イレギュラーが重なって面白いものになる。名古屋発の5人組・Romanesco Romanの余白と変化を楽しむ曲作り|early Reflection

Interview

文: 峯岸 利恵  写:Daiki Oka  編:Kou Ishimaru 

ポニーキャニオンとDIGLE MAGAZINEが新世代アーティストを発掘・サポートするプロジェクト『early Reflection』。2025年6月度ピックアップアーティストとして、Romanesco Romanが登場。

名古屋を拠点に活動する5人組バンド・Romanesco Romanが、2025年6月10日(火)に1st EP『もう行くね』をリリースした。(Vo./ Syn.)sumiのアイコニックな歌声と、独創的かつリアルな歌詞世界、さらにさまざまなジャンルを昇華/融合したサウンドが魅力的な今作について、メンバー全員にインタビューを敢行。バンド結成の経緯や、Romanesco Romanで作り上げたい音楽についても話を訊いた。

メンバーはバンドをやる喜びを再確認させてくれた存在

ー今回Romanesco Romanにとっても初のインタビューとのことで、まずは結成についてお訊かせください。

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Katsuta(Ba.):

実は、ほぼ接点のなかった5人で組んでいるんです。というのも、僕が新しいバンドを組みたいと思っていたときに、ネットを中心にメンバー募集をしたり他のバンドに自ら参加したりしていて。そのなかで、ギターのキシモトと一緒にスタジオに入って半年間くらい活動を共にしていたんです。そのバンドは空中分解してしまったのですが、しばらくして彼から「一緒に何かやらない?」と声をかけてもらったのがRomanesco Romanの始まりです。そのときにキシモトが連れてきたのが、ボーカルのsumiでした。それが、2024年4月くらいです。

ー最初、キシモトさんとはどんなバンドをやろうとしていたんですか?

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Katsuta(Ba.):

最初は、シューゲイザーをやりたいねと話していました。でもそれも結局アイデアの一つに過ぎず、一緒にセッションしながら多様化していった感じです。そこから、女性ボーカルを入れたいねという話になって、sumiを紹介してもらいました。
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キシモトタクヤ(Gt.):

sumiとは、以前別のバンドを組んでいたんです。そのとき、彼女はベースだったんですけど、コーラスで聴いたときの声も良かったのでボーカルを勧めて加入してもらいました。
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sumi(Vo. / syn.):

プレッシャーは大きかったですね…。今までやってきたバンドでは、ボーカルというポジションはほぼしたことがなくて、特段自信がある訳ではなかったので。でも、この声を気に入ってもらえた嬉しさもあり、加入を決めました。
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saeri(Dr.):

私は、順番的には最後に加入しました。今作のレコーディング/ミックス/マスタリングを手掛けてくれた、EASTOKLABHiokiさんが紹介してくださって。話を貰ったときには、敬愛しているEASTOKLABのメンバーに仲介してもらえたという喜びが大きかったですね。というのも、バンドを組みたい気持ちがほとんどなかったんですよ。本メンバーとして活動していたバンドも抜け、それ以降は、サポートとして活動していた期間も長かったので。なので、1回目のスタジオ終わりに「やろうよ〜」って言ってもらえて、正直すっごく悩んだんです。でも、「これはもうノリだな!」と思い直し、やることにしました。スタジオでの空気感がとても良かったですし。

ーとても良い理由ですね。

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saeri(Dr.):

そう思います。健康的ですよね。

ーKDさんはいかがですか?

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KD(Gt.):

僕は、メンバーのなかでは、このバンドのリーダーであるKatsutaとの付き合いが一番長いんです。元々、(Katsutaが)大学の先輩だったんですよ。僕が昔やっていたバンドを辞めてから自分でも音楽をやろうと思ったんですが、これがなかなか上手くいかず、この先バンドはやらずに一生リスナー側でいればいいなと思っていたんです。でもあるとき、Katsutaがサポートしていたバンドに誘