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文: 黒田 隆太朗 写:木村篤史
素朴な歌が聴こえてくる。『Sparkle』はiriの表現力の高さを感じるアルバムだ。まず目を引くのは参加アーティストの豪華さで、Yaffle、Kan Sano、ケンモチヒデフミらが作曲で参加。その他各曲の参加プレイヤーではハマ・オカモトやSANABAGUN.の隅垣元佐、澤村一平らが名を連ね、プロデューサー陣にはSoulflexのMori ZentaroやShin Sakiura、WONKの荒田洸の名前が並ぶなど、現行シーンをリードする作家達と彼女の音楽センスがスパークしているのが本作だ。フロア映えするアップテンポな前半から、穏やかな日常を切り取った後半まで、全曲通しカラフルな彼女の歌を楽しめるだろう。別段印象的なのが、「miracle」や「Best life」といった、弾き語り時代の歌い方を意識したという優しく囁くような彼女の歌唱だ。内面の影の部分が描かれた前作『Shade』とは実に対照的。ポジティヴなマインドを感じさせる新作について話を聞いた。
ー先日でき上がったばかりみたいですね。
はい(笑)。結構ギリギリまで粘りましたね。今回絶対やりた思っていた曲が2曲ほどあって、ちょっと実験的に作っていったのが6曲目(「Freaking」)と9曲目(「COME BACK TO MY CITY」)でした。どちらも今までやったことがないサウンドなので、そこで自分が歌詞を書けるのかもわからなかったし、私の中に正解がないので、迷いながら作っていきました。
ー「Freaking」はロックやヒップホップのエッセンスが強く出ていますね。
そうですね。ロックにヒップホップとトラップの要素も混ざっています。Princess Nokia(プリンセス・ノキア)が凄く好きで、彼女の曲の中にめちゃくちゃロックというか、下手したらメタルみたいな感じにトラップビートが入っているような曲があって。そこで女の子達が歌っている曲が凄くカッコよくてインスパイアされました。
ー元々影響を受けたアーティストとしてアリシア(・キーズ)を挙げられていましたし、前回のインタビューでは、昨年よく聴いた音楽にVanJessを挙げていました。女性の歌のどういう部分に惹かれていますか?
声質とトラックのバランスや、そのアーティストのキャラクターも含めて好きになります。Alicia Keysは最初から凄くチャーミングだけど、凄くクールなところもあって、そこで太い声で歌い上げるのは憧れでした。プリンセス・ノキアも凄くチャーミングな人なんだけど、ラップし始めたらめちゃめちゃゴリゴリでパフォーマンスも素晴らしい、そのギャップにグッときますね。
ーチャーミングなところとクールな部分が共存しているという点では、iriさん自身のスタイルにも出ていると思います。
かもしれないですね(笑)。
ー「COME BACK TO MY CITY」はアコギから始まる暖かい曲になっていますね。
これはボサノヴァとヒップホップをミックスしたトラックを作ろうと思って出来た曲ですね。元々ボサノヴァは好きなんですけど、最近ハマっていたホープ・タラっていうアーティストから影響されました。ナイロン弦のクラシックギターみたいな感じの音色にするのか、もうちょっと固い音がいいのか、ギターの音色はいろいろ悩みつつ、Sakiuraくん(Shin Sakiura)くんに調整してもらって今の音になりました。
ー今作は参加アーティストの豪華さも目を引きますね。
Kan Sanoさんをはじめ、TAARくんやYaffleくんのような、今まで何曲かやってきて、コミュニケーションをより深く取れる方といいものを作りたい気持ちがありました。今回はハマくん(ハマ・オカモト)や、サナバ(SANABAGUN.)の元佐くんや一平くん荒田くん(荒田洸/WONK)らプレイヤーの人とも、皆でワイワイ作った感じがありました。
ータイトルは「Sparkle」ですが、今作に「輝く」という言葉をつけたのは何故ですか。
前回のアルバムが『Shade』というタイトルなんですが、その時は自分のテンション的にもネガティヴな時期でした。自分の作っている作品や、アーティストのキャラクター性に関しても悩んでいた時期で、それがアルバムのテンションには全面的に出た気がします。
それは自分の中では凄くよかったと思っているんですけど、あのアルバムを出してからの1年間で、少しずつ気持ちの変化があったり、自分と向き合う時間を持つ中で心境に変化があったんですよね。まだ完全には(ネガティヴなテンションから)抜けきってはいないかもしれないですが、自分のやりたいことが見えてきたし、それに対する自信もリスナーが増えていくにつれて出てきたので。前向きになっている自分のメンタリティが、今回のアルバムには出ているのかなと思います。
ー「Sparkle」の<揺れる肝銘な未来>っていうフレーズが印象的ですね。
あんまり考え込むこともなく、そのラインは自然と出てきましたね。
ー感動的なくらいの未来を、今は信じられている?
うーん…それを望んでいるのかもしれないです(笑)。
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