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どこか切ないメロディと煌びやかなギターサウンド、それに絡み合う温かなボーカルで聴く者の心を掴むギターポップバンド・THE TREES。2021年にデビューアルバム『Reading Flowers』をリリースし話題を呼んだ彼らが、2023年6月21日に最新EP『Blue Period』をデジタルリリースした。
1stアルバムから引き続き、今作は菅原慎一(SAMOEDO、ex. シャムキャッツ)がプロデュースを担当。メンバーの脱退やコロナ禍など、決して平穏とは言えない日々を乗り越えた後に完成したという今作は、歌詞やメロディには不安な気持ちや葛藤を表現しているような切なさが漂いながらも、随所に温かさや希望が感じられる作品に仕上がっている。そういった作品が完成した要因となっているのは、自然な対話を重ねることによって培われたお互いへの信頼なのかもしれない。
今回は、メンバー3人にインタビューを実施。普段の制作背景や、1stアルバムから今作のリリースに至るまでの心境の変化、“THE TREESなりの孤独を表現した作品”になったという最新作に込められた想いを深掘りしていく。
BIG UP!
『BIG UP!』はエイベックスが運営する音楽配信代行サービス。 配信申請手数料『0円』で誰でも世界中に音楽を配信することが可能で、様々なサービスでアーティストの音楽活動をサポート。また、企業やイベントとタッグを組んだオーディションの開催やイベントチケットの販売や楽曲の版権管理、CDパッケージ制作などアーティスト活動に役立つサービスも充実している。
さらに、音楽メディアも運営しており、BIG UP!スタッフによるプレイリスト配信、インタビュー、レビューなどアーティストの魅力を広く紹介している。
▼official site
https://big-up.style/
ー「THE TREES」というバンド名にはどんな由来があるんですか?
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
特に決まったメッセージがあるわけではないんですけど、木って1本幹があって枝分かれしてるじゃないですか。バンドの土台である“日本語で歌う”っていう幹があって、それは守りつついろんな音楽性に枝分かれしても1本の木になるようなイメージです。ーみなさんで話し合って決めたんですか?
山本 諒(Dr.):
たしか…ファミレス行ったんだっけ?有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
そうだね。某ファミレスの2階の窓から木が見えて。ーじゃあ意味は後付け?
荏原 優太郎(Gt. / Cho.):
意味は完全に後付けですね(笑)。山本 諒(Dr.):
響き良くない?みたいな。ー(笑)。バンドとしてはどんなアーティストがルーツなんですか?
荏原 優太郎(Gt. / Cho.):
共通するルーツとしてはTravis(トラヴィス)だったり、Belle and Sebastian(ベル・アンド・セバスチャン)ですね。山本 諒(Dr.):
僕はふたりから教えてもらって聴いたら、めっちゃ好きになって。そこから共通言語になっていった感じです。ー最近もリファレンスとして共有してる音楽があったり?
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
Alvvays(オールウェイズ)とか?荏原 優太郎(Gt. / Cho.):
そうだね。あとやっぱりTravisはずっと聴いてます。2022年の来日公演もみんなで行ったので、今回の制作期間中も過去作を聴き比べたりしてました。ー普段の制作はどんなふうに進めていますか?
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
トラックはDTMで作っていて、長さとかジャンルは決めないで適当にストックしておくんです。それと並行して歌詞も作り溜めて、歌詞に一番合うトラックを選んで、その歌詞を見ながら適当に歌って良かったメロディを採用していくみたいな感じで作ってます。ーデモから曲を構築していくにあたって意識してることは?
山本 諒(Dr.):
曲自体のクオリティは全然問題ないんですけど、本人も気にしているであろう、拍が不自然な部分とか、変なところで終わっている部分をパズルみたいに埋めて仕上げていくのが、自分らのパートの役目だと思ってます。基本的に歌モノという解釈はしてるので、歌を際立たせるようなリズムとかドラムのフレーズで埋めていく感じです。荏原 優太郎(Gt. / Cho.):
僕も、めちゃくちゃいいなっていうフレーズだったらそのまま弾いちゃうし、改善できそうなところがあったらアプローチしていくのが自分の仕事かなと。あとは、必ずコミュニケーションは取るようにしていて。「絶対にここは残したいとかある?」みたいなのを聞いておいて、それから作っていく感じです。作曲者の意図もあると思うので。ー作曲者的に崩したくないポイントは?
