音楽ユニット・SHIROIROが構築する役者と監督のような関係性。13曲の“聴く映画”が表現された最新作『あ、』制作背景|early Refelction

Interview
ポニーキャニオンとDIGLE MAGAZINEが新世代アーティストを発掘・サポートするプロジェクト『early Reflection』。2023年8月度Future ArtistとしてSHIROIROが登場。

“聴く映画”をテーマに活動する、男女二人組音楽ユニット・SHIROIRO。ストーリー性のある歌詞と情緒豊かなメロディを紡ぐのは、コンポーザーであり、作詞・作曲、ギターを担当する満月が好きです。だ。そして、ウィスパーボイスから芯のある力強い歌声まで、巧みな歌い口で楽曲の世界観を表現するのがボーカルのシオン

毎曲資料を制作して楽曲の世界観をシオンに伝えるという満月が好きです。と、曲の主人公を自分の中に降ろして歌い上げるシオン、この二人の関係性はまるで映画監督と役者のよう。何ものにも染まらないジャンルレスな音楽性を展開するSHIROIROは、early Refelctionとレインボーエンタテインメントの共同オーディション企画『early Discovery』の2022年10月度リリースアーティストに選出されたことを機に、着実に注目を集めている。

そんなSHIROIROの最新アルバム『あ、』が2023年8月9日にリリースされた。ひと目で興味を引くタイトルで、全曲の曲名が“あ”で始まるというユニークな本作。ただアルバム名が特殊なだけでなく、より幅広くなったサウンドと抑揚のある構成が魅力的で、耳あたりの心地よい一作となっている。

今回は、コンポーザーの満月が好きです。(以下、満月)にインタビューを実施。初インタビューだという彼に、活動名・ユニット名の由来、結成の経緯、影響を受けた音楽や文学作品、今後目指す舞台についてなど、たっぷりと語ってもらった。

sumika、YOASOBI、太宰治など――名前やスタイルに影響を与えたもの

ー音楽に興味を持ったきっかけを教えてください。

7歳ぐらいの頃からピアノ教室に通っていたんですけど、いろんな曲を弾いていく上で自分の曲を作りたいなと思ったのがきっかけですね。ギターは14〜15歳ぐらいから触っています。高校で軽音楽部に入って、そこで同級生のシオンと出会いました。

ー軽音楽部というとバンドで活動することが多いと思いますが、どのような流れでユニットをやることに?

軽音部時代はお互い別のバンドだったんです。個人的にシオンは歌が上手いなと思っていたんですけど、高校最後のライブか何かで一回だけバンドを組んで、心のどこかで「一緒に音楽をやれたらいいな」とずっと思ってて。大学に入ってから自分の曲を作っていく中で「一回歌ってみてくれない?」って誘ったのがSHIROIRO結成のきっかけです。

ー一緒に発表した最初の動画はYOASOBI「夜に駆ける」のカバーですよね。

そうですね。最初がそれで、同時進行で僕の作っていた曲も「これどう?」って誘いました。録ってみたらお互いにバチっと来たというか、「これいいんじゃない?」という空気が二人の中にありましたね。

ー満月さんのルーツはどんな音楽ですか?

好きな音楽がコロコロ変わっちゃうので、いろんなところから吸収しているんじゃないかなと。最近は、和ぬかさんをめっちゃ聴いてます。あとは自分たちが二人組なのもあって、ヨルシカさん、ずっと真夜中でいいのに。さん、YOASOBIさんは今でも好きです。

ーおふたり共通のルーツはありますか?

軽音楽部だったし昔からバンドも好きなので、共通の趣味で言うとsumikaさんはめっちゃ好きです。「こんなふうにポップな感じで作りたいよね」みたいなことを話し合ったこともありますね。

ーSHIROIRO結成にあたって「こういう音楽をやっていこう」という話はしましたか?

「名前はどうする?」って話になったときに、僕も好きな音楽や作りたい音楽がコロコロ変わる人間だし、シオンも結構そうなので、一個の方向に定めたくないなって。それで「何色にも染まらない感じだよね」「あ、SHIROIRO(白色)にしよう!」という感じで決まりました。なので、そのときから「こうなりたい」というものはあまり定めずにやろうっていうポリシーがあります。二人とも趣味で始めた活動だからこそ、好きなことをやっています。

ー確かに、作品の振れ幅には何ものにも縛られない自由さを感じました。“聴く映画”というコンセプトはどこから生まれましたか?

高校生のときぐらいに映画館に行って、その帰りに今まで感じたことのないような満足感や余韻に浸ったんですよね。そういうものを感じられる芸術や作品を作りたいなっていうのがこのコンセプトのきっかけにあって…ちょっとダサいこと言っていいですか(笑)?

