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文: riko ito
年間約5,000曲以上を紹介する「DIGLE SOUND」厳選のアーティストが出演するライブ企画<DIGLE SOUND Live>。同シリーズの一環として小田原で開催しているライブ&マーケットイベント<DIGLE SOUND Lounge>(略してDSLO)の第二回目がARUYO Odawaraにて行われた。
2023年4月22日に開催された第1回目の弾き語りライブには、川辺素(ミツメ)、内村イタル(ゆうらん船)が出演し、唯一無二のサウンドで観客を魅了した。3ヶ月ぶりの開催となった今回は、Homecomings・畳野彩加と新鋭シンガーソングライター・眞名子 新がアコースティックライブに出演。また前回と同様、東京と小田原それぞれの土地で話題の飲食店や古着・雑貨店などが集まった。
<DIGLE SOUND Lounge>の特徴は、小田原という土地だからこその空気感だ。東京の喧騒から離れた会場には、海が近い小田原ならではの穏やかな雰囲気が保たれていた。
13時にマーケットが開場すると、小さな子供連れの家族から若者まで、さまざまな人たちで賑わった。また、マーケットの入場は無料であったため、たまたま通りがかった地元の住民が会場内をそっと覗き、そのままふらっと立ち寄ってくることも。ジャンルが固定化されたイベントでは居合わせないであろう人たちが、各々の楽しみ方で自由に心地よく過ごせることもこのイベントの醍醐味なのだろう。
真鶴半島の小さなスパイスカレー屋・あしたの箱や、似顔絵ワークショップ&ニット販売のHAMAMOTO NATSUMI、阿佐ヶ谷にある古着屋・雑踏などが並んだ会場。地元・小田原と東京のショップがそれぞれ集ったARUYO Odawaraは、“カルチャーの交差点”と化していた。そこには、スタッフとじっくり話をしながら商品を購入する人もいれば、食事を終えた来場者が「美味しかったです」と出店者に声をかける姿も。来場者と出店者の触れ合いを見ると、イベントという場を通じて密なコミュニケーションが生まれていることが実感できた。
また、ARやNFTの施策を積極的に取り入れているのもDIGLE MAGAZINEが手掛けるイベントの特徴だ。今回は、会場のいたるところに「“黄色いアイツ”が出ます」の文言とQRコードが記載された掲示物が。QRコードを読み込んでカメラを起動させ、画面上に表示された赤い丸をタップすると小田原の名産・湘南ゴールドからインスピレーションを得て生み出された“黄色いアイツ”(名前未定)のARが登場。会場内で一緒に写真を撮ることができた。
日も少し傾いてきたころ、弾き語りライブ1組目のアーティスト、眞名子 新が登場。温かみのあるギターフレーズが印象的な「灯り」からスタートした。演者と観客の距離が近いためか、最初こそ少し緊張した雰囲気が漂っていたが、優しく包み込むような眞名子の歌声が張り詰めた会場の空気をほぐしていく。
「地元が神戸市なんですけど、小田原は街の雰囲気が神戸っぽくて、懐かしいなと思いました。その神戸で作った曲を歌います」と、郷愁を誘うナンバー「ナスティ・ハウス」へ。愛着のある場所での思い出やそのときの感情を想起させる、眞名子の代表曲とも言える楽曲だ。そしてそのまま「マシかもしれない」に移り、柔らかな歌声とともに眞名子のライブではお馴染みの歯笛を響かせる。
聴き手の感情を強く揺さぶるような力のこもった歌声で「言い分」を披露すると、観客の目は釘付けに。そして、「次は『 一駅』という新しい曲をやりたいなと思ってます。小田原から一駅は足柄ですよね(笑)? 一駅くらいの距離から好きな人に会いに行くという曲なので、想像しながら聴いてください」と照れくさそうに笑いながら新曲を披露。続いて「駅繋がりで駅に迎えに行く男の子の曲も歌いたいと思います」と“神戸のあらた”時代の楽曲「迎えに行く」を演奏した。眞名子の朗らかな人柄を体現しているような人懐っこいサウンドが響き渡る。
自分と同じラジオ好きに出会えたときの胸の高なりを描いた「ラジオ」では、楽しそうに体を揺らしながら、情感豊かな歌声で観客を魅了。そして、間髪入れずに上京者のひねくれた気持ちを歌う「砂ぼこり」へ。最後の歌詞を《小田原にだって 一粒砂ぼこり》に変え、笑顔で楽曲を締めくくった。
そして最後の楽曲として、カントリーでフォーキーな「僕らの大移動」を披露。《ダーウィンの海を渡りに行こうぜ 水飛沫あげながら》と歌詞にもあるが、ダイナミックで期待感を煽るようなギターサウンドを聴くと、小田原まで向かうときに電車の窓から見えた海辺の風景が浮かんでくる。楽曲が盛り上がるにつれて、観客もますます笑顔に。楽曲を歌い終えると「ありがとうございました、眞名子 新でした! 次は畳野さんです」と爽やかに繋いだ。
