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文: 黒田隆太朗 写:山本絢子
THE CHARM PARKが爪弾くナイロンギターの音色には、彼の祈りが詰まっている。感情を音に乗せるのが上手い作家なのだ。日記のように歌詞を綴り、ベッドルームで録音されたというメジャー3作目のフルアルバム『Bedroom Revelations』。囁くような声とオーガニックな音を基調に作られた、実にハートフルな一作である。
かねてからバックグラウンド・ミュージックを作りたいと口にしていたTHE CHARM PARKだが、本作のまろやかな作風は、きっとコロナ禍とも無関係ではないだろう。 暗い時代にも心穏やかな時間を与えたいという、暖かく慈しみ深い想いが込められているように思う。どこか生活の匂いを感じさせる音色からは、親近感と共に包容力を感じるはずだ。
アイルランドの作家によって書かれたという、ふたりが溶け合うように抱き合う一筆書きのジャケットも魅力的だ。これは音のハンモックに揺られて眠りにつくような、憩いの音楽である。最愛の人を思い浮かべて聴いてほしい。
ー去年取材させていただいた時には、コロナ禍になる前からバックグラウンド・ミュージックを作りたい気持ちがあって、その2020年の春にリリースされた「ad meliora」は、その最初の一歩になる予定だったと言われていましたね。
はい、そうですね。
ー『Bedroom Revelations』はまさにそうした方向性で作られたアルバムなのかなと思います。
メジャーデビューをした2018年以降に作ったアルバムを振り返ってみると、音大に行ったせいもあってか、作品の中に色々なジャンルを入れてしまっている自分がいて。例えばそれらをどこかのお店だったり、ホームパーティなんかで流した時、最後まで同じ感覚で聴けるかと言ったら、そうではない気がしたんですよね。名盤にはそうした作品があると思うので、これからもバラエティに富んだものを作りたい気持ちはあるんですが、今回は実験でこういう作品を作ってみようかなと。一番わかりやすく絞ったのは、ギターをナイロンギターのみで作ったところですね。
ーまさにそれがこの音楽の温かみを生み出している要素だと思います。ナイロンギターにこだわったのには何か理由があったんですか?
制作する時にはプロデューサー目線で考えている自分と、アーティスト目線で見ている自分のふたりがいるんですが、前者の目線で考えた時、今回はちょっと自分に制限をかけてみようと思ったんですね。その状態でどれくらい広げて行けるか試してみたかったところもありました。
ーなるほど。
それともうひとつ、単にナイロンギターの音を凄く気に入っていたというのもあります。それで去年、一昨年ぐらいから、ガットギターの音を復活させたい自分がいたんですよね。ポップスをガットギターのみでやってる人は減ってきてるような気もするんですが、僕自身は最近ギターの音をよく聴くようになっています。
ー特に聴かれている音楽はありますか?
去年よく聴いていたのは、Jay Somです。北カリフォルニアを拠点にDIYで作ってる東南アジア系のアメリカ人で、彼女の音楽は凄く良いですね。僕は世代的にスマパン(The Smashing Pumpkins)を連想してしまうんですが、スマパンのような切なさがあって、曲の質感が凄く好きです。あとはSnail Mailもよく聴いていました。最近は女性が弾くギターをよく聴いていますね。
ーなるほど。では、チャームさんにとって素晴らしいアコースティック・ミュージックと言えばなんですか。
ジミヘン(Jimi Hendrix)の曲で、彼が亡くなった後にリリースされた「Angel」というデモ曲が凄く良いです。家で撮った音楽で、凄く惹かれます。
ーその飾らなさに惹かれるところがあるんですかね?
完璧すぎる音楽が当たり前になってきていて、僕より若い世代はそうした音楽を自然と聴いているんだと思いますが、僕からしたら不器用さとかアーティストの人間味が出ている方が素敵だなと思います。まあ、歳を取ったということでしょうけどね(笑)。そうしたアーティストを好きになる傾向があります。
ー今作に影響を与えた音楽ってありますか。
ベッドルームポップを作っているアーティストたちです。彼らには“部屋で録っているのがバレても良い”っていう大胆さや、自信がありますよね。今までの僕では、“ベットルームで作っているのに、スタジオと変わらないクオリティで出したい”っていう自分がいたんですが、今回は自分の部屋で録った音をそのまま自信を持って聴かせようという気持ちがありました。
ーそれが『Bedroom Revelations』というタイトルになっているんですね。
「Revelations」は「気付き」や「発覚」という意味で使っていますが、自粛期間中に寝室で制作していて、ニュースを見ながら何もできない状態の自分が思ったこと、そこで気付いたことをちょっとずつ歌詞に起こしていったんです。本当にこの1年ほどで感じたことを綴った、日記の様な作品になっています。
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