ーどうぞ(笑)。

昔、「音楽は時間経過を楽しむ総合芸術」という言葉を何かで見たことがあるんですけど、“時間経過”という言葉が僕の中で引っかかって。映画と音楽ってそこで繋がっているんじゃないかなって考えたんです。人間関係とか恋愛とか感情の変化とか、そういう経過を想像できるような音楽があったらそれが“聴く映画”になるんじゃないかなと思いました。

ーとても素敵なお話です。それはSHIROIRO結成前から、ご自身の制作スタンスとしてあったものでしょうか?

たぶんありましたね。ストーリー性のあるものはずっと好きで、自ずと作るものがそうなっていったのかなと思います。でも、明確に言語化できたのがSHIROIROになったときだったので、それを推していこうって二人で話しました。

ー結成前の2019年から“満月は好きです。”名義で活動されていましたが、お名前の由来はなんでしょうか?

大学1年生のときに太宰治の小説をすごく読んでいて、『葉』という短編小説の一節に感銘を受けました。

「満月の宵。光っては崩れ、うねっては崩れ、逆巻き、のた打つ浪のなかで互いに離れまいとつないだ手を苦しまぎれに俺が故意わざと振り切ったとき女は忽たちまち浪に呑まれて、たかく名を呼んだ。俺の名ではなかった」

この文章にグッときちゃって。満月から波にフォーカスを振って、次は聴覚に焦点を当てて、“俺の名ではなかった”という展開になる…文章の簡潔さもすごく好きで、絶対に名前には“満月”を入れたいと思いました。

ーそこで“満月が好きです。”という文にするのがいいですね。

やっぱり文章に感銘を受けちゃったのと、一捻りしたかったんですよね。そういう建前がありまして、本当の由来もあります。

ー差し支えなければ、真の由来もぜひ。

本当は、大学1年生のときに片想いしてた女の子に振られて、パッと上を見たら月が綺麗だったので、そういう名前にしました。

ーなんだか夏目漱石っぽいですね!(※漱石は「I LOVE YOU」を「あなたといると月が綺麗ですね」と訳したと言われている)そのときの気持ちを忘れたくなくて、活動名にしたのでしょうか?

それもあります。あと、そのときの自分も含めて状況がドラマチックだなと思っちゃって。

ーお話を聞いていると文学の影響も強そうですが、本好きですか?

めっちゃ読みますね。昔から映画を流したり時間があるときに本を読んだりとか、結構芸術には触れてきたと思います。

ーだから、映像が見えたりストーリー性が感じられたりする歌詞が書けるんですね。

ありがとうございます。曖昧な感情とか二人の関係とかを、簡潔な歌詞になるような文章で表現するように心がけています。

感情移入の末にレコーディングで号泣

ー楽曲は満月さんが作っているそうですが、制作の方法は?

DTMで作業するんですけど、作り方は曲によってまちまちです。たとえば「飽きんといて」は“飽きんといて”って言葉の語感がいいなと思って、そこから展開させたり。逆に「アイロニー」は、歌詞とかメロとかタイトルは後にして、先に曲(オケ)だけ完成させたり、行き当たりばったりです。

ーいつインスピレーションが降りてきやすいですか?

気付いたときには絵が動いているんですよね。僕は作曲の専門学生なんですけど、思いついたその瞬間に形にできるような環境に身を置いているので、日常のいろんな瞬間で降りてきたものをすぐ形にしています。エレベーターに乗ってるときや車を運転しているとき、寝起きのときに降りてくることもあるし。次にパソコンに触れられるときまでずっと曲のことだけ考えて、パソコンに一直線です。あとはすぐ楽譜に書いたりしますね。

ー脳内再生で忘れないようにしておくんですね。気付いたら絵が動くというのは、曲の主人公が勝手に動くのでしょうか?

そうですね。主人公が動いたりシーンが変わったりした瞬間を、聴いた人も感じ取れるように表現することを重視しています。

ーシオンさんから歌詞の解釈について聞かれることはありますか?

