新しい部屋が抱きしめる、等身大のぬくもり

Review

文: DIGLE編集部  編:Kou Ishimaru 

BIG UP! ユーザーの中から、今聴きたいアーティストをピックアップ! 今回は新しい部屋をご紹介します。

生活に宿るうつくしさに気づいて

帰り道、どこかの家から流れてきたシャンプーの香りになんだか寂しくなったこと。授業中、ぼんやり眺めた掲示板に差す陽射しがやけにきれいだったこと。

決してドラマチックじゃない、誰に言うでもない。でも、確かに心が動いた瞬間のこと。忘れてしまってもいいけれど、残しておくのは美しいことかもしれない、と、“新しい部屋” は気づかせてくれる。

メンバーそれぞれの日記を再構成する、という形で活動を行うユニット・新しい部屋。2024年6月28日、1stアルバム『野良の花壇』をリリースした。

日記を元に制作された楽曲たちは、当然、とても個人的なものだ。それは誰かの共感を呼ぶために書かれた詩ではないし、主義主張を高らかに叫ぶものでもないし、世界の真理を書き残しているわけでもない。この作品が写しているのは、自分の両手が届く範囲の、本当のこと。ただそれだけである。

だからこそ、聞き手たる私たちは「私たち自身のこと」に立ち返らざるを得なくなる。じゃあ、私の今日はどんな日だっただろう?どんな瞬間を覚えているだろう?どんな気持ちが生まれただろう?……小さな世界の開示によって、個人的であることの特別さをふと思い出させてくれる、そんな力が宿った作品だ。

新しい部屋

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