サウンドアートユニット・NU/NCが紡ぐ“記憶の中にある風景”から始まる新しい音楽体験

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文: 久野麻衣  写:伊藤郁 

ギタリストの田中義人とアートディレクターの山崎晴太郎によるサウンドアートユニット、NU/NC(ヌンク)。プロジェクト第1弾としてリリースされた『recollection / 或る風景の記憶』から、彼らの音楽表現に迫る。

“無意識”を“意識させる”ということも一つの音楽体験となるのではないだろうか。音楽を聴く瞬間、私たちは物理的な空気の振動を、無意識に“記憶”という形のないものに結びつけることで、空気振動以上のものを感じている。その際にどのような記憶の作用が生まれているのかを見つめ直すことで、新しい聴こえ方、景色の見え方と出会うことができるだろう。

そんなアート的側面から音楽体験のアプローチを試みているのがサウンドアートユニットのNU/NCだ。秦基博、宇多田ヒカル、スガシカオ、Mondo Grossoなど、多くのアーティスト作品に参加しているプロデューサー/ギタリストである田中義人とグラフィック・WEB・建築・プロダクトと領域を横断したアートディレクション・デザインを手がける山崎晴太郎。異なるフィールドで活躍する二人が始めたこのユニットはプロジェクトの第1弾として『recollection / 或る風景の記憶』を配信とアナログでリリース。音楽とアートの領域を繋ぐ作品は無意識下にあった音楽と記憶の関係性を映し出している。

今回のインタビューでは、その活動の始まりやそれぞれのルーツを紐解きながら、彼らの作品が表現しようとしているものについて話を聞いた。

フィールドを超えた共振

ーまずはお二人の出会いや結成の経緯を教えてください。

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山崎晴太郎:

共通の友人が「絶対合うと思う」と義人さんを紹介してくれたので、僕のラジオにゲストで出演してもらったんです。そしたらめちゃくちゃ意気投合して、そこから話が進んでいきました。
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田中義人:

趣味的に始まったことが、どんどん発展していったんです。お互い違うフィールドで活動してるので、逆に気兼ねなく羽を伸ばしてできるプロジェクトだったんだと思います。

ーどんなところで意気投合したんでしょう?

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田中義人:

ラジオで晴太郎さんが選んでいた楽曲は共感するものが多かったですし、音楽自体もそうですけど、音楽に対して見てる部分が似ているんだと思います。

ー“音楽に対して見てる部分”とは?

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田中義人:

「景色」「風景」といったワードが出てくるところですね。ミュージシャンとセッションするように、デザイン領域の方と一緒に作品を作ることがどこまで可能なのか未知の領域ではありましたが、僕も音楽をデザインしている意識はあるし、そういう共通言語があるので一緒にやってみたらかなり面白そうだと思ったんです。

ー今回、お二人にNU/NCの世界観やルーツになる楽曲でプレイリストを作っていただいていますが、それぞれプレイリストを見た感想を聞かせてください。

※1〜11は山崎晴太郎、12〜20は田中義人が選曲

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田中義人:

自分の選曲で言うと、Keith Jarrettの「The Köln Concert」は最後拍手で終わっていくところ、拍手を次のビートのBPMに合わせて繋げたり、できればDJミックスみたいに曲間なく全曲繋げたいプレイリストです。

あと、Bill EvansJim Hall、最後キースの「I Love You Porgy」もそうですけど、メロディがあるものを自然に選んでいるんですよね。そういう“少しの主張”みたいなものを求めているんだなって今回のプレイリストで感じました。

ーお二人は同じアーティストを選ぶことはあっても、完全に同じ曲は入れてないんですよね。

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田中義人:

そこはNU/NCっぽいなって思いました。今回全く打ち合わせしてなかったんですけどね。
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山崎晴太郎:

でもまさにプレイリストを送り合っていたので、その中で挙げた曲や周辺のアーティストが入ってますよね。僕のプレイリストに関して言えば、旅や水を感じるところは自分らしいなと思います。

ー晴太郎さんは前々から音での表現に興味があったんですか。

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山崎晴太郎:

これまで見えるものは全部作ろうと思っていたんですけど、音楽だけは本当に作れなくて。だから音を作って表現できるミュージシャンには、すごいリスペクトがあるんです。

ー実際にこうして田中さんと音での表現をしてみてどうですか。

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山崎晴太郎:

めちゃめちゃ楽しいです。「まさかこの武器が俺の人生に授かる時が来るとは!」みたいな(笑)。
音楽をやってきてない分、違うやり方・表現と音楽を繋げていけると思うので、他のミュージシャンがやらないようなことを、どんどんやっていけたらいいですね。それをやらないとNU/NCじゃないと思うので。

