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文: 石角友香 編:Miku Jimbo
神奈川県出身で東京を拠点に2020年から活動しているMr.マングース。彼らが“ひねくれポップロックバンド”を名乗るのはおそらく他にいい表現がないからなんだと思う。一つのジャンルに収まりきれない曲調の幅広さ、1曲の中にも突然顔を出す異ジャンル。それはひねくれというより、そもそも一つのジャンルにこだわる気がないとか、曲の中にフックを持たせたいとか、驚きを与えたいとか、そういう素直な欲求なんじゃないかと想像するのだ。
なんたって最初のリリースが『再生回数のいちばん多いやつをMVにする』と題した6曲入り配信ミニアルバム。青春8ビートからファンクとマスロックが混交した曲、堂々たる3連バラードまで全て曲調が異なり、その中からMVが制作されたのは比較的シンプルな「仮面ドライバー」だった。このバンドの性格が表れていると思う。
全曲の作詞作曲を手がける鶴田拓海(Vo,Gt)は「ポップス育ちで、ブラックミュージックとロックを好み、アイドルによくハマる」とプロフィールにあることも、結果的に“ひねくれポップロックバンド”に着地する理由なのだろう。実際、彼はコンポーザーとしても活動しており、フィロソフィーのダンスへの曲提供は彼女たちのメジャーデビュー後の1stアルバム時から行っている。そしてバンド活動以前からシンガーソングライターとして曲を作り続けているのだ。
そんな鶴田を軸に活動を共にしてきたミヤタヶスヶ(Ba)と、2023年4月に正式メンバーとなったかずし(Gt)による新体制での初楽曲が4月リリースの「シナリオライター」だった。
2022年リリースの「ヤマアラシのジレンマ」でネオソウルに傾倒した曲調を聴かせつつ、部分的にLed Zeppelin(レッド・ツェッペリン)風なアレンジも顔を出し、サブスクでも人気が高い1曲に。以降も「パノラマにて」や「irie」などでブラックミュージック・フレーバーを独自に昇華した曲をリリースしてきた。だが、似たような傾向の曲を連発しないのがこのバンド。「シナリオライター」では俄然クリアでリッチになった音像にも驚いたが、彼ら流のソリッドなバンドサウンドやダークウェイヴ調の打ち込みパートをアレンジに盛り込んだあたりも新鮮だ。それは“夢を成し遂げるためには何かを犠牲にする覚悟が必要”という、これまでどちらかといえば揺らぎ続けていた自分に喝を入れる歌詞によるところが大きいのかもしれない。
そして新体制となって2曲目の新曲となる「延命」はいわば「シナリオライター」の覚悟の背景にある心の軌跡が描かれているのではないだろうか。気持ちを確かめるような強さと透明感を兼ね備えたギターのアルペジオが物語の幕を明け、“迷い込んだ惑星を 飼い慣らした本能を ぐちゃぐちゃにして あなたに会う”というヴァースが核心としてドーンと現れる。自分でも手に負えない自分すらもそのままで、他者と対峙すること自体が生き延びることだと歌っているのだ。サビらしいサビに飛翔するが、鶴田の言葉とメロディが持つ、どこかに飛んでいくような自由度が、直線的なメッセージを無意識に回避する。シンガロングできるメロディでありつつ、暑苦しさは一切ない。こんなに内省と外に向かうエネルギーが拮抗したままのギターロックは珍しいんじゃないだろうか。Mr.マングースの曲という具体物はそれぐらい、答えありきじゃなく今の想いの結実だ。それが人から見て成功かどうかはひとまず置いておいて、何かを続けていたから今日もまた息をしている、そんな経験がある人には少なからず響く曲だと思う。
RELEASE INFORMATION
NEW Single「延命」
2023年9月6日(水)リリース
Mr.マングース外部リンク
early Reflection
early Reflectionは、ポニーキャニオンが提供するPR型配信サービス。全世界に楽曲を配信するとともに、ストリーミングサービスのプレイリストへのサブミットや、ラジオ局への音源送付、WEBメディアへのニュースリリースなどのプロモーションもサポート。また、希望するアーティストには著作権の登録や管理も行います。
マンスリーピックアップに選出されたアーティストには、DIGLE MAGAZINEでの動画インタビューなど独自のプロモーションも実施しています。▼Official site
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