シンガーソングライター竹渕慶が最新作で表現したファンへの愛。ファンクラブは恩返しの場に|Bitfan Crossing #30

Interview

文: 山田邦子  写:山﨑 優祐  編:Miku Jimbo 

DIGLE MAGAZINEとオールインワン型ファンプラットフォーム『Bitfan』が送る、“アーティスト活動”にフォーカスしたインタビュー企画。アーティスト選曲のプレイリストと共に、これまでの道のりやファンとの関係について掘り下げます。今回は、竹渕慶が登場。

Goose houseの活動でその名を知られ、ソロで活動する現在もYouTubeの登録者数30万人を突破するなど目覚ましく活躍しているシンガーソングライターの竹渕慶。2023年9月には契約満了に伴い事務所から独立して新たな一歩を踏み出し、翌10月にファンクラブ『KEI TAKEBUCHI OFFICIAL FC』をBitfan内で開設した。

環境の変化が激しい中、彼女を支えたのはファンの存在だ。そんな自身にとって大切な人々を想い制作したニューアルバム『I Feel You』が、2024年4月17日にリリース。本作は、Norah Jones(ノラ・ジョーンズ)の作品にも参加した世界的ギタリストのAdam Levy(アダム・レヴィ)、山下穂尊(ex.いきものがかり)、西沢サトシrough laugh)、齊藤ジョニー(ex.Goose house)などとコラボとし、ファンや自分の親しい人への愛をテーマに制作された。

今回は、ファンクラブ開設の経緯や展望、アルバム『I Feel You』について伺うと共に、『交わり』をテーマに最新作のコンセプトと共振するプレイリストを選曲してもらった。幅広い話題の中でも、竹渕の言葉には一貫してファンへの想いが滲み出ている。

アルバム『I Feel You』のジャケットはファンを思い浮かべながら撮影

ーニューアルバム『I Feel You』が完成しました。前作EP『Songs for You』とはガラッと印象の違うジャケット写真ですが、きっとこの表情がアルバムに込めた想いを伝えているんでしょうね。

今回はリリース後の5月からツアーがあるんですが、ずっと待ってくれてるファンの方や、海の向こうにもいるファンの方に届けたいと思いながら作ったアルバムだったので、そういった方々を思い浮かべている表情ですね。三浦海岸で朝日を狙って撮っていただいたんですが、真冬だったからめちゃくちゃ寒くて(笑)。でもすごく綺麗に撮っていただきました。

ー今作を聴いてまず感じたのは、楽曲を聴いてくださる方との距離感でした。どんどん近くなっているように感じますし、ファンの方を大切に思う気持ちが溢れているなという印象です。

嬉しいです。やっぱり自分のルーツというか、みなさんに知ってもらった始まりはGoose houseという(動画の)視聴者との距離がすごく近いグループで。だからもう13〜14年経ちますが、ファンのみなさんは今も親目線のような感じで見てくださっている気がしてます(笑)。私のいろんなステージへの移り変わりや挑戦を見届けてくれているので、どんなステージに立っても、あの頃と変わらない距離感のままでいたいなというのはずっと思ってます。

ー前の事務所を離れたり、こうして新しい一歩を踏み出したりするときも、ファンのみなさんの存在は大きかったんですね。

とても大きいんですが、自分の中には不安な気持ちもありました。

ーというと?

ここ数年は環境の変化が大きかったので、そのたびに、それでもついてきてくれるか、それともあまり良い変化に捉えられずに離れてしまうんじゃないかという不安が少なからずあったんです。でも新しい挑戦をしたり新しい環境に身を置いたりするたびに、みなさんが「応援しているよ」っていう言葉をかけてくれてついてきてくれるし、今回のアルバムもすごく楽しみにしてくれていましたからね。今は、自分が誠意を持って挑戦し続ける限り、ファンの方々はきっとどんな環境の変化があってもずっと応援してくれるんじゃないかという、無責任な安心感や信頼感があります。

ー新しい環境になって数ヶ月経ちましたが、いざスタートしてみてどんなことを感じていらっしゃいますか?

本当によかったなっていう気持ちが一番大きいです。今回のアルバムはいろいろな方々とコラボレーションさせてもらってるんですけど、そういうことも新しい環境になったから叶ったことなので。自分にとって新しいインスピレーションになりましたね。

ー大変だなと感じる部分もありますか?

