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文: 黒田隆太朗 写:柴崎まどか 編:Mao Ohya
卵型のUFO、涙を流しこちらを見つめるホルスタイン、そして本作の象徴たる虹色のトーテム……近未来的な質感で描かれた奇妙なジャケットが、このアルバムのテイストを端的に知らせている。PARKGOLFの新作『Totem』は、リスナーを日常の裏側にある異世界へと連れて行く音楽だ。
北海道出身のビートメイカー/プロデューサー・PARKGOLFが、4年ぶりのアルバム『Totem』をリリースした。シンセポップやニューウェイブ、インディポップからの影響が顕在化された作品で、全編を通し眩い音色が印象的である。フィーチャリング・ゲストにはSUSHIBOYSや台湾のラッパー・Mizu98に加え、前作に引き続きMOODGOODGOKUとおかもとえみらが参加。フレンドリーな面々と共に、明るいバイブスを投げかけるアルバムを作り上げている。
全曲上音はキャッチーでチャーミング……にも関わらず少し不思議な奇抜さがある。こうしたポップでもありストレンジでもあるという作風が、彼のアイデンティティなのだろう。“ソング”に主題を置いて制作したというアルバムから、PARKGOLFの音楽観を紐解いた。
ー前作(『REO』)をリリースされた頃に東京へ移られたんですよね?
そうですね。
ー4年ぶりのアルバムがリリースされましたが、環境が変わったことで自分の音楽に影響はありましたか。
東京の方がイベントは多いし、仕事も多かったのでもうちょっとこっちに馴染むかなと思ってたんですけど、そんなに馴染めなかったんですよね。東京って、ジャンル化するじゃないですか。地方のイベントって、プレイヤーが少ないから(いろんな音楽を)ごちゃ混ぜにするんですけど、東京はプレイヤーも多いので良くも悪くもカラーが出やすいところがあって。それだといろんなものを楽しめないし、好きな人達だけで盛り上がる感じになるから、ランダム性がなくなってしまうんですよね。
ー逆に言うと、そうした偶発的な要素が、PARKGOLFさんの活動には重要な刺激になっていた?
同じジャンルがずっと流れないとか、四つ打ちやっていたのにいきなりビートもののライブセットが来るとか、そういうところが良いアクセントになっていましたね。僕にとってはイベントってそういう楽しさがあるところだから、だったら無理してこっちに馴染まずに、好きにやってた方がいいなって思って。そういう発想で作ったアルバムではありますね。
ー制作はどういう風に進んでいきましたか。
前作はほとんどパソコン内で完結してたんですけど、今回はモジュラーやシンセを適当にいじったものを録音して、その中にある良い部分を使って曲にしていきました。なので『Totem』は、制作面でもランダム性を楽しんでいました。
ーロジカルに組み立てていくよりも、生の感触を大事にしたかった?
そうですね。今回は全体的に生感とか、大味の部分をさらに誇張して形にしていった感じはします。前作をリリースしてから機材を増やしたんですけど、やっぱり自分で音を作って作業する方が楽しいし、自分には向いているんですよね。昔はMPCで作っていましたし、細かいところを調整していくよりも、機材をいじって録れた音を使う方がしっくりくる感じがありました。
ー音楽的にも前作とはムードが変わっていますね。
ここ1、2年はインディーポップやニューウェイブを聴いてました。最近のチルっぽい感じとか、何年か前のフューチャーベースを取り入れたポップスは、ここ何年かで聴き飽きた感があって。そことは違うことをやりたいし、前作とは作風も変えたくて。ニューエイジを聴いてた時もあったんですけど、徐々にインディーポップに興味が移っていきました。
ーPARKGOLFさんの関心が、歌へと移っていたところもありますか。
それはありました。歌、良いですよね。めっちゃ聴いていました。抽象的な話になるんですけど、アルバムを作る時に意識することとして、ビートと上音ともう一個ソングみたいな部門があって。『Totem』ではソングを作ろうという意識が強かったので、インストも含めて全部ソングみたいな感覚があります。
ーでは、PARKGOLFさんがここ1、2年で愛聴していたソングを挙げるとしたら?
ボン・イヴェールの『i,i』をめっちゃ聴いてました。それで彼がどんなライブをするのか気になって、2019年のライブにも行ったんですけど、何をしてもボーカルが一番に引き立っていて凄いと思いました。エフェクトをかけて加工した声でも、本人を象徴するものを感じましたし、ボーカルを加工して聴かせる技術はすげえって思いました。
ーなるほど。
あと、最近だとArthurって人もよく聴いています。この人も自分の声を加工しているアーティストで、響きが奇妙なんですよね。彼はバンドもやっていてそっちの曲も良いんですけど、ソロだと奇妙さが際立ってて、特に聴いていました。
ーストレンジなものをポップにしてるのに惹かれるんですかね?
それはありますね。ど真ん中じゃないけど、“これがど真ん中になってもいいでしょ?”って感じの音楽が好きで、僕もそういう楽曲を作りたいと思っています。
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