持っている。
ツアーを周る傍ら、ライブハウスの楽屋や機材車、ライブ後のホテルでメンバー同士が膝を突き合わせて作ったという『Songs』には、彼らの脳裏に焼きついたライブの景色、オーディエンスから伝わる熱気が音として還元されているはずだ。未来を見据え、幸福を祈り、リスナーにポジティブな言葉で語りかけるーーきっと10年後に聴いてもその輝きを失わない、これからの指針となるような作品なのではないだろうか。
さて、ではAge Factoryにとって、変わったものと変わらないものとはなんだろう?
取材日は2024年2月5日。前日の予報通り大雪に見舞われた下北沢は、一面雪景色となっていた。参加予定だった西口、増子央人(Dr. / Cho.)のふたりは交通機関が麻痺したために欠席。“Rock for Us”をテーマに、清水英介にじっくりと話を聞いた。
ー『Songs』は本当にぶっちぎっている、最高傑作だと思います。
コンセプトを持って制作したアルバムではなかったんですけど。自分たちの動き的に曲を作り続けたいモードだったんで、そこに自然と運ばれて生まれた作品という感じですね。最後のほうに「SONGS」という曲ができて意味合いも生まれてきたし、俺的にはそんなに苦労もせずに作れた感じがあります。今までのアルバムよりも、自分たちの“今のモード”みたいなものが一番綺麗に出せたかな。
ー自分たちのモードというのは?
アルバムの曲を作った理由としては、これをライブで共有したいと思ったから。「ずっとこうしたかった」と思っていたことがやっとできている感じがしているし、ライブのときに感じる足りなかったピースを一つひとつ濃くして作った感覚がありますね。パッと演奏した感じも普段よりまとまってるし、「伝わるかもな」って思いました。
ー何を伝えたかった?
この時代においてというか、今はヒップホップとかも流行ってるけど、俺らはロックバンドが一番かっこいいと思ってやってるし、ちゃんと目立っているロックバンドでありたくて。そこにベクトルを向けて頑張ろうと思い始めた1枚目という感じの、決意的な作品です。
ー遡ればEP『RIVER』(2017年)やアルバム『GOLD』(2018年)をリリースしたときの取材でも、清水さんは「この時代に俺たちはこういう音楽をやってる」というようなことを言っていたと思うんです。でも、あの頃よりもずっと酷い時代になったし、生活が苦しい人もいっぱいいると思うんですよね。そういう時代の息苦しさみたいなものは、自身の創作とどれくらい関係していると思いますか。
俺はそこを無視するわけではないけど、そこを認めながらも、(聴いてくれる人が)「Age Factoryのアルバムが良いから、いいや」ってなってくれたら一番良いかなって。ロックもそうだけど、救いになるような存在ってそういう感じやと思うから。むしろ世界がどうなっていようが、僕らが繋がってたら大丈夫なのかなって思うし、その繋がりみたいなものを今回の制作では一番に想っていました。だから『Songs』は直接的に「繋がろう」って言ってる感じ。
ーユナイトしていく感じというか。
そうですね。(社会に対して)「最近ヤバいな、軽薄な感じがする」みたいなことを普段思ってても、ライブのときはそれを感じないでいられるというか。ファンの人にもメンバーにも、自分がしてきたことが伝わってるからみんながいるし、そこに対する自負と誇りがあるから。
ー直近の先行配信曲「Lonely star」は今作の中での一大アンセムというか、「これを聴きたかった」と思えるような曲でした。
アイディアぐらいのものをメンバーに聴かせたときは、なんか「自分らっぽすぎるな」という感じで俺はちょっと嫌やったんです。けど、なおてぃ(西口直人)は「それを求めてるんじゃない?」みたいに言ってくれて。増子くんとなおてぃが「これを作るべきやと思う」と言って作った曲ですね。
今回のアルバムは全部の曲に余地を残したいというか、全て詰め込んだ1曲にしないということを思っていたんですけど、「Lonely star」はいろんな方向の受け取り方が想像できる。その余白ができたのがよかったなって思います。僕は自分を対象に曲を作ってきたし、自分の世界みたいなものに対してずっと歌ってきたんですけど、この曲は誰かに向かって歌っていて。だから「Lonely star」は自分らっぽい曲調なんやけど、そこだけはちょっと進化してると思います。
ー清水さんが思うAge Factoryっぽさって、どういうものだと思いますか?
