Black Boboiが描く美しき空想『SILK』。そこに込めた「物語」を紐解く

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文: 黒田隆太朗  写:Yosuke Demukai 

『SILK』をリリースしたBlack Boboiにインタビュー。新作で描いた物語と、バンドの精神性を紐解く。

壮麗だ。ロマネスク建築のように美しく、暗く幽玄であり、魅惑的な響きを持った声と音。Black Boboiの音楽を聴いていると、誰もいない映画館でひとり異世界の映像を眺め続けるような、そんな得も言われぬトリップを味わえる。この音楽は楽園のようでもあるし、覚めない夢のようでもある。

2018年、音楽コミュニティレーベル「BINDIVIDUAL」の⽴ち上げをきっかけに、ソロ活動をしていた小林うてな、ermhoi、Julia Shortreedの3人が集まり結成。翌年にはミニアルバム『Agate』をリリース。その年にフジロックのレッドマーキーに出場すると、11月にはWWWでのワンマンライブもソールドアウト。彼女達が生み出す幻想的な音楽は、あっと言う間にインディリスナーを虜にした。

コロナ禍のため目立った活動はなかったものの、恐らくこのバンドの新譜を楽しみにしていた者は多いだろう。Black Boboiは先日、新作アルバム『SILK』をリリースした。まず何を置いても、3人が織り成す重層的な声のハーモニーに魅了させられるだろう。より制限をなくした創作ができたという本作は、彼女達にとっても新しい表現が見出されたものになっている。どこかトライバルな香りを持った、幻想的なエレクトロ・ミュージック『SILK』。そこに込めた「物語」と、Black Boboiという共同体について話を聞いた。

物語性が強くなった作品

ーコロナ禍ではどんな風に過ごされていましたか。

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小林うてな:

私は何もやる気が起きなかったですね。元々ゲーム廃人でオンラインのサバゲーをやっていたんですけど、現実がサバイバル化しちゃったから、ゲームの世界に行く気が起きなくなっちゃって。でも、それは後悔しています。
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Julia Shortreed:

後悔してるの?(笑)。
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小林うてな:

こんなに下手になってるとは思わなくて。でも、世間の情報も入ってこなくなって、精神面では凄く穏やかに感じたりもしました。あとは『ワンピース』を全部読みました。尾田先生の伏線の回収の仕方が凄過ぎて、これは神の設計図なのかなと。
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ermhoi:

(笑)。
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小林うてな:

そういう物語としての面白さを音楽で出来ないかなと思ったのが大きかったです。『ワンピース』から着想を得て歌詞を書くくらい影響を受けましたね。

ーJuliaさんは?

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Julia Shortreed:

私は都市伝説にハマりました。
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小林うてな:

(笑)。
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Julia Shortreed:

凄くダークな方に行って、ermhoiに心配されてたんですけど。元々世界とか宇宙とかUFOとは?っていうのが好きで、コロナ禍によって時間があるのでさらに掘りまくれて。それが楽しかったですね。
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ermhoi:

私も自分と向き合える時間が増えて、社会の中の自分と本来の自分との誤差が縮まっていって落ちつけたというか。無理しなくなった。それが制作に良い影響が出ている気がしています。

ー新作の『SILK』は非常に美しく、素晴らしい作品だと思います。どういうイメージを持って制作は始まっていきましたか。

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Julia Shortreed:

『Agate』は普段ソロで活動している3人が集まって、誰かと制作することの楽しみの中で作っていった初期衝動の6曲だったんですけど。今回は次のステップとして、初期衝動を越えたところで何を作るかっていうところで、「シルク」というテーマを決めて。絹の滑らかさだったり、柔らかさを頭に置いて作っていきました。Black Boboiとして新しい場所に来た感じがします。

ー制作が始まったのはいつ頃ですか。

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ermhoi:

去年の12月にワンマンが終わった時点で、それぞれがネタを作っていて。それを合わせて作品にしようっていう話があったんですよね。それは順調に行って、2月くらいには音楽の枠組みが出来ていたんですけど、そこから深めていこうっていう段階でコロナ禍になってしまって。ただ、集まれないことで皆がある意味自由になれたというか、浮かんだアイデアを脳内で制限なしに増長していけたんですよね。お互いのイメージが組み合わさることで、さらに広がっていく相乗効果もありました。

ー自粛期間が、創作の面では明るい方向に作用したと。

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ermhoi:

そうですね。それでデータを送り合ったり、あとは遠隔ミーティングで歌詞について話し合ったりしてました。自粛期間が落ち着いてからは集まったりしてたんですけど、基本的に自分達が作った音に対する意味付け作業は遠隔でやっていた気がします。
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小林うてな:

今回のアルバムは、コロナとは切っても切り離せない作品と言ってもいいと思います。コロナ禍に始まったものではないけど、制作の時期が被ったことで、絶対に影響は受けていて。その影響っていうのは、「比較をすることをしなくなった」ことだと思います。

ー世界的に足が止まったことで、一度トレンドというものがなくなりましたよね。

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小林うてな:

そうですよね。情報が少なくなって、他者や世界の他の作品と比較しなくてもよくなった。そういう世界の中で、発想が自由になったと思います。

ー具体的に作風の面で変化したことはなんですか?

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Julia Shortreed:

今回はうてなも歌っていて、より3人の声が入っているアルバムになった気がします。
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小林うてな:

確かにそうだね。

ーまさに『SILK』は声の重なりが美しい作品だと思います。

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小林うてな:

元々メロディを作る時には、3人がそれぞれラインを出してきて、それを編み物のように縫って1本のメロディラインを作るんです。『Agate』では1本のメロディを誰かが歌うやり方をしていたんですけど、今回は編み出した部分はそのまま作った人が歌おうってことになって。そうした結果、3人の声が重なるアルバムになったという感じですね。
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ermhoi:

それに加えて、メロが重なっているところは歌詞も重ねて録っているので、意外と複雑なこともしていて。意識してそうしたわけではないんですけど、クワイアのような音楽になっていますね。歌詞も物語性が強くなったように感じていて、たぶん家にいる時間が多くなった中で、それぞれの想像力が膨らんでいったところがあるのかなと思います。
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黒田 隆太朗

平成元年生まれ、千葉県出身。ライター/編集。MUSICA編集部→DIGLE編集部。

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Yosuke Demukai

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2018年6⽉、⾳楽コミュニティレーベル「BINDIVIDUAL」の⽴ち上げをきっかけに、⼩林うてな、Julia Shortreed、ermhoiの3名で結成。2019年1⽉にミニアルバム『Agate』を発表し、同年8⽉にFUJIROCK FESTIVALʼ19のレッドマーキーステージに出場。2020年10⽉から初のアルバム『SILK』をリリース。メンバーはそれぞれがソロアーティストとして、多岐に渡る活動を⾏っている。
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