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文: 保坂隆純 写:Hatano mai 編:riko ito
新鋭SSW・Misato Onoが1st EP『something invisible』を5月11日にリリースした。
オーガニックなギターの響きと主張し過ぎないブラック・エッセンス、そしてオーセンティックな要素と今日的なサウンド・プロダクションが同居する様は、さながらTom Misch以降のSSW/マルチ・プレイヤー――Conor Albertやedbl、Maya Delilahなど――との共鳴も見い出せそうだ。
今回のインタビューではSIRUPや春野、Chocoholicなども所属する〈Suppage Records〉傘下の〈Suppage Distribution〉からのリリースとなったEPについてはもちろん、彼女の興味深い経歴やルーツ、そして音楽制作との向き合い方などについて語ってもらった。
―Misatoさんは全国規模のギター・コンテストで特別賞を受賞したり、メタル・バンドに在籍していたという経歴がありますが、そもそもギターに興味を持ったのはいつ頃なのでしょうか。
父親が家でギターを弾いていたので、その影響ですね。ただ、最初は父が弾くエレキ・ギターの音が怖くて泣いたのを覚えています。まさかその後、自分がそれ以上に激しいギターを弾くことになるとは思ってもいなかったです(笑)。
―お家ではどのような音楽がかかっていましたか?
Jimi Hendrix(ジミ・ヘンドリックス)やTOTO(トト)、Eagles(イーグルス)といった昔のロックからボサノバ、フュージョンなどがよくかかっていましたね。母もピアノをやっていたりと音楽好きな家系で。そんな家で育ったのに、私と兄はメタルにハマってしまい(笑)。
―メタルにハマったきっかけというのは?
ギターを練習しているうちに、どんどんテクニックを追い求めるようになっていって、そのうち自然と……っていう感じですね。雑誌『YOUNG GUITAR』とか教則本シリーズの『地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ』などが流行っていて。自分もこれができるようになりたいって思って、中学生くらいからStone Sour(ストーン・サワー)やSlipknot(スリップノット)の曲を練習するようになりました。
―在籍していたバンドでは海外公演も行っていたようですね。特に記憶に残っている体験などはありますか?
そうですね……。ハイエースで女の子5人で日本全国を回ったりした経験は、すごく辛かったけど強く記憶に残っていますね。あとは初めて海外に行ったとき、大きなテロなどが起こったタイミングだったので、親からも心配されましたし、私たち自身もすごく不安だったんです。でも、現地に着いたら優しく迎えられて。実際に行ってみないとわからないもんだなって思いました。
―MisatoさんはSNSやYouTubeへの投稿でも流暢な英語を披露していますし、海外アーティストの国内盤に付属する、歌詞の翻訳なども行っていますよね。英語はバンド時代に勉強したのでしょうか?
実は母が英語の先生なんです。もちろん母からも教えてもらっていたのですが、本格的に教えてもらっていたのは母の友人のイギリス人の方で。バンド時代はむしろ忙しさにかまけて全然できてなかったのですが、最近はしっかり週イチでオンライン授業を受けています。
―2017年にバンドを脱退し、初のソロ・シングル「sway」を2019年にリリースしました。この2年ほどの月日は、Misatoさんにとってはどのような期間だったのでしょうか。
バンドを辞めた後、福岡から上京しました。まずはこっちでの生活に慣れるのに時間がかかってしまったのと、これからどういう音楽を作っていこうか探っている時期でしたね。モラトリアムみたいな期間というか。
自分の好きなことをやるべきだと思いつつも、「バンド時代にやっていたようなジャンルが好きで、私の活動を追ってくれている方たちを無下にしてしまうんじゃないか」とも考えたり。「その中間を突くようなジャンルを目指すのはどうか?」 とか。色々と自分の中で暗中模索していました。
―その期間によく聴いていたアーティストや作品はありますか?
Moonchild(ムーン・チャイルド)やTom Misch(トム・ミッシュ)をよく聴いていました。あとは何かあったかな……。私にとっては結構「空白の期間」っていう感じなんですよね。
―そこから1stシングル「sway」が生まれたのは、何かきっかけなどがあったのでしょうか。
特にきっかけなどはないんですけど、「そろそろやらないとマズいだろう」と(笑)。あの曲は確かギターのコードからできた気がします。あの頃は新しい音楽に挑戦したくて、オーソドックスなコード進行じゃない曲を作りたかったんです。タイトル通り波に揺れるクラゲをイメージしていて。それこそ空白の期間の自分を重ねているんですけど、海中のひんやりした感覚だったりをサウンドで表現しようと試みた作品です。
当時いくつか作っていた中でもしっくりきたのがこの曲だったので、これで再出発をしようと決めました。
―実際に発表してみて、いかがでしたか?
恐る恐るリリースしてみたんですけど、意外と温かい反響をいただけて。それこそメタル好きな方たちからもポジティブなコメントをもらえて、次の一歩へと繋がりました。
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