僕が好きな“言葉感”を、メンバーたちがビートやベースで増大して表現してる感じですね。あと、作品における“主人格”みたいなやつがいて、それがずっと同時に成長している感じを僕は思ってて。常に自分と同じ年齢感で進んでるマインドみたいなものがあるんですよね。それが僕らっぽいっていうか、多分変わらないものだと思う。
ーAge Factoryの制作って、最初のデモでどのぐらいまで作っているんですか?
俺らはデモでほぼ完全に作ってます。で、それをRe Recordingする。そこで上モノのネタとかは結構デモのノイズが入っちゃったり、音ズレしたりすることもあるんですけど、そのまま使うこともありますね。コーラスは特にそういうのが多いっす。
ー気にならないと。
かっこいいから、そっちのほうが。てか、俺らが良いと思ったわけだから。良いと思ったものを真似てもう一回録るよりも、元から良いものを残したほうが良いですね。
ー今作はミックス、マスタリングをすべて西口さんがやっています。
今までの作品に満足してないってことは一切なくて。これまでもいろんな名エンジニアの方にやってきてもらったんですけど、理想としては全部自分らでやりたいよな、と思うようになって。それができたときに初めて、誰の手にも触れずに自分らメンバーから放たれものになるんじゃないかって、アルバムを作るにつれて思い始めたんです。で、yonigeの(牛丸)ありさと曲(「ALICE」)を作ったときに自分たちでやってみて、バンドのスタイルが一番直撃に出るっていうことがわかったし、あまりやってる人らがおらんしと思って。そういうスタイル全込みで見てほしいなってところがありますね。
ーアティテュードを示したいと。
なおてぃのミックスの、自分たちの理想みたいなものへの再現度はすごいなって思う。メンバーと曲を作るときに、音源を流してリファレンスを共有するから、曲のニュアンスの捉え方がやっぱり近いんですよね。今は「なおてぃがミックスするから」という理由で曲作りも変わってきているところがあって、ディレイやエフェクトのタイミングとか、コーラスの量とかはミックスを踏まえた音源作りに変わり始めています。
ー音はすごくブライトですよね。眩しいぐらい、光で圧倒するみたいな感覚になりました。
僕も今回のミックスに関してはブライトというか、ポジティブな感じがします。それはアルバムの主張として元々言ってたことで、ダークではなくて光的な存在っていうか、そこがちゃんとサウンドとしても伝わればいいよねってことは共有してたっすね。このアルバムが今まで出会った人も、これから出会う未来の人も包括する器のようなものになるというか、素直さみたいなところが伝わればいいなと思ってました。
ー1曲目の「Blood in blue」は4つ打ちのリズムが気持ち良くて、作品の幕開けに相応しい曲だと思います。
テクノっぽいと言ったらあれなんですけど、このくらいのテンポ感のキックが入ってる4つの曲を作りたいとはずっと思ってて。都内にある友だちのスタジオでパッと4つ打ちにギターを乗せてみたら手応えがあって、そこから作っていきました。リファレンスはART-SCHOOLの「あと10秒で」で、キックの音をバンドサウンドに取り込むときのバランスや、歌詞の物語性も含めた全体の構築の仕方に影響を受けたっすね。
ー4つを刻む曲を作りたかったというのは、リスナーとしてのどういう気分が表れたからだと思いますか。
最近ダンス(ミュージック)が好きで、DJするときにも4つ打ちでBPM135ぐらいのセットばかりやってたから。ライブでも俺らが踊りながらやれたらすげえいいし、楽しいしと思う。
ー2曲目の「Shadow」はミクスチャーっぽさも感じました。
俺としてはミクスチャーというよりは、ザ・エモというか。2ビートが入ったTitle Fight(タイトル・ファイト)とか、NOFX(ノーエフエックス)とかも全然好きやし、2ビートってぶっ飛んでておもろいなって思います。「Shadow」は最初今ほど2ビートを入れてなかったんすけど、RY0N4(※註:コレクティブ〈HAEVEN〉のメンバー)に聴かせたときに、「どうせやったら最後までぶち抜いて2ビートやりまくってるほうが良くない?」みたいに言われて。作ってるときもバカしてる感じがおもろかったんで、みんなでかっこよくふざけてるみたいな曲ですね。
ー続く「Party night in summer dream」も、夜に踊り明かすような曲になっていると思います。
東京のクラブで遊んだときに感じた景色、そのイメージのままに作った曲ですね。夏前ぐらいに渋谷の(不眠遊戯)ライオンでめっちゃ飲んで、潰れそうになって外に出たらすっげージメジメしてて。上に戻ったらたくさん人がいて、興奮してる状態がちょっと悪夢のように思えたというか、そのインスピレーションで作ったんすよね。だからかなり不穏な曲やと思うっす。
ー光やポジティブというキーワードがあったとのことですが、ジャケットや曲の雰囲気からは夜を感じます。清水さんの中には夜のほうが優しい、夜のほうが明るいというようなイメージはありますか?