レコーディングの前に毎回、資料を作って打ち合わせしています。ディレクションシートみたいな感じで、「この曲はこういうことを元にできた曲です」とか「この歌詞はこういう意図があって、こういう含みを持たせているからこう歌ってほしい」みたいなのをレコーディングの1週間前くらいに渡して、お互い解釈をすり合わせて。

それでも「そこはもっと後悔が混ざっている」とか、レコーディングでの解釈違いも時々ありますけど、大体僕が思ったものとシオンが思ったものは一緒になるので、歌詞の解釈について摩擦が起きることはほとんどないですね。逆に、シオンが「私はこう思う」と言ってきた新しい解釈がよくて、それを取り入れるパターンも全然あります。「じゃあこういう歌い方にする?」みたいに、歌いながら録りながら探っている感じは二人ともありますね。

ーなるほど。シオンさんのボーカルは楽曲の登場人物に感情移入しやすくなるというか、親近感が生まれてきます。

感情移入は、彼女がすごく大事にしていることで。自分の中に(曲の登場人物を)降ろして歌ってる感じが伝わってくるし、そこの表現についてのディレクションも結構します。前にシオンが「映画の主人公にならないといけない」と言ってたこともありました。あと、レコーディングのときに感情移入しすぎて、めちゃくちゃ泣いてブースから出てきたことがあったんですよ。「感情移入しすぎていろいろ思い出しちゃった」って。やっぱりすごいなって思いました。

全曲のタイトルが“あ”で始まる最新作『あ、』

ーアルバム『あ、』は、まずタイトルにインパクトがありますよね。

前回のアルバムは『顛沫』という“顛末”の字を変えた(当て字の)タイトルで、泡のように消えるエンディングを迎える楽曲たちというコンセプトで作ったんです。今回はそれに対応するようなアルバムにしようと思ったときに「全曲“あ”から始まっていろんな曲調が入っていたらすごくない?」という話になりました。

もともとそういうコンセプトにするつもりはなくて、「紫陽花」「愛せよ乙女」「アイロニー」ができた時点でシオンに「最近の曲全部“あ”で始まってない?」と言われて「じゃあ、これから作る曲は全部“あ”から始めてアルバム作ろう」ってなったのがきっかけでしたね。

ー今作はより振れ幅が増していますね。抑えるところはグッと抑えているし、アッパーチューンでは爆発力が強くなっていて。

まさに振れ幅というのをポイントに置いてまして。“あ”で縛ってるからこそ激しい曲と落ち着いている曲の振れ幅をできるだけ出そうと思って、曲順もできるだけ振れ幅が出るように意識しました。ピアノとボーカルだけの「雨の旋律」のあとはエッジの効いたロックで「アウェイの洗礼」を入れたりして。

ー確かに、その流れは特に幅を感じます。そういった部分にユニットの成長も感じられましたが、より幅広くやっていこうというムードもあったのでしょうか?

この1年は「今までやってないことをやろう」という挑戦を軸にして曲を作ってきたので、今までの枠から飛び出していくうちに、だんだん枠が広がっていったのかなと個人的に思います。ストライクゾーンを広げたというか。

ーまた、「紫陽花」をはじめ、歌詞の言葉遊びも印象的でした。

言葉遊びはめちゃくちゃ好きですね。ダブルミーニングとか同音異義語も好きですし。あとは、語感をすごく大事にしています。アルバムの中でも「愛せよ乙女」には語感とメッセージが本当にうまく噛み合ったなっていう歌詞があって。この曲は「恋せよ乙女じゃ足りない」と思う主人公がいたら面白いなと思って、ワンランク上の「愛せよ乙女」という曲名にしたんですけど、《肌に合わずに嫌うの僕らはオッケー》という部分が一番好きですね。3年間いろいろやってきて一番腑に落ちた歌詞というか、物語の主人公に自分を投影したときに表現したいことだなって思いました。

ーレコーディングについて改めて伺います。オケを録るときは、生楽器と打ち込みのバランスはどのくらいですか?

曲によってまちまちで、ギターは僕が弾いてます。ピアノも僕が弾いていることがあって、ベースは弾くこともあるし弾かないこともあるし…みたいな感じです。たとえば打ち込みのシンセベースと生で弾いたベースを用意して全部比較して、この曲にはどれが合うかっていうのを模索しています。

ーギターは全曲弾いていますよね。

そうですね。僕がユニットの一員であるっていう爪痕を残したくて(笑)。

ーいや、そもそもコンポーザーじゃないですか(笑)。レコーディングで思い出に残っている曲はなんでしょうか?

「あなたが」はアルバムの中で一番丁寧に録った曲で、一音一音にこだわりました。この曲は僕自身の大事な人との別れを表現したくて。純粋なバラードは“普通”になっちゃいそうで怖くて、作るのをずっと避けてたんですけど、その別れの体験を機に作ろうと思いました。

レコーディングでシオンの歌声を通して初めてこの曲を聴いたときに、シオンの声を通してじゃないと僕の作品は昇華されないな、僕一人では完結した作品には持っていけないんだなって強く思わされました。

ーそれは、シオンさんのフィルターを通すことで自分の感情が濾過されるのか、それとも増幅されるのでしょうか?