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
イントロを聴いたときに「あ、あの曲だ」ってイントロドンができるような印象的なフレーズがほしくて。なので、特にギターリフとかはあんまり変えないでって言ってるかもしれないです。ーそもそもサウンドや歌詞を作る上でインスピレーションとなっているものってありますか?
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
サウンドは、美術展に行ったりしたときによく作りたくなりますね。そこまで深く語れるわけでもないし、ちょっとおこがましい感じもするんですけど、割とここ数年で油絵が好きになって。荏原 優太郎(Gt. / Cho.):
たしかに「海がきこえる」に《疲れたよ》ってあった(笑)。ー荏原さんが有馬さんの歌詞に抱く印象は?
荏原 優太郎(Gt. / Cho.):
単純に今作の歌詞は特に好きでしたね。やっぱり昔から一緒にいるから共有しているものも近いし、「こういうことがあったからこう書いてるのかな」って背景も見えてくる。その傾向は、前回より強くなったかもしれないです。ーTHE TREESの歌詞は、音節の区切り方が独特ですよね。今作の「黄昏」でも《風を含んだ髪が語る》から始まるサビのフレーズがかなり耳に残るというか。
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
たぶん癖ですね…(笑)。むしろ変なところで切りすぎて文章として入ってこないって指摘されることもあるというか。先ほどお話したように、トラックに合わせて歌詞をはめていくスタイルなので、そうなってしまうんですよね。メンバーにもたまにハマってないって言われるときもあります(笑)。ーサウンド面で最初に意識していることはありますか?
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
このバンドっぽい音とかは決めてます。たとえば、今作の「麦畑」は、The War on Drugs(ザ・ウォー・オン・ドラッグス)ってバンドの感じにしたいなみたいな。特定の曲とかではなく、そのバンドっぽい音像を自分たちでやるならっていうイメージですね。ー演奏面で大事にしていることは?
荏原 優太郎(Gt. / Cho.):
やっぱり僕らが好きな音楽は海外のバンドが多いので、日本詞の楽曲という自分たちの幹があるなかで、どれだけ好きなサウンドに近づけられるかみたいなところは、今回結構こだわったかもしれないですね。ーメンバーの脱退を経て、2022年3月から3人体制となりましたが、変化を感じた部分はありましたか?
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
組んだときは3人だったので、初心に返ったみたいな。かなり昔からの友だちなので、硬くなく自然に話し合って作品を作っている感覚はあります。もちろん前のメンバーがいたときもそういう雰囲気ではあったんですけど、この3人は特に昔からの友だちなので。あと単純に家の距離も近くて集まりやすくなったっていう。山本 諒(Dr.):
今作の制作期間は、今までで一番楽曲の話をしたかもしれないです。車で都内のスタジオに行って、帰りの車内でその日録音した音源を流しながら「ここ、こうしたほうがいいよね」みたいな話し合いを前回よりも密にやったと思います。ー最新EP『Blue Period』は、“THE TREESなりの「孤独」を表現した作品”だそうですね。先行曲「海がきこえる」は約1年半ぶりのリリース作品となりましたが、その間の心境の変化も制作に影響したのでしょうか。
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
コロナ禍で一人の時間が増えたこともあり、より自分をさらけ出した作品になったと思っていて。当時感じた孤独を今回は“青さ”で表現したつもりです。前作は感情をみんなで共有してるイメージだったので、今作は良い意味でよりクールになったのかなって。ータイトルはピカソの「青の時代」と関係あったり?
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
ピカソの「青の時代」と完全に状況が一緒というわけではないんですけど、僕なりの「青の時代」ということで表現したつもりではいます。周りに認められなかったとしても自分が信じることをやり続けるという葛藤や想いを、歌詞に込めた部分も多いです。荏原 優太郎(Gt. / Cho.):
この1年半経ての心境に合ってたので、僕たちもしっくりきましたね。やっぱり共有しているものも多いので、気持ちが理解できるところもあるのかなって。ー1stアルバムから引き続き、今作も菅原慎一さんがプロデュースを担当されています。菅原さんとの関わりにおける前作からの変化などはありました?