体制を変える前は制作のペースが遅かった上に、並行してYouTubeの動画制作にも力を入れながら自分自身の中身の部分を発信していくなどいろんな挑戦をしていたんですが、今はがっつり音楽の制作に集中するようになりました。

ただ、先日登録者数30万人を達成させていただいたんですが、私はYouTubeから出てきたと言っても過言ではないタイプのアーティストだし、そこで自分のことを知ってくれた方がほとんどだと思うからこそ、両方を大事にしたいなという気持ちがあるんですね。今までにないくらい制作に集中できているのはプラスになっているし、とても楽しいけど、その両立というか、どうバランスを取っていこうかというのがちょっと大変だなと思うところですね。

ダメージを負わないように張っていた予防線も、ファンのおかげでほどけた

ーニューアルバムのコンセプトやテーマに関して伺いたいです。

もともとあった曲も作りかけていた曲も、ファンの方や自分の親しい人へのもっと大きなスケールの愛、いろんな方面からの愛をテーマに作っていて。それプラス、自分の声をストレートに届けたいという思いが強くありました。1曲だけ打ち込みの曲があるんですが、それ以外は全部オーガニックでアコースティックな生音で、人肌を感じる温かいサウンドになればいいなっていうコンセプトで作っていきました。

ー今作ではいろんなミュージシャンの方とコラボされているのもトピックですね。

最初、誰が作ったのかは知らないまま、コンペ形式みたいな感じでいろんなミュージシャンの方のデモを聴かせていただいたんですね。その中でピンときたのが「I Feel You」で、rough laughの西沢サトシさんが作ってくださった楽曲だったんです。歌詞は私が書いたんですが、実はこの曲がこのアルバムの中で最初にできた曲なんですよ。表題曲にしようとかそういう思いで作ってたわけではなかったけど、全曲揃って眺めてみると、サウンド的にもメッセージ的にも、そしてタイトル的にもぴったりなんじゃないかなということで、表題曲になりました。

ー歌詞にはどんな想いを込めたんですか?

歌詞を見ると、学校の友達や友情を思い浮かべると思うんですが、私の中ではファンの方のことを思って書いていました。「君」っていうのは、私の中ではファンのことなんですよ。ライブのときには会えるけど、そんなにたくさん機会があるわけではない。だけど何をするにも、曲作るときにも、モチベーションになるのは全部ファンの方がいるからという思いなんです。曲作ろう、ライブしよう、リリースしようって思うすべての原動力になっているのはファンの方々の存在なので、そういうことを考えながら作りました。

ーそこから、もっと大きな視野を持っていくわけですね。

春の、出会いというより別れのほうかな。学生さんとかは特に、そのフェーズフェーズで、いつもそばにいてくれたような存在の人というか、思い浮かぶ人が1人はいるんじゃないかなって思うんです。離れてしまっても、「君」はずっと心の中で自分の支えになってくれているんだよっていう曲。私にとってファンのみなさんがそうであるように、それぞれの「君」を思い浮かべながら聴いてもらえたらなと思っています。

ー竹渕さんにとって、春は別れの季節というイメージですか。

そうですね。私が小さいときは家族が転勤族だったので、別れのほうを思うのかもしれないですけど。

ー海外も含め、引っ越しや転校などを経験されたことが大きかったんでしょうね。

わりとちょこちょこ学校も変わったので、友達ができたと思ったらバイバイみたいなことが多くて。今もすごく覚えてるのが、小学校の卒業式。アメリカから帰ってきて3ヶ月だけ通った日本の小学校だったんですが、3ヶ月の間に友達もできたんですよ。でも、卒業式でみんなで合唱しながら浮かんだのは、アメリカで別れてきた友達の顔だったんですよね。出会いも多かった分、別れの記憶っていうのがすごく鮮明にあるから、春は別れというイメージなのかもしれないです。

ー別れのつらさを知ると、ひとつひとつの出会いを大事にしようとか、繋がりを大切にしようというメンタルになっていきそうです。

そうなんですよね。でも逆に、小学校高学年あたりからは別れが来たときにダメージを負わないように、そんなに近くなりすぎないようにしようみたいなドライさを自ずと身に着けてしまっていたような気もします。