夜のほうが表現しやすいってだけなんすよね。でも、(他の人が)俺らのイメージを浮かべるときにどこにいるかみたいなところは重要っていうか。だから、僕はAge Factoryでは夜以外のロケーションはあんまり選ばんかな。1日の終わりというか、これから陽が昇ってまた始まるまでの時間って、すごく刹那的やなって。何かが始まる前って、プラスだけじゃなくてしんどさも生まれてるから。それがいいなって思いますね。
ー4曲目の「向日葵」は抒情的な1曲で、Age Factoryがずっと歌ってきたことの最新形だと思います。大袈裟に言うなら、1st EP『手を振る』(2014年)からずっと繋がっている柱みたいなものを感じました。
俺もそう思うっす。自分らしいリリックが書けたし、この曲は俺もめちゃくちゃ好きっすね。歌いたくなるというか、「向日葵」はできたときに一番馴染みが良かったです。
ー中盤にある「I guess so」と「She is gone」も良い曲ですね。前者は気怠さがあって、90’sのオルタナを思わせるサウンドが新鮮でした。
これは結構Pixies(ピクシーズ)のイメージですね。でも、なおてぃ的にはUnderscores(アンダースコアーズ)みたいな感じなのかな。ファズもやりすぎくらいが曲のテーマにも繋がると思ったし、一番好きな要素のレベルをクソあげるみたいな感じの曲ですかね。
ー「She is gone」はすごくエモーショナルな曲だと思います。
人がいなくなったとか、恋愛的な観点は入れたくなかったんですけど、実体験的な部分もあるし、自分も30ぐらいになって年齢的に感じるものがあったんですよね。昔に戻りたいとかは別に思わないけど、当たり前に昔には戻れないわけで、その「戻れない」という感覚の伝え方を少し大人っぽく言えるかなって思って書きました。それをかっこつけすぎずにストレートに言っているところがこの曲の良さかなって思います。
ー何かが過ぎ去っていく感覚って、Age Factoryの作品を通してあるような気がします。
もう俺らそれしかないんでね、根本的に。それだけなんすよ。よくわかんないですけど、ずっとそういうこと言ってるんですよね。でも、そういうものを共有できたときに生まれるエモーションみたいなものはずっと感じてるし、それだけが僕が作曲やライブで得ているものだから。
ーそれで何かが浄化されたり、発散されるような感覚はありますか?
救われるっていうよりは、「また生きていこうかな」みたいな。生きてると何かが新しくなっていくし、その分今がどんどん古くなっていくから、そこが結構怖いことなんですけど。僕はそれが怖いとわかってるからこそ、音楽で共有することによってちょっとだけ大丈夫な気になりたいっていうか…うん、なんやろ。この先何があるかわからないし、したいことを全部できる人はひとりもいないってことを知ってるから、「大丈夫だよ」みたいなことを言いたいんですかね。
ー「Blood in blue」から「向日葵」までの4曲には、“夏”というフレーズが出てきます。その季節は清水さんにとってどんな象徴なんですか?
思い出すのはいつも夏の感じというか。夏は良い面もあれば悪い面もあるし、終わりと始まりが明確にあるから、感情が揺さぶられるタイミングが多くて。いろんな人が共通認識として持っている“焦燥”というか、終わってしまうやるせなさみたいなものは、Age Factoryの世界線に近いのかなって感じです。
ーすごく虚しいと思うんですよね。Age Factoryの曲って、情熱的だけど時折やるせなさや虚しさを感じるときがあって、何かが始まっていくような熱量と終わっていくような寂しさの両方があると思います。
…なんなんすかねぇ。でもね、それは僕もよくわからないんですよね。初めて曲を書いたときからあんまり明るいテンションじゃなかったし、根暗なんすかね? いや、根暗っていうか…まあ、昔とは全然曲を作るときの考え方も違うけど、最近は昔の自分の考え方も理解できるようになったし、それはそれで良さがあるかなとは思ってますね。
ーどこが変わったと思います?