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
僕らの成長を促してくれてる感じはしましたね。前作はプロデューサーとして、メインで決めてもらうことが多かったかなと。今作では「自分はこう思うけど、3人は?」っていうような会話が増えたなと個人的には思ってました。荏原 優太郎(Gt. / Cho.):
エンジニアさんへのディレクションの仕方だったり、テイクの選び方だったり、こういうところを覚えていったほうがいいよ的なアドバイスも前回より多かったよね。自分も学ぼうっていう意識が前作より出てきて、こういう会話をして作品ができていくんだってところを特に聞くようにはしてたかもしれない。ー菅原さんの手を経て特に変わった楽曲は?
荏原 優太郎(Gt. / Cho.):
僕は「麦畑」ですね。デモには今と違うコーラスが入ってたんですけど、Aメロとサビのコーラスワークを一緒に作ってもらって、それが入っただけでだいぶ変わったなと思いました。菅原さんがコーラスしている作品も元々すごい好きだったので、力を貸していただけたのが特に嬉しかったです。山本 諒(Dr.):
僕のドラムも最初はフレーズっぽい部分が多かったんですけど、シンプルにしたほうがいいってなって。「麦畑」が一番、最初に比べて引き締まったような印象です。ー前作からのボーカル的な変化は何かありました?
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
今作は技術的な部分よりも、マインドの部分で菅原さんが気持ちを乗せてくれたというか、「楽しんで歌えばいいよ」ってボーカルブースに送り出してくれて。ーそれは曲調的に爽やかだから?
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
たぶんそうなのかな。歌詞自体は切ない感じで、イェーイっていう雰囲気じゃないんです。でも、5曲のなかで最初に書いたのがこの曲で、ちょっとだけ若いときのものだから今作のなかでは少年性が一番あると思っていて。そういった若さを出せたのは菅原さんのおかげですね。ーEPの制作はいつ頃から始まったんですか。
荏原 優太郎(Gt. / Cho.):
レコーディングに入ったのは去年の夏頃ですね。制作っていうと去年の春ぐらい?ーその頃「1993」を作り始めた?
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
曲を書き始めたのはもう少し前ですね。2年前とか。「1993」以外は、並行しつつ全部去年作ったのかな。なので、「1993」だけ若さが出ている感じがしますね。《青》って出てたし、このEPのムードにも合うのかなと思って、この曲だけ唯一引っ張ってきたんです。ーちなみに「1993」って生まれ年とか?
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
そうなんですけど、特に深い意味はないんです。ー青春の雰囲気も感じるし、生まれ年の曲だったら結構思い入れがある曲なのかなって勝手に思ってました。
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
この曲は“夏の学校”とか“夏祭りの帰り道”みたいなイメージで作って。そういう青春の思い出がなかったわけではないけど、あったかって言われたらそこまでだったので、憧れのようなものは出てたかもしれない。「1993」は仮タイトルでつけてて、しっくりきたのでそのまま使ったんです。理由はわからないけど、自分のシグネチャーが直感的に出てると思ったのかな。ーリリース的には「海がきこえる」が最初でしたが、この曲をデモから構築していく上でポイントとなった部分はありますか?
荏原 優太郎(Gt. / Cho.):
Aメロとかのアルペジオは、有馬からTravisの楽曲がリファレンスのイメージとしてあるかもみたいなことを言われて僕が作ったので、そこがハマったかなって思います。ハマったし影響を受けているものを出せたなっていう。ー全5曲のなかで特に思い入れの深い楽曲は?
山本 諒(Dr.):
僕は「麦畑」ですね。パートというよりも曲全体の力強さが一番伝わってくる曲かなって。聴いたときにテンションが上がるし、前作よりもクールになった部分が顕著に出てるなと思いますね。荏原 優太郎(Gt. / Cho.):
僕も「麦畑」。僕が付け足した部分でBメロで結構ギターをじゅわじゅわ弾いているところと、サビが今までになかったぐらい気持ちいい広がりで作れたかなと思っていて。自分はシューゲイザーとかも聴いてるんですけど、ギターでじゅわーっていう音は今まで鳴らしていなかったので、そういう影響も出せたかなというところで気に入っています。ー有馬さんは?
