本能によって掻き立てられるラッパー・RAqの創造力。枠組みから解放された軽やかさの秘訣を探る|BIG UP! Stars #84

Interview

文: Mai Kuno  写:遥南 碧  編:riko ito 

DIGLE MAGAZINEが音楽配信代行サービスをはじめ様々な形でアーティストをサポートしている『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップして紹介するインタビュー企画。第84回目はRAqが登場。

今年から隔週リリースを続け、プレイリスト上で存在感を放っているラッパー・RAq。彼はネット発のラップアーティストが頭角を現し始めた2010年代前半に、現役東大生ラッパーとしてデビューした。

フットワークの軽さでさまざまなアーティストと繋がりながら成長してきた彼にとって、“フィーリング”は何よりも重要なものだろう。楽曲の聴き心地の良さ、気の合う仲間、創作への欲求、そのどれもが感覚的だ。それは自らが囚われていたHIPHOPという枠組みから解放された証なのかもしれない。そんな彼の現在までを振り返りながら、言葉にし難い感覚の部分を紐解いてみた。

ネットラップの世界へ

ー最初に音楽に興味を持ったのはいつ頃でしたか?

3歳からピアノを習ってたんですけど、その頃は単に習い事という感じで、聴くものとして音楽に興味を持ち始めたのは中学くらいからです。国内だとRADWIMPS、洋楽だとGreen Dayなどのバンドの曲をよく聴いていました。といっても幅広く聴くタイプではなかったし、人並みに音楽を聴くくらいだったと思います。でも、高校1年の時にたまたまキングギドラの「最終兵器」を聴いて、HIPHOPを漁るようになったんです。

ーキングギドラを聴いたきっかけは?

兄が音楽好きで海外のバンドにも詳しい人だったんですけど、ある日「すごい面白い音楽見つけた」って言って友達に借りたキングギドラを家で流してたんです。それを聴いて「なんだこれ?!」ってなって。日本語ラップの韻を踏む面白さに惹かれて、それからは高校の近くにあるCDレンタル屋さんで、毎週4枚ぐらい気になったアルバムを順番に借りてiPodに入れてっていうのを繰り返してました。

ーその中で刺さったアーティストはいましたか?

高1の時はキングギドラの流れからKダブシャインさん、DJ OASISさんを聴いていて、高2からはSEEDAさん、BESさんみたいな当時のスキルフルなラップを聴いてました。さらに、そういう人たちは海外のラップスタイルを取り入れていることを知って、海外HIPHOPも聴き始めたんです。NasEminemJay-ZKanye Westといったメジャーどころを聴いていきました。

ー国内外のさまざまなHIPHOPを聴くようになった中で、1番影響を受けたアーティストは誰でしたか?

Kanye Westは大きかったですね。当時まだイナタいHIPHOPが多かった中で、すごく聴きやすくてスタイリッシュだった。歌詞も自分のエゴみたいなことを歌うのが新鮮で、こういうHIPHOPもあるんだってハマっていきましたね。すごく影響を受けたと思います。

あとは、Soulja Boy。当時YouTubeにどんどん曲を上げてアメリカでブレイクした人で、僕と同い年なのにそんなスターになる人がいるんだ!って衝撃だったんです。世界観もすごくポップでキャッチーだし、インターネットをきっかけに売れていったのも面白くて、そこから自分もラップをやろうと思いました。元々日本語のリリックは書いてたんですけど、実際に曲を作ってみようっていう気持ちになったんです。

ー最初はどうやって活動を始めたんですか?

いろいろ調べていたら日本にもインターネットで曲を作るコミュニティがあるのを知ったんです。当時はニコニコ動画に『#ニコラップ』っていうタグでトラックをあげてる人たちがいて、それを借りてラップを乗せ始めたのが大学1年の頃でした。

それと、『ニコラップ避難所』っていうニコラップをやってる人のための掲示板があって、“みんなでマイクリレーしましょう!”っていうスレッドに参加したこともありました。その後、曲をアップしている人達とだんだんTwitterで繋がり始めて、「この人あの曲あげてた人だ」ってさらに広がっていくんです。そうやって繋がった人に「曲作りましょう」って声をかけたり、かけられたりするようになりました。

ーそうしてネットラップコミュニティの一員になっていくんですね。

当時はネットラップのイベントも多かったので、そこに行くと「あの曲の誰々さんですよね?!」ってオフ会みたいな感じになってましたね(笑)。

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