続いてHomecomingsの畳野彩加が凛とした姿で登場し、優しいアコースティックギターのフレーズから始まる「Tiny Kitchen」を披露。原曲の可愛らしくレトロなサウンドから一転、切なさも感じるギターの音色や儚げに歌う姿によって、原曲とは一味違う季節感の寂しげな風景が想起される。
さらに、さまざまなパートナー同士が、誰かの目を気にしたり、社会のシステムから弾かれたりすることなく一緒にいられるようになってほしいという想いのもと制作された楽曲「光の庭と魚の夢」へ。言葉を噛み締めながら丁寧に、ところどころで声を震わせて歌う姿を見ると、歌詞に込められた想いがじんわりと胸に広がるのを感じた。それから軽やかなギターフレーズが耳に残る「Continue」を届け、夕方の空気感にフィットする刹那な雰囲気を創出していく。
「カバーを3曲くらいやりたいなと思います。夜になったら涼しくなってきて、夏も終わりそうなこの季節に合いそうだなと私なりに選んだ曲です」と Lantern Paradeの「甲州街道はもう夏なのさ」、サニーデイ・サービス「時計をとめて夜待てば」、Doopeesの「だいじょーぶ」を立て続けに披露。すると「甲州街道はもう夏なのさ」の演奏中、雨の湿った勾いが漂い、繊細な歌声が夏の夜にとろけ、湿り気を帯びた空気とマッチする。「Blue Hour」を披露し終えると、「ちょうど雨が降ってますけど、この雨音がBGMがいい感じになりそうですね」と本編ラストの「Here」で観客をさらに引き込む。この日は主に繊細に歌唱していた畳野だが、最後に伸びやかで芯のある歌声と力強いギターサウンドを響かせた。
アンコールで再び席に着くと、今年の春の小田原旅行の思い出を静かに語り始めた。「外のベンチでかまぼこ(を食べながら)とビールを飲んでたんですけど、地元のおじいちゃんとお喋りして」と地元の人との交流エピソードを披露し、「絶対また今年のうちに来たいと思ってたので、今日また新しい小田原の思い出ができてすごく嬉しいです。ありがとうございました」と挨拶。アンコールで演奏した「Smoke」の《忘れないようにずっと ここにずっと書いておくけど》というフレーズが、小田原の思い出とリンクするようだった。
時間の経過も忘れて聴き入ってしまう歌声で観客を魅了した2組のライブも終了。帰路につこうとしていた小田原在住の観客の一人が「小田原には音楽とマーケットを一緒に楽しめるようなカルチャーイベントがあまりないので、久しぶりにこういうイベントに来れて嬉しかったです」と話してくれたのが印象的だった。<DIGLE SOUND Lounge>が、小田原と東京の人々とカルチャーを交流させる新しいコミュニティへと育っていってほしいと思う。
眞名子 新 SETLIST
M1. 灯り
M2. ナスティ・ハウス
M3. マシかもしれない
M4. 言い分
M5. 一駅
M6. 迎えに行く
M7. ラジオ
M8. 砂ぼこり
M9. 僕らの大移動
畳野彩加(Homecomings)SETLIST
M1. Tiny Kitchen
M2. 光の庭と魚の夢
M3. Continue
M4. Lantern Parade「甲州街道はもう夏なのさ」(Cover)
M5. サニーデイ・サービス「時計をとめて夜待てば」(Cover)
M6. Doopees「だいじょーぶ」(Cover)
M7. Blue Hour
M8. Here
EN1. Smoke
『DIGLE SOUND Lounge -Odawara- Vol.2』
2023年8月26日(土)
神奈川・Aruyo ODAWARA
OPEN 13:00 / CLOSE:20:00■web/NFT前売りライブチケット
通常チケット 2,500円(税込)
U-22チケット 2,000円(税込)■アーティストデザインNFT入場チケット:
3,000円(税込)
【LIVE】
畳野彩加
眞名子新【出店】
– 雑踏(古本・古物・古着)
– HAMAMOTO NATSUMI/CAPHAM KNIT(似顔絵・ニットグッズ販売)
– TYSON PIZZA(ピザ)
– Flow Spice Kitchen「あしたの箱」(カレー)
– 菓果(かき氷)
– stand&gallery 途艸 -ミチクサ-(ドリンク)
– 湘南オーガニックファーマーズマーケット(食品販売)
– 馬場出張写真館(フォトブース)外部リンク
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