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文: 黒田 隆太朗 写:後藤倫人
福永は「シーンに対する不満は少なくなっている」と語っている。たとえば2年前にリリースした『Change your pops』が、まさしく「君のポップスを変える」という宣誓であったことを思えば、今作で掲げた『BORDERLESS』というモードには、彼らの成長だけではなくシーン自体が変わってきたという現状認識があったはずだ。自由を獲得するための闘争ではなく、徐々に自由になってきたシーンの中でどれだけ自在なクリエイティヴを発揮できるか、それが今の作家に求められる資質だろう。ボン・イヴェールやトロイ・シヴァン、FlumeからKH(フォー・テットの別名義プロジェクト)まで、多くのリファレンスが飛び交う会話から、3人体制初のアルバム『BORDERLESS』で見せたバンドの成長に迫った。
ーこのメンバーになってから初のアルバムです。『BORDERLESS』が3人にとってどんな作品になったのかを聞かせていただけますか。
福永浩平(Vo):
まさに3人体制になってから初めてのアルバムというのが一番大きくて、曲の作り方もライヴのやり方も大きく変わった1年だったので、今の僕らのファーストアルバムという感覚が強いですね。山﨑康介(G):
これまで以上に僕らの幅を広げられた作品だと思うし、アルバムタイトルの『BORDERLESS』という言葉に象徴されるような作品になりました。大澤実音穂(Dr):
前作から結構空いたし、ベースが抜けたことでリスナーの方にはこれからどうなるんだろう?って思われたところもあると思うんですけど、蔦谷好位置さんとやらせてもらったり、Dos Monosとやったり、成長できたこの1年10ヵ月がギュっと詰まった作品というか。ひとつ答えが出せたアルバムですね。ー具体的にどの部分に自分達の成長や新しさを感じていますか。
福永浩平(Vo):
裏テーマじゃないですけど、僕は今作には少しリブートの感覚がありました。昔の曲でやり切れなかったことを、今の曲に落とし込めないかと思って作ったものがいくつかあって。「Material」や「Hallelujah!!」、「Walk on」がそうだと思う。ー昔できなかったことというのは?
福永浩平(Vo):
たとえば「Count me out」とか「feel」は音の配置や定位、レンジ感の面でまだできることがあったと思うし、アンビのシンセっぽい音も足したらもっとよかったんじゃないかなど、色々思うところがあったんですよね。今回の「Hallelujah!!」では完成したと思った地点から、さらにパーカッション的な扱いで「チャリン」って音を入れたりして。今はライヴでの表現も制限がなくなったので、想像を膨らませながら細部までブラッシュアップできました。ー山﨑さんと大澤さんは今作の中で手応えのある1曲を挙げるとしたら、どの曲になりますか?
山﨑康介(G):
1曲だけ選ぶのは難しですけど、DTMベースの制作が色濃く出てるのは「Material」です。この曲はオケをほぼデスクトップ上で完結させた曲で、サウンドのセレクトも全部自分達でやっていて、前作までにはなかった一からDTMベースで作った曲なので、自分達にとっても新鮮なサウンドに仕上がりました。大澤実音穂(Dr):
私は「Walk on」かな。このアルバムの中で生ドラムだけなのはこの曲だけなんです。自分達だけで制作した曲ではありますが、蔦谷さんとやらせてもらったことで色んなことを学べたので、ドラムの録り音やシンセの質感にこだわって、蔦谷さんの技術を取り込んだこれまでの自分達を更新できた曲になったと思います。