エネルギーの出し方みたいなもの、“怒り”とかそういうマインドからは変わってきたのと、人それぞれ好みとか生きがいみたいなものが山ほどある中で、自分たちが今もバンドをやって、それを人が見つけてくれてるっていうことを考えるんですよね。そこで見つかるように、もっとAge Factoryが自分の成長と共に変わっていって、洗練されていけばいいかな。
ー以前とは創作の動機や背景が変わったという点でもうひとつ聞かせてください。2015年リリースのEP『NOHARA』では、《戦う人間のために音楽を》と歌っていました。そのときのマインドやアティチュードで、今に繋がっているものがあると思いますか?
あるっすけど…うーん、でも、みんな戦ってんなと思うようになったから、そこはちょっと幼かったというか、限定してたなと思う。みんな戦ってるってことがわかるくらい自分が年齢を重ねたし、Age Factoryももう14年ぐらいやってるから。あのとき思ってたことを蔑ろにせずに、でもちゃんとその先で思っている新しいことを提示して、成長しながら対話するようなことを繰り返すバンドでいたいです。
ーその変化はまさに「Hallelujah」と歌って終わるアルバムができているところにも表れていますね。
俺は今回、直接的に伝えることを照れくさく感じるとか、そういうことはしたくなくて。「Hallelujah」は聴いてくれてる人たちの幸福を祈るようなイメージで作ったっすね。
ーここでいう“Hallelujah”は、“good luck”という言葉に近いニュアンスがありますよね。
うん、確かに。Age Factoryの未来に対しても幸運を祈ってるし、僕たちのフォロワーも僕らに関与する人たちにも、Age Factoryを好きになったが故の何かしらの幸せがあったらいいなって。どんな形でもいいんですけど、幸福があったら嬉しいです。
ー最後に表題曲の「SONGS」です。余計なものが何一つない、突き抜けていくような強さを感じました。
歌詞はRY0N4と一緒に作りました。でき上がった今思うのは、「こういう曲をやってるバンドになりたかった」ってことで、今まで照れくさくてできなかったけど、ようやくこういう曲を書けた感じですね。
ーなぜ照れがなくなってきたんだと思いますか?
ずっとライブをやってきて、そこでのリアクションもそうですけど、「僕らの存在が誰かを支えてるんやな」ってことがどんどんわかるようになったから。そこに対してちゃんと歌にしたいと思ったので、この曲はそれがテーマです。
ーシンガロングが入っているし、そういう意味でもライブの情景と直結する曲ですね。
あれはライブでみんな歌えるかなって思ったし、それがあってもダサくない曲になったから、ちゃんと曲に込めた想いも包括できたら(シンガロングも)かっこいい気がして。
ー2024年はどんな一年にしたいですか。
絶対ライブイヤーになるんで、今年の目標はこのアルバムをひとりでも多くの人に渡しに行くこと。聴いてもらえたらいいな、ではなく渡しにいく感覚というか。どういう出会い方でもいいんで、まずは出会いに行こうって感じです。
RELEASE INFORMATION
Age Factory 5th Full Album『Songs』
2024年2月21日リリース
配信価格:¥2,139(税込) / CD価格:¥3,500(税込)
DAIZAWA RECORDS / UK.PROJECT INC.1. Blood in blue
2. Shadow
3. Party night in summer dream
4. 向日葵
5. SONGS
6. I guess so
7. She is gone
8. Lonely star
9. ALICE(feat.牛丸ありさ)
10. Hallelujah〈フィジカルのみボーナストラック有り(ライブ会場&数量限定)〉
11. After School(DAIRIKU show bgm 22AW 3.19 2022)▼各種ストリーミングURL
https://agefactory.lnk.to/Songs
TOUR INFORMATION
Age Factory presents『Songs』Release Tour 2024
◼︎宮城公演
2024年3月17日(日) at 仙台・Rensa
OPEN 17:30 / START 18:30
TICKET:¥3,900(+1D)◼︎愛知公演
2024年3月22日(金)at 名古屋・DIAMOND HALL
OPEN 18:30 / START 19:30
TICKET:¥3,900(+1D)◼︎福岡公演
2024年4月5日(金)at 福岡・BEAT STATION
OPEN 18:45 / START 19:30
TICKET:¥3,900(+1D)◼︎大阪公演
2024年4月14日(日)GORILLA HALL OSAKA
OPEN 17:30 / START 18:30
TICKET:¥3,900(+1D)◼︎東京公演
2024年4月17日(水)Zepp DiverCity(TOKYO)
OPEN 18:00 / START 19:00
1Fスタンディング:¥4,400(+1D)
2F指定席:¥4,900(+1D)◼︎台湾公演
2024年4月20日(土) at 台北The Wall
OPEN 19:00 / START 20:00外部リンク
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