ー今回の楽曲でも新しい取り組みや方法を試されていると伺っていますが、実際に楽曲ができるまでの過程を教えていただけますか。

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田中義人:

まず僕が晴太郎さんの描いた絵に音楽をつけてみたいという衝動があったので、そこをリクエストしました。
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山崎晴太郎:

なので最初のプロセスは、僕が図形譜という五線譜ではない楽譜を描いて、そこから受けるインスピレーションや世界、景色を音として当ててもらいました。そこからさらに僕がインスピレーションを受けたものをフィールドレコーディングして返して…という往復書簡のような作り方になっています。
『recollection / 或る風景の記憶』ジャケット
額内が山崎による図形譜

ー最初に図形譜を作られた際、晴太郎さんの中には音のイメージはあったのでしょうか。

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山崎晴太郎:

“音の概念はあるけど、音のイメージはない”という状態でした。風景は見えているけど音は出ていないというか…。普段音楽を聴いている時に思い描くような抽象的な概念、イメージを図形譜に定着させています。

ー図形譜というと、もっと記号的なもののイメージでした。

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山崎晴太郎:

図形譜はずっと好きで、広告の仕事で使ったりしてたんです。ただ、今回プロジェクトを始めた時に義人くんと色々と話をしたんですよ。好きな音楽や風景の話、義人くんが北国出身で僕のベースは水墨画にあったので白と黒の雪景色だったり、音の粒の話になっていったり。その安心感があるから図形譜を描くとき極端に手数を引けたんです。背中を全力で預けられる感覚だったので。

ーそうやって信頼関係が作られていったんですね。

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田中義人:

かなり短期間でしたけど急速に。
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山崎晴太郎:

それこそプレイリストを送りあったりもしましたよ。

どこにもない、でも記憶の中にある風景

ー田中さんは図系譜を最初に見たときはどんな感想でしたか。

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田中義人:

本当に言葉にできなかったので、逆に僕は音にするほうが簡単でした。一番最初にもらった図系譜に3曲くらい作ってお送りしたんです。見る角度によって、見え方や聴こえてくる音、メロディも違ったので一つのモチーフにまとめきれなかったので。

ー普段の制作と一番の違いはどこでしょう?

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田中義人:

職業柄、どうしてもアーティストに気に入ってもらえるようなアレンジを狙いに行こうとする癖があるので、一旦そこを排除しようと思って。素直に僕自身が図系譜を見てどんな音を感じるか、自分自身を紡ぎながら形にしていきました。そこは晴太郎さんと音楽に対するものが似ていたので、僕も臆せずに表現することができたと思います。

ー自分とも向き合う時間だったんですね。

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田中義人:

そうですね。今回は“形にする”という事とは違うところで表現したかったんです。

ーそこへ、次は晴太郎さんのフィールドレコーディングで集めた音が加わえられていくわけですね。

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山崎晴太郎:

初めて音楽を作るので、やれることなんだろうと思って。楽器は弾けないけど仕事柄、国内外いろんなところに行くので、フィールドレコーディングという形で音からもらったインスピレーションをさらに録りに行きました。

ーどんなものをイメージしていましたか?

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山崎晴太郎:

自然を自然化しない、“メタ化した先”は意識していました。海の中や生命の始まりのような音とか。「使えるのかな?」「分かりやすいせせらぎの方がいいのかな?」とか考えましたが、試しに全部送ってみました(笑)。

ーそれをさらに田中さんが曲として構成していくわけですね。全体の展開などは最初から意識されていたのでしょうか。

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田中義人:

「こうしたい」という青写真があったわけではなく、作りながらですね。今この瞬間にどういう音が聴こえてくるかを探していく作業でした。

ー後半にフィルターがかかる部分はすごく印象的でした。

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田中義人:

晴太郎さんがその部分を聴いた時に「水に潜るのが好きで、その時に耳に入ってくる音に似てるんだよね」と話してくれたんです。それを意識して作ったわけではなかったので、シンクロしたポイントだと思っています。
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山崎晴太郎:

僕は1日に1回空気を遮断しないと気が済まないので、毎朝晩、お風呂に潜るんですよ。まさにあの感じだったので、完全にシンクロですね。相談したわけではないし。

ー静かなまま流れていくのかと思ったので、ある種裏切られるような動きが新鮮でした。

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山崎晴太郎:

最後に詰めていくプロセスで話したのが、“意思をどこまで持つか”という所だったんです。単なる環境音やヒーリングミュージックになってはいけないけど、意思が出すぎると僕らが目指してる景色ではない。そこの“意思の塩梅”について色々話しました。

ー“意思の塩梅”はどのあたりに落ち着いたんですか?