ーそうだったんですね。

でも、中学からは学校が中高一貫の学校で、大学もそのままみんなと一緒だったから、そこでバイバイしなくていい友達っていうのが初めてできたんです。今でもすごく仲良くしてるんですよ。それからは、わりと安心して人間関係をちゃんと深められるようになったかなと思います。

ードライな部分を持ち続けたままだったら、今回の作品もまた違った目線になってたかもしれないですね。

はい。でもたぶん、つかず離れずじゃないですけど、いい意味で期待をしすぎないという部分はあって。ファンの方は本当にずっと応援してくれていて、支え続けてくれているけど、「これからもよろしくね!」って言い過ぎるのもどうかなと思うんです。やっぱり人ですから気持ちが変わるときもあるだろうし、それぞれの生活の中でいろんな変化もあるだろうから、今までと同じように応援できなくなってしまうこともきっとあると思うんですよ。離れることもきっとある。それに対してそんなに悲観的になりすぎないようにしたいなっていう気持ちは、どこかであったりはしますね。

ーそれも自然なことのように感じます。

でもみんなは、そういう自分なのにずっと応援し続けてくれいて、ずっとそばにいてくれている。ライブをするたびに、作品を出すたびにくれるコメントを見ながら、そういう自分の殻というか予防線みたいなものが、ファンのおかげでだんだんとほどけてきている気はしています。

ーそうやって少しずつ自分の殻やドライな部分がほぐれてきたから、「Who I am」みたいな曲もできたのかなと想像します。

そうですね。「Who I am」に関しては若い頃からずっと思っていたことではあったんですが、こうやってあっけらかんとストレートに言葉にしたことは今までなくて。そうは思っていても、やっぱりどこかで、もうちょっと人にない何かを身につけたいとか、ちょっとトガッていたいとか、そういう思いが拭いきれなかった部分があったんです。でも30歳を超えたあたりから、まだ全然未熟なんですけど、大事なのはそういうところじゃないなって思えてきたところがあって。だから、今なら言葉にできるかもと思って曲にしたんですよね。

ーこの曲では元Goose houseの齊藤ジョニーさんがバンジョーで参加。レコーディングのときの楽しさが伝わってくるようです。

レコーディング、すごく楽しかったです。ジョニーのバンジョーが入って、一気にカントリーになりましたよね。杉浦琢雄さんのピアノソロもそうでしたが、みんなディレクションブースで「最高だね!」って言いながら聴いていました。

ー元いきものがかりの山下穂尊さんが歌詞を書かれた楽曲「僕になる」もありますが、レコーディングにもいらっしゃったんですか?

レコーディングにはいらっしゃらなかったんですが、一度山下さんとジョニーと3人でお酒を飲ませていただきました。山下さんが書いてくださったのは、切なくて、ふわふわって宙に浮いているような気持ちになるんだけど芯はちゃんとあるという、山下さんだからこその歌詞。この曲は詞先だったんですが、“切ない、優しさ、温かさ、強さ”というのは結構自分が曲を書くときも空気感としての軸になっている要素なので、メロディに乗せるのは早かったです。

ー山下さんには竹渕さんからオファーされたんですか?

はい。もともとグループ時代に、いきものがかりさんの曲をたくさんカバーさせていただいてたんですね。それがきっかけで山下さんはGoose houseのことを知っていて、ライブにも来てくださったんです。自分でチケットを取って。10年くらい前の話ですが、今回ご縁があって、一緒に曲を作るという経験をさせていただきました。

ー先ほど「コラボレーションができたのも新しい環境になったから」というお話がありましたが、何か支障があったというよりも、竹渕さんご自身のお気持ちがまだそっちに向かなかったみたいなところもあったのでしょうか。

Goose houseの時代は、グループ内で何組かに分かれてソングライティングをするのがスタンダードだったので、メンバーと曲を作ることはよくあったんですね。いつもそういう形で書いてたからか、脱退したときは「1人で作るぞ!」っていう気持ちが強かったんです。これからは自分の言葉と自分のメロディで作っていくんだって、良い意味でも悪い意味でもすごくこだわっていたんですよね。(アレンジやプロデュースの)YAMO_riさんと一緒に音楽や動画を作っていたくらいで。

