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文: 久野麻衣 写:遥南 碧
音楽メディアやミュージックバーの運営など、国内外の新鋭MUSICを発信するSpincoasterが、表現者を繋ぎ、新しい価値を生み出し発信していくプロジェクトとして始めたクリエイティブ・プロジェクトである、TOKYO SOUNDS。そのプロジェクトの中心としてあるのが、YouTube上での映像展開だ。
アーティストのスタジオセッション動画「Music Bar Session」、ジャケット写真を使った動画と音源で構成される「Moving Jacket」、気鋭ミュージシャンの楽曲でのダンスセッション動画「Dance Session」と3種類の映像コンテンツを日々アップし、そのクオリティとキュレーション力で高い評価を得ている。
そこで、Spincoasterの代表取締役 林 潤氏にYouTubeでの発信に力を入れることとなった背景や運営について、またSpincoasterや日本の音楽シーンの今後について話を聞いた。
ーTOKYO SOUNDSを始めようと思った背景にはどのような考えがあったのでしょうか。
まず、今の会社名にもなっているWEBメディアのSpincoasterは、2013年に『心が震える音楽との出逢いを』というコンセプトで始動しているんですけど、もともと音楽は演奏を発信しているものなので、テキストよりも映像の方が発信力があるだろうと思っていたんです。
時代的にメディアは雑誌、ラジオからテレビという映像になったことで圧倒的な影響力と情報量になりました。さらに個人での発信もブログなどテキストの盛り上がりからTwitterが出てきて、Instagramで写真になり、今はYouTubeやTikTok、Instagramのストーリーといった動画へと移っています。
テレビ時代は芸能の世界なので入っていくには難しさがあったけど、YouTuberをみてわかる通り、今は事務所に所属しなくても活躍の場があり、誰でも発信力を持てるようになりました。
そこで、これまでSpincoasterはWEBメディアとしてテキストをメインに発信していましたが、新たな発信の場所として映像に挑戦してみようと思ったんです。ただ、テキストでの発信は修正が効きますし、飛ばし読みができるので効率が良いというメリットもあります。なので、映像とテキストをうまくあわせてハイブリットにやっていくつもりです。
ーTOKYO SOUNDSとしてはデザインスタジオのMIRRORとタッグを組んでいるんですよね。
MIRRORはジャケット写真やMVのアートディレクションなど、アートワークを中心に制作している会社で映像監督やカメラマン、照明など撮影に関わるスタッフとのコネクションを多く持っています。私たちはWEBメディアを通じて作家やミュージシャンと直接関係があるので、そこを繋げることで相乗効果が生めそうだと思ったんです。
ーでは、制作に関わる面はMIRRORが引き受けている、ということでしょうか?
TOKYO SOUNDSのロゴはMIRRORに作っていただきました。ただ、制作に関しては場合によりけりです。私がクリエイターを見つける場合もあれば、MIRRORが見つけてくる場合もあります。お互い独自の事業をやっている中で、協力できるところは一緒にやるようなゆるやかな関係性です。Music Bar Sessionに関しては、Thundercat「Tokyo」のMVを撮っている多国籍のチームを知り合いを通じて私が見つけて、毎回入ってもらっています。
ーこのプロジェクトはSpincoasterの名義ではやらなかったんですね。
SpincoasterのWEBメディアはうちの編集長の保坂というものに掲載有無の判断を任せているのですが、このプロジェクトのプロデューサーは私がやっています。やる人間が変わるとそのジャッチも変わるので、Spincoasterの名前ではなく差別化したほうがいいと思いまして。これは内部のこだわりなんですが、TOKYO SOUNDSの方がSpincoasterよりも扱うアーティストの範囲を広くしています。
ーTOKYO SOUNDSのスタートは去年の7月ですが、そこからチャンネルの登録者数は増加しましたか?
予想外に伸びているという感じではないですね。現在の登録者数は3万人ですが、もっといってもおかしくないと思っているので、正直全然足りていないです。世界から注目される音楽メディアに成長させていきたいと思っているので少なくとも100万人くらいは必要だと思っています。
ー現在はSpincoasterのチャンネル内にTOKYO SOUNDSの動画がある状態ですが、別でチャンネルを作ることは考えなかったのでしょうか?
世間一般的には1チャンネル=1ジャンルだと思われがちですが、テレビの音楽番組は1つの番組の中でインタビューやライブ演奏など色々扱いますよね。それに近いイメージで、Spincoasterという番組の中にTOKYO SOUNDSという企画があるという感覚なんです。
TOKYO SOUNDS自体は現在Music Bar SessionとDance Session、Moving Jacketの3種類で構成されていますが、それ以外のものも増やそうと思っています。今後は音声も使った音楽ニュースを動画で出せるようにしようと考えているんです。今までテキストでやっていたことを映像にアップデートしていく感覚ですね。
あとは自社で「TYPICA」という独自のチャートも運営していますし、『CDTV』のようなキャラクターと映像でランキングを見せるようなことができればいいなと思っています。日本ではまだ音楽に特化したYouTubeチャンネルは少ないので積極的に挑戦していきたいですね。
ーYouTuberは増えましたが、音楽番組的なチャンネルは少ないですよね。YouTube上ではYouTuberのようなキャラクター性が強い方が伸びるということですかね。
そうですね。色々なYouTuberを見ていますけど、国内では、顔出ししているチャンネルの方が明らかに反応いいですよね。
ーYouTuberもたくさん参考にされているんですね。
かなり見ています。YouTubeで動画を展開するようになって見方も変わりましたね。概要欄を見るようになりましたし、チャンネル登録までの導線の作り方とかサムネイルの見せ方とか奥深いですね。
ーよく観ているYouTuberはいますか?
個人的によくみているのは、Naokiman Showというミステリー、宇宙、都市伝説系をネタに発信しているYouTuberですね(笑)。
最近観ていてすごいと思ったのはオリエンタルラジオの中田敦彦さんです。始めたばかりなのにチャンネル登録者数がすごいですから。音楽系でいうと国内はみのさん以外あまりいないですよね。
YouTuberではないですけど、海外の音楽チャンネルだと、COLORSやNPR Music、BBC Music、Vevo DSCVR、KEXP。国内だと、luteやジロッケン環七フィーバーなどは常にチェックしていますね。
ーYouTubeの研究から何か発見はありましたか?
これはYouTubeに詳しい知り合いから教えてもらったことではあるのですが、例えばKing Gnuの「白日」を検索すると一番上に出てくるのはオフィシャルのMVですが、サムネイルに表示されている文字は独特のフォントじゃないですか。あのフォントに近い文字を自分の動画のサムネイルにしてさらに本家同様モノクロにすることで意図的に再生数伸ばしている人がいるんですよ。サムネイルの見せ方は改善の余地があるので参考になりますね。
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