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山崎晴太郎:

言葉にするなら、“意思はほしいけどそれが雄弁になってはならない”ですかね。
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田中義人:

僕はやっぱりミュージシャンならではの主張が自然とそこに入ってしまうなと感じました。この曲は基本的にはループしてる音楽なんですけど、裏でメロディが鳴っていたり、和音だけどちょっとずつ三旋律になっていたり、場所によって聴こえ方が全然違うようになっているんです。

ー“意思”のさじ加減は、コンセプトである「どこにもない、でも記憶の中にある風景」がそれを凄く表している言葉かなと感じました。

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山崎晴太郎:

あのタイトルに僕らのすべてが詰まってます。一曲目のタイトルでもあるしNU/NC全体を表す言葉だとも思う。”ある風景”だけなく、”記憶”という、薄れていった先にある最後に残った“ある風景の記憶”なんですよね。
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田中義人:

自分の中にだけにある懐かしさ、郷愁感というか。形にしづらいし共感するのも難しいポイントではあるけど、ある程度形にする事で共感してもらえると思うんです。
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山崎晴太郎:

人が自然の中で生きている限り必ず“ある風景の記憶”はあると思うので、それを描き出したいんです。それは押し付けるものではなく、余白があって、その余白に入り込むことで初めて記憶が完成すると思うんですよ。

ーなるほど。“記憶”、“風景”、“音”の捉え方や感じ方について改めて考えさせられるプロジェクトですね。

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田中義人:

このプロジェクトでは晴太郎さんのデザイン、アートワークが音と対等であるべきだと思っていて。図系譜のBGMにもなりうるし、曲から想像するアートワークという聴き方もできる。そこがこのプロジェクトの面白いことなのかなって思いますね。

それぞれの表現のルーツ

ー田中さんの風景、景色への興味や表現欲求というのは、どこにルーツがあるのでしょうか?

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田中義人:

僕は“雪景色”ですね。札幌で育ったので、周りは山が多くて、それぞれの山々が雪化粧で綺麗になっている風景は幼心にすごく印象に残っていて。きれいだな、切ないな、寂しいな、嬉しいなとか、なかなか言葉で表現しきれないことをその景色を見ながらずっと音楽にしてきた意識があるんです。

音楽活動の中でも言葉にするより音にするほうが僕にとっては早くて、風景や景色みたいな自分の中の印象に基づいて音楽を紡いできたので、今回のプロジェクトはすごく自然な流れだったと思います。

ー晴太郎さんは風景や景色についてどんな考えを持っていますか?

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山崎晴太郎:

僕は自然には勝てないと思ってるんです。恐怖、美しさ、畏怖、切なさ、色々なものを内包していて、表現をする上でその本質にたどり着きたいという思いは強いけど、多分それを描き切れずに死ぬと思うんです。

でも、それに向かい続けることも一つの美しさの形なんじゃないかと思って。だから本質的な部分だけを追い求めることはずっと終わりがない、ずっと挑戦できるプロジェクトなんです。

ー晴太郎さんは水墨画、生花などもやられていますし、『陰翳礼讃』のインスタレーションなど、“わびさび”のような和のインスピレーションがルーツにあるように感じます。そこに目覚めたきっかけはあったのでしょうか?

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山崎晴太郎:

日本人だから自然とそうなっているんですよね。“引く”という意味のある余白が、すべての軸にはなってると思います。

ー今回の曲からもすごく余白を感じました。

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山崎晴太郎:

僕は学生時代、ニューヨークに留学して映画を録っていたんです。海外の作品に憧れていたのでそれっぽいものを作っていたんですけど、先生に「お前のルーツは何なんだ」「お前にしか表現できないことはなんなんだ」ってめちゃくちゃ怒られて。

でも、卒業制作で“ロストバージン”をテーマに、白と黒の世界で純白が切り裂かれるような日本の色彩表現をコンセプトにしたアートフィルムを撮ったらすごく評価されたんです。だから自分にしかできない表現や軸になるものは自分の生い立ち、育った環境の中にしかないと思っていて。真似ごとでは勝てないんだというのは経験としてあると思います。
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田中義人:

僕の場合、ずっと聴いてきたルーツとなる音楽はやっぱり西洋音楽なんですよ。そういう意味で日本人らしさを自分が表現できてるのかという葛藤はありますね。

ー田中さんのプロデューサーやソロでの活動はギタリストのイメージに反して、余白、ワビサビ、静けさを感じるようなイメージが強くて。そういった部分に現れているんじゃないかと思うんですが、ご自身ではそれぞれの活動をどう捉えていますか?

