文: 石角友香 編:Miku Jimbo
日本のバンドシーンに再び増えた女性ボーカルのシューゲイザーサウンド。自然体で歌ってもクールであり、鋭い言葉が轟音と相まった時、むしろ淡々として聴こえたりする。主にそんな特性が、押し付けがましさを嫌うソングライターやバンドにとってシューゲイザーサウンドを普遍的な選択肢にしているのだろう。今回紹介するヨツドメノディはそこから頭ひとつ抜けている。それは1990年代の東京のインディーシーンに存在した、ピュアと言えばピュアだし、モラトリアムといえばモラトリアムな空気感だ。曲調やメッセージは違うけれど、初期syrup16gやART-SCHOOL、きのこ帝国にあった、聴くとしんどい自分に対面するのに同時に代替不可能な慰めがある音楽。あの意識が遠のく感じ。
関西を拠点に活動する彼らは、大学時代のサークル活動を通じて2018年春に結成。メンバーは星来(Vo,Gt.)、ヤマモトジュンキ(Gt.)、カイべユウキ(Ba.)、キョウコ(Dr.)の4ピースで、これまでに最新曲「錆」を含む4曲をデジタルリリースしている。バンドの顔と言える星来のボーカルはアルトボイスだが、ジェンダーレスというより、危うい思考を孕んでいるからこそ感情的にならないようにバランスしている印象。その意思が音楽から伝わってくる。
そして2025年第一弾リリースとなる「錆」は、これまでの隙間の多いアンサンブルや遅いBPMが醸し出す緊張感のある曲調から少し変化を見せており、前進する力強い8ビートとジャングリーに鳴らされるコードストロークが曲の第一印象を支配する。だが、微妙にトレモロのアームワークでフラットするリードギターはMy Bloody Valentine(マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)の「when you sleep」を彷彿させ、不安を抱えたまま走る体感を増幅する。歌詞は明確な状況を歌わないが、ただ誰かを待って心が錆びついてしまった状況というより、自分と対象が思う愛の性質が違うことで関係性が変質したようにも取れる。独特だと思うのが《そういう間に胚は育っていて》という、自分の手に負えない新たな細胞についての表現だったりする。深い意味はないのかもしれないが、星来の書く詞に潜む絶妙なフックだと感じる。
さらにボーカル表現はバースでは抑制的でサビでは意図せず感情がこぼれ落ちるような部分もあって、ボーカリストとしてどんどん自在になっている。そして何よりシューゲイズサウンドの良いところは、焦燥も諦めも振り切りたい思いも逆の思いもホワイトアウトするようなノイズに昇華できるところだ。3月2日にはこの曲を含む1st EP『追憶』がリリースされ、今年はより本格的に存在感を示してくれそうだ。
RELEASE INFORMATION
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New Single『錆』
2025年1月8日(水)リリース
early Reflection
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