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
迷うな…。自分たちの曲だから全部好きなんですよね。うまく書けたっていう意味だと俺も「麦畑」なのかな。一番自分が言いたいことを言っていて、歌詞で初めてこんなに語っているかもしれない。ー「麦畑」はゴッホが弟にあてた手紙からインスピレーションを受けているそうですね。ゴッホって暗いイメージがあったんですけど、すごい生命力のあるサウンドだなって思いました。
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
たしかにゴッホの作品は明るいものばかりじゃないと思うんですけど、麦畑を題材にしたゴッホの作品は、生きるぞっていうパワーにあふれている作品が多くて。そこにインスピレーションを受けて、躍動感を意識したのかもしれないです。歌詞はそんなに時間がかからず、喫茶店とかで1時間くらいで書いた気がします。ー「ロマンス」もTHE TREESらしい温かいサウンドと切ないメロディが印象的な楽曲ですよね。
荏原 優太郎(Gt. / Cho.):
シンプルに良いメロディですよね。僕らの作品はUKっぽさが出てる曲が多いって言われることも結構あるんですけど、「ロマンス」では土臭さというか、US感みたいなのを若干意識しましたね。そこが他の曲たちとの違いかなって思います。山本 諒(Dr.):
僕の録った音源だとUSっぽさが一番ハマったかなって思えたので、個人的にこの曲の自分の音が一番好きですね。スタジオの機材を借りてサウンドのイメージを膨らませたんですけど、こうしたほうがもっとハマるんじゃないかってエンジニアさんと話しながら音作りをしたら本当にハマったので、すごい気持ち良かったです。ー歌詞は切ないですよね。
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
何かが終わった瞬間とか、届かない瞬間とかが好きなんですよね。好きって言ったらちょっと語弊がありますが、そういう瞬間の美しさみたいなものを表現したいと思っていて。誰もが全く同じ気持ちを持っているわけではないけど、そういうつらい気持ちをみんなと共有できたらいいなっていう。楽しくて明るい曲も書きたいと思ってはいても、気づいたらそういう曲がないので、いい意味で作家性が出てるのかもしれないですね。ー7月に行われる今作のリリースパーティーの意気込みや注目してほしいポイントを教えてください。
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
この作品自体は僕の孤独みたいなところが発端ですけど、コロナ禍で似たような気持ちになった方もたくさんいらっしゃると思うので、そういった想いをみんなで解放できる日にしたいなと思っています。音源とはまたちょっと違った印象を与えられるようなアグレッシブで楽しい雰囲気でやりたいなと。ー今後挑戦してみたいことはありますか?
荏原 優太郎(Gt. / Cho.):
音楽面だったら、今回デモからしっかり汲み取って構築していったところが多かったので、次は自分のエゴをもっと出していきたいなと。僕発信というよりは、その楽曲に対して僕のエゴを加えていくっていう。それで化学反応を起こしていきたいなという野望があります。ー山本さんはいかがですか?
山本 諒(Dr.):
僕も概ね同じですね。まだまだやりたいことはあるし、ドラムのプレイでいうと違ったアプローチも全然ありかなと。結構今はスタンダードにはめているっていうイメージがあるので、自分の引き出しを増やせるように、いろんな音楽を聴いてインプットして、それをもっと面白くアウトプットしていけたらなと思ってます。ー今後は、自分のエゴをもっと出していきたいというのがおふたりの野望として。
山本 諒(Dr.):
エゴ出していきたいですね。有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
出てると思うけどね。3人で作ってるわけだから。荏原 優太郎(Gt. / Cho.):
もっとできると思う。ー有馬さんがやりたいことは?
有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
音楽面だと、結構やりたいことはやってるかもしれないです。立ちたいステージだと<FUJI ROCK FESTIVAL>とかフェスに出たいですね。野外でやったことないので、<フジロック>に限らず外でやってみたいです。企画しようかな。ー2014年結成だとすると、来年が結成10周年なのでそれに向けてとか。
荏原 優太郎(Gt. / Cho.):
今気づいた。たしかにそれもいいですね。有馬 嵩将(Vo. / Gt.):
僕らの集大成みたいな作品も作りたいとは思っていて、それがたしかにやりたいことかもしれないです。RELEASE INFORMATION
EVENT INFORMATION
THE TREES × カワサキ ケイ Release Party<Bloom in blue period>
2023年7月14日(金)at 下北沢LIVE HAUS
開場18:30/開演 19:00▼チケット予約(各アーティストのメール、SNSで受付)
b_t_tree@yahoo.co.jp外部リンク
BIG UP!
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