でも、改めて思ったんです。やっぱり誰かの、自分の中からは出てこないメロディに自分の言葉を乗せてみるってすごく楽しいなって。変なこだわりみたいなものがちょっと解けて、体制も変わって、今回いろいろな方と作らせてもらったっていう経緯ですね。

ー海を越えるコラボまで実現して。

そうなんですよ。「手紙」と「Blueberry Bottle」の2曲は、世界的ギタリスト/コンポーザーであり、ノラ・ジョーンズなどとの共演でも名高いアダム・レヴィさんとコラボレーションさせていただきました。もともとアダムさんの「Blueberry Blonde」っていうインストの曲があって、アダムさんがギターでメロディラインを弾いていらっしゃるんですが、そこに歌詞を乗せてみたいとお願いしたら「いいよ」と言ってくださったんです。

ーアレンジは違いますが、同じメロディで「手紙」は日本語、「Blueberry Bottle」は英語の歌詞になっています。

最初は日本語の歌詞を乗っけて、歌をデモで録って、歌詞の英訳みたいな文章と一緒にアダムさんに送ったんです。それで「もしよろしければ、この英訳の文章をもとに、英語バージョンの歌詞を書いていただけませんか」と言ったら、それも快諾してくださって。

ー英語が堪能な竹渕さんだからこそ、アダムさんに思いがしっかり伝わったんでしょうね。翻訳ソフトじゃ実現しなかったと思います。

そうなんですよね。私が送った文章に対して「あぁ、こうやって表現するのか」って、素晴らしい変化を遂げた言葉が返ってきたので、大感動でした。宝物です。

ビヨンセ、宇多田ヒカルなど。アルバムのコンセプトと共振するプレイリスト“交わり”

ーでは今回『交わり』をテーマに選曲されたプレイリストについて聞かせてください。

自分のアルバムからの曲や、今回コラボさせていただいた方々の曲の中で自分が好きな曲。また、今回のアルバムは「30代、女性である自分がこれからどういうメッセージを発信していけるか。その第一歩」というコンセプトも自分の中であるので、女性アーティストとして尊敬していて、その中でもかっこいいなと思う曲を後半で選びました。

ー1曲目は、ノラ・ジョーンズの「ナイチンゲール」です。

私が小学生で、アメリカに住んでいたときかな? この曲が収録されているデビューアルバムの『ノラ・ジョーンズ』(原題:Come Away with Me)をずっと聴いていて。サウンド感というか、優しさが子どもながらにすごく好きで、泣きそうになったのをすごく覚えています。その頃はもちろん、アダムさんがエレキを弾かれてるなんて全然知らなかったんですけど(笑)。間奏のノラ・ジョーンズのピアノとアダムさんのエレキが、セッション的なのにめちゃめちゃ緻密に絡んでいるんですよ。その感じが本当に心地よくて、改めて好きな曲だなと思いましたし、なんで私はこの方と曲が作れたんだろうって、ちょっと感慨深く思ったりもする1曲です。

Beyoncé(ビヨンセ)は最新アルバム『Cowboy Carter』から、The Beatles(ザ・ビートルズ)のカバー「BLACKBIIRD」。

自分のアルバムが完成して、今回参加してくださったミュージシャンの方々と打ち上げをしたんですが、そのときにみんなでこのアルバムを聴きながら飲んでたんです。ビヨンセがカントリーにアプローチするっていう時点で私は脳がついていけない状態だったんですが(笑)、突然「BLACKBIIRD」が流れて来たときに、「まじか…!」って、なんて表現したらいいかわからない驚きがありました。

この曲にはいろんな方が参加されていて、ギターとコーラスワークだけで成り立ってるんですけど、コーラスワークも「なんだこのアプローチは!?」っていう、もう、殴られたかのような衝撃がありました。ここにきてビヨンセがPaul McCartney(ポール・マッカートニー)の曲をアルバムに入れちゃうなんて、すごいことが起きてるんじゃないかってみんなで喋ってたんです。

ー確かにそうですね。

でも、今までの固定概念やルーツっていう言葉を思いっきりぶち破って、新しい価値観や概念に昇華させてるアルバムだなって思いました。世界中で戦争があったり人種の問題があったりするこの時代に、あえてこういう挑戦をビヨンセがしてくれる。人間としてすごく感動しましたし、アーティストとしてこうありたいって。私もそういうことがいずれできたらすごく嬉しいし、いつかこういうことをしたいなって思わされました。