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田中義人:

他のアーティストの作品でギターを弾くのは自然なことなんですけど、自分の作品にギターを入れることはあまり自然なことではないんですよね。自分の曲でギターを入れるのは最後の最後なので、ギターが入ってないトラックだけの状態で完成してしまうんです。ただギタリスト・田中義人として世間から評価を受けている時に、全くギターが入ってない作品はどうかな?と思ったのでファーストアルバムにはギターを入れてるんですが、あんまりギターをピックアップすることは多くないんですよ。

今までの音楽にないものを実現していく

ー晴太郎さんも普段お仕事でデザインをするときとアーティストとしての表現という二面性がありますよね。

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山崎晴太郎:

僕の中では演出 / 演者という切り分けをしています。普段のデザインでは演出や最後の化粧を担当しているという意識で対象の本質を投影するように作っていますが、NU/NCは“演出兼演者”です。今回のような「役も決まってないけど舞台は開けよう。」という所から始まるような、実験的なことができるのはアーティストとしての動きの方が強いですよね。

ーデザインに関しては自身のデザイン事務所のHPで「デザインとは曖昧さの中で、未だ顕在化していない本質をすくい取り可視化する行為」という表現もされていますよね。

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山崎晴太郎:

それは常々思っています。デザインも音楽も曖昧なもののほうに魅力を感じていて。でも、概念が言葉になった瞬間に文節化されて、曖昧さがなくなるわけです。本質はもう少し曖昧なのに、言葉にした瞬間に意味が生まれたりする。もやもやした中に新しい概念があって、NU/NCはそれを音楽化してるイメージなんです。“どこにもない、でも記憶の中にある風景”だから、誰の中にもないけど皆の風景の曖昧さの中にある。その表現を音楽でやらせてもらってるんです。

ーデザインは可視化する行為で、アーティストとしては曖昧さをそのまますくいあげて違う形にしている、ということですかね。

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山崎晴太郎:

そうですね。仕事だと「名前が」「メッセージが」という話になりますから、NU/NCはそうはならないようにしたいです。広がれば広がるほど関係者も増えてくるから一個の線を通したがるけど、線を通さないことを是としていきたい。言語がないだけで僕らの中では線は通っていますから。

ーそういう意味でも言葉で表現するよりも、音で表現するほうが向いているという田中さんとの活動は必然ですね。

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田中義人:

ベストマッチなんでしょうね。
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山崎晴太郎:

でも僕らのような活動が珍しい状態じゃなくて、もっと増えてくといいなと思います。音楽は身近なものだけど、作り手と聴き手の間に凄く大きい隔壁があるような気がしてて。あるとしても大学・高校時代のバンドの話で止まってしまうけど、大人になってからもずっと「音楽好きでいいな」と思うんです。

ーでは、今後はどのようにプロジェクトを広げたいと考えていますか。

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山崎晴太郎:

僕らはNU/NCを“サウンド・アートユニット”という言い方をしているんですけど、アート文脈の中に突っ込んでいけたらいいなと思っているので、サウンドインスタレーションのような美術館での展示はやりたいと思っています。それには、曲数増やさないとね(笑)。
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田中義人:

まだ4、5曲あるので早くNU/NCとして曲を出していきたいですね。今回作ったプレイリストにビートがあるものを2曲入れたんですけど、晴太郎さんも何曲かビートが入っている曲を挙げていて。ここにもNU/NCの未来があるなって思いました。どんな形に変貌していってもいいプロジェクトだと思っているので、変化を楽しんでいきたいなと思います。
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山崎晴太郎:

今までの音楽にはない取り組みができればいいですね。あ、水中で聴く体験とかやりたいです。プール会場がライブ会場になってて、みんな潜って聴くとか!
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田中義人:

その場合、潜ってミックスやトラックダウンをしないといけないですね(笑)。
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山崎晴太郎:

余白に明確に参加できる楽曲を作りたいと思っているんです。水中に潜ると体内の音がすごくよく聞こえるんですよ。自分の呼吸音もフィールドレコーディングみたいにそのまま音楽に取り込んだり。自分から出た音の距離感を外界に連結させていく作り方ができたら面白いと思うんです。
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田中義人:

今また一個アイデアが生まれましたね。

INFORMATION

NU/NC 「recollection / 或る風景の記憶」

2020年1月16日(木)配信開始
2020年2月18日(火)アナログ7インチ盤レコード発売
レコード盤は、オフィシャルサイトにて販売開始いたします。

配信音楽サイト(一部)
spotify、apple music、LINE MUSIC、google play、amazon prime music、レコチョク

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