増幅ですね。僕が表現したかった悲しみって、こういう声の哀しみだったのかって気付かされました。そういう気付きがいっぱいあった曲なので、「あなたが」のレコーディングはすごく覚えてます。

あとは「アンサー」で合計8本のコーラスを重ねたので、シオンが「ムズすぎ!」ってブチギレながらやってたのをめっちゃ覚えてます(笑)。「ごめん〜」って言いながら歌ってもらいました。

ー(笑)。『あ、』は、特にどういったリスナーの元に届いてほしいですか?

深夜、一人物思いに耽る人ですね。夜中にだらだら映画を観るような感覚で僕たちの曲を聴いて、いろんなことを考えてくれたら嬉しいなって思ってます。

憧れのアーティスト像はモーツァルトとヨルシカ

ー2023年8月現在は作品リリースが主体となっていますが、ライブをしてみたいという願望はありますか?

いつかはやってみたいですね。ただ、僕らはエンタメじゃなくて芸術でありたいというポリシーがあって。エンタメとしてのライブじゃなくて、それこそ映画を観に来るような、芸術を楽しむようなライブができるようになるまで僕らは力を今蓄えています。知名度が上がるとか、もっと大きくなってからやりたいなと思っていて。今はライブはまだだなと思ってますね。

ー今後、SHIROIROとして挑戦したいことは?

シオンがヒップホップを歌ったらどうなるんだろうっていうのは昔から思っていて、それをやってみるのが小さい目標・展望の一つです。いろんな曲調にチャレンジしたいというか、僕らのフィルターを通したときにどういった作品ができるのかは二人ともいつも気になっています。あとは“聴く映画”がテーマなので、映像に溶け込む音楽を作っていくような活動をしたいです。映像と音楽が両立するような作品を作れたらなと。ミュージックビデオにもこだわっていきたいですね。

ー大きな目標はなんでしょうか?

これはずっと言ってるんですが、やっぱり日本ではみんなが知っている番組ですし、『紅白歌合戦』に出たいと思ってます。

ー芸術性は保ちつつ、国民的になる。そのために今動き出しているんですね。そういった動きをしたいと思うようになったのは、2022年に『early Discovery』に選ばれたのも大きいですか?

それは本当にデカいです。聴いていただける量も段違いに変わったし、自信を持てたというか。僕らのやってきたものは、誰かからいいと言ってもらえるものなんだって認められたような気がして。そこから、じゃあもっとどんどんやりたいねって思うようになりました。

ー満月さん個人として、目指しているアーティスト像はありますか?

奇をてらったみたいで恥ずかしいんですけど、モーツァルト。ビリヤードをしながらワインで激酔して、一突き打つごとに楽譜に音を書いていって曲を作る、みたいなことをしていたみたいなんです。はちゃめちゃなんだけど、いつ何時でも欠かさず音楽に向き合っているような、そういうアーティストになりたいですね。

ー確かに、そういった逸話が残ることも理想ですよね。SHIROIROとしてはいかがですか?

男女二人組っていうところと芸術性の高さみたいなところで、ヨルシカさんは憧れますね。二人とも愛されるキャラだし尊敬されているし。当たり前にどちらも素晴らしい人たちで、二人が合わさったときにさらに別のものが生まれて心掴まれる。僕らもそんなふうになりたいです。

RELEASE INFORMATION

2nd アルバム『あ、』
8月9日(水)リリース
early Reflection

<収録曲>
1. アーティアスト
2. A Lemon Ade
3. アイロニー
4. 愛せよ乙女
5. 紫陽花
6. A利少女
7. 愛だね
8. アンサー
9. 雨の旋律
10. アウェイの洗礼
11. 飽きんといて
12. あなたが
13. 朝焼けは7階で

early Reflection

early Reflectionは、ポニーキャニオンが提供するPR型配信サービス。全世界に楽曲を配信するとともに、ストリーミングサービスのプレイリストへのサブミットや、ラジオ局への音源送付、WEBメディアへのニュースリリースなどのプロモーションもサポート。また、希望するアーティストには著作権の登録や管理も行います。
マンスリーピックアップに選出されたアーティストには、DIGLE MAGAZINEでの動画インタビューなど独自のプロモーションも実施しています。

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“聴く映画”をテーマにエモーショナルで世界観豊かな楽曲を創る、男女二人組音楽ユニット。コンポーザーであり、作詞・作曲、ギターを担当する「満月が好きです。」が生み出す世界観に、ウィスパーで芯のあるボーカルの「シオン」の声が形付けた楽曲は聴く人の心を掴む。

ポニーキャニオン運営のデジタルディストリビューションサービスearly Refelctionとレインボーエンタテインメントの共同オーディション企画『early Discovery』の2022年10月度リリースアーティストにも選出された。
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