ー邦楽女性アーティストとして、宇多田ヒカルさんやNakamuraEmiさんの楽曲を選ばれています。

ビヨンセのアルバムにも通ずるところがあるんですけど、拍子がコロコロ変わって、突然表(拍子)が裏になってとか、そういう感覚が宇多田さんの新曲「何色でもない花」にもあったんです。リズムの概念みたいなものが、もしかしたら転換点にあるのかなって、ちょっと思ったりもして。概念を壊すっていう裏コンセプトがあるんじゃないかって思いたくなる感じがあったし、「何色でもない花」というタイトルにも、自分の芯を持ちつつ、いい意味で時代の変化や価値観にその時々で順応していく柔軟性というか、そういう新しさを感じて選びました。

NakamuraEmiさんは1回だけ(ライブで)ご一緒したことがあるんですが、そのときもこの曲をやってらっしゃって、めちゃめちゃかっこよかったんです。NakamuraEmiさんはかっこいい女性像を描いてる曲が多いと思うんですけど、その中でもこの曲は、女性であることや、今のSNSの時代に投げかけられる言葉とか社会に対して、真っ向から「かかってこいよ」って言ってる曲。自分の今回のアルバムの裏テーマとして“いち女性として”というのがありますし、自分との向き合い方を考えながら作っていた中で、時々この曲を聴いて自分を奮い立たせていた部分もありました。

ファンクラブや音楽活動の展望――心はずっと敏感でありたい

ー新しくファンクラブも開設されましたが、今どんなお気持ちですか?

もともと違う媒体でオンラインコミュニティを運営していて、応援してくださる方がたくさん入ってくださったんですが、今回体制が変わったこともあり、心機一転、違う媒体にトライしてみようということになりました。今までよりもたくさんの方に応援していただいてる状況で、とても嬉しいです。

今週末にはこの媒体になってから初めてのファンクラブイベントも開催するんですが(※取材時)、たぶん、まだお会いしたことのない方も来てくれるんじゃないかなって思っていて。SNSを見てると、私とファンの方は距離感がわりと近いのかなって感じるんですが、ファンクラブ向けイベント自体は前回から期間が空いてしまったので、やっと恩返しできるなっていう気持ちでいますね。

ー今SNSの近さというお話もありましたが、各種SNS、YouTubeのチャンネル、そして今回のファンクラブはどのように棲み分けていらっしゃるのでしょうか。

YouTubeに関してはライトユーザーの方もたくさんいらっしゃるし、Vlogから入ってくる方がいたり、カバーを心待ちにしてくださる方、逆に歌っている自分のことを知らない方など、(アーティストとしての自分と)竹渕慶の印象が全然違う気がしているんです。だから真摯に音楽をアップロードしたり、ライトなユーザーの方々にももうちょっと自分自身に興味を持ってもらえるようなコンテンツにしたいなって思っているのがYouTubeです。

SNSは興味の濃度でいうともうちょっと濃くて、自分の私生活とか、普段思ってることをぽろっと言ったり、インスタライブとかでみなさんとコミュニケーションを取ったりできる場所だと思っています。また、私のことをフォローしてくださっている方が日々どんなことを考えて、どういう思いでいるかというのもわかる場所だと思っていて。「読んでるかわからないですけど、送らせてください」っていう感じでつらかったことや嬉しかったこと、報告したいことをDMで送ってきてくださるんです。そこで自分のことを応援してくれてるのはこういう人たちなんだっていうのがわかるし、私にとってもファンの方が近くに感じられるから、そこからまたインスピレーションを受けて曲になったりすることも。本当に、プラスの場という印象が大きいです。

ファンクラブは、恩返しの場っていう気持ちが大きいです。運営が始まって間もないからまだ手探りな面もありますが、みんなと一緒に作っていきたいなって思うんですよね。

ーファンクラブで、たとえばどんなことをやってみたいですか?

みんなで作る場――ファンクラブに入ってくれてる方の意見とか思いが反映されてこういう場になってるんだっていうのを実感してもらえるような場になったらすごくいいなって思ってます。まだできてないけど、ファンの方の声を聞いてそれが何らかの形で反映したいなと思っています。それがたとえば作品になりましたとか、こういう企画が立ち上がりましたとか、今度のイベントでこういうコーナーができますとか、こういうコンテンツができますとか、そういうことができたら楽しいだろうなと思うんですよね。あと、これは無責任に言ってるだけなんですけど、旅行とか(笑)。竹渕慶とファンのみんなでバスツアーみたいなことをやってみたいです。

ー楽しそうじゃないですか!

バスの中でカラオケして、私がハモらせてもらうとか(笑)。あとは私、マンホールが好きなので、その土地土地のマンホールをみんなで探しに行くとか。

ーファンクラブならではの距離感ですね。

オフ会的なことをしたことがないから、限定的になるかもしれませんが、みんなで乾杯とかできたら嬉しいなって思ってます。

ーそのためにも、47都道府県ツアーで勧誘してきましょう(笑)。

そうですね(笑)。きびだんごを渡しながら、たくさん仲間を見つけてきます(笑)。

ーしかし47都道府県ツアーとは、また思い切ったスケジュールを切られましたね。

これはもう、本当に楽しみです。弾き語りと47都道府県、どちらも初めての経験なので不安もあるんですけど、それよりも単純に楽しみで。47都道府県を回った人なんて、日本人でもそんなにいないんじゃないかなって思いますしね。だからこのタイミングで、おそらく最初で最後の経験をできるのはすごく嬉しいし、今までちょっと遠くて都市部のライブには来れなかったっていう人たちとも――人によってはホント、10何年越しにやっと対面して会えるんじゃないかなって思ってるので、すごく楽しみです。

ー10周年のアニバーサリーでもありますから、みなさんからのお祝いの気持ちを受け取りつつのツアーになりそうですね。

お祝いの気持ちを伝えてくれる方、私に伝えたかったことを伝えに来てくれる方など、みんないろんな思いで集まってくれると思います。私もそれを受け止められるように準備したいし、その何倍も返せるようなライブにしたいと思ってます。

ーいろんなことが新たに始まったり、新たな挑戦が待っていたりする春。今後はどんなお気持ちで活動していこうとお考えですか?

自分もどんどん年を重ねていって、まだ今も歌い続けられていることが本当に奇跡だなって思っています。まずはこれからもずっと歌い続けて行くこと――たぶん簡単なことじゃないので、そのためには挑戦と努力を続けていかないといけないし、自分自身も人間的な部分で成長していかないといけないし、ずっと「聴き続けたいな」って思ってもらえる歌を歌い続けていきたいと思っています。何歳になっても心はずっと敏感でありたいですし、あとはやっぱり47都道府県も回りますから、聴いてくれる人、共鳴していける人の輪をどんどんどんどん広げていきたいですね。つらいことや嬉しいことをみんなで分かち合いながら、竹渕慶っていう存在を軸にして集まっていくうちに「なんかこんなところまで来ちゃったね」ってみんなと言いあえるような、そういう未来をふわっと思い浮かべています。

PROFILE

竹渕慶(たけぶち けい)

1991年生まれのシンガーソングライター。幼少期をロサンゼルスで過ごしたのち、2010年にシンガーソングライターユニット・Goose houseの前身となるグループ・PlayYou.Houseに参加。その後はGoose houseとメンバーとして活動する。その傍らソロ活動もスタートし、2013年の自主制作ミニアルバム『舞花~my flower~』、2014年のミニアルバム『KEI’s 8』などを発表した。

2018年にGoose houseを離れ、本格的にソロアーティストとしての始動。2021年7月には1stアルバム『OVERTONES』をリリースし、2022年3月にはビルボードライブ東阪ツアー開催した。2024年に2年9ヶ月ぶりのオリジナルアルバム『I Feel You』をリリース。5月より47都道府県ツアーをスタートする。

RELEASE INFORMATION

Original Full Album『I Feel You』

2024年4月17日(水)リリース

収録曲
1. My Spring
2. 恋なんて
3. I Feel You
4. Who I am
5. 僕になる
6. Voice of an Angel
7. 手紙
8. 夜明け
9. Charm
10. Miracle
11. あなたとわたし
12. Blueberry Bottle

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