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2016年、エイベックスの主催する『声だけオーディション』で注目を浴び、CMソングや作詞提供など、活動の幅を広げつつある期待のシンガーソングライター・井上紗矢香。
彼女が2021年6月から3週間おきに10曲連続配信したシリーズを、1つの作品にコンパイルした初のアルバム『my tiny days』が、2022年2月21日よりデジタルリリースされた。
同時リリースとなるシングル「旗印」も然り、彼女の楽曲の魅力は「言葉選び」だ。主観と客観(俯瞰)を交えながら、幅広い言葉のバリエーションをもって細かに描写を重ねていく。なぜ彼女は歌詞表現に長けているのか。今回のインタビューで彼女のバックグラウンドに迫ると、その理由が明らかとなった。
―井上さんが音楽に目覚めたのはいつ頃だったんですか?
中学2年生くらいですね。『絶対彼氏』っていうテレビドラマの主題歌だった、絢香さんの「おかえり」を聴いた時に「音楽を仕事にするの、いいのかも」とビビッときて。
高校から音楽の学校に進むことも考えていたのですが、小学校5年生の時に一旦辞めていた空手にもうっすらと未練があったんです。だから高校で空手をやりきってから卒業後は音楽に集中しよう、と。ガッツリ結果を残すまでやり切らないと中途半端になっちゃうし、それに納得できない性格でした(笑)。
―もともと興味のあることを極めたくなる性格だった?
それが小学生の時までは、ドラマを観るたびにコロコロと将来の夢が変わるような子だったんですよ。習い事の影響で書道の先生になりたいと思ったこともあったし、研究者やキャビンアテンダントになりたい時もありました。ただ「音楽の仕事をしたい」という熱はなぜか冷めなかったんです。
―では、音楽の仕事をしたい、と思うようになった時期から作曲などをされていたんですか?
実際に曲を作るようになったのは専門学校に入ってからだったのですが、空手の合間に歌詞やフレーズを書き溜めるようにはなりました。もともと言葉による表現が好きだったのですが、それをモノとして残すようになったのは中学生の頃からでした。
あと国語の先生が面白い方で。特に宿題とかではなく、自分が書いたエッセイを先生に提出し始めたのが中学校1年生の頃でした。なんとなく「先生になら見せてもいいかな」と信頼を置いていたんですよね。それを見てちゃんと先生が感想をくれたのも嬉しかったです。
自分の気持ちを口にすることは今でも得意じゃないのですが、それを文章にすることは当時から素直にできました。曲作りでも自分の弱いところを歌詞に落とし込めるので、不思議だとは思います。
―エッセイや小説などではなく「音楽」で自分の感情を落とし込む、という行為に影響を受けた人物はいますか?
特定の人がいるわけじゃないんですよね。いろんなアーティストのCDを借りて歌詞カードをずっと目で追いながら、とにかく意味を考えていました。学生時代は絢香さんやYUIさん、少し経ってからはaikoさんやCHARAさんの曲が好きでした。
ただ、歌詞でいうと小林武史さんの歌詞が本当に好きです。毎回たまたま聴いた曲の歌詞がひっかかって調べてみると「あ、これも小林さんだ」ってなります。核心をついてくるというか、普遍的なのにフレーズが刺さるんです。秋元康さんの歌詞も「まだこんな表現が残っていたのか!」って驚くので、このお二人には強く影響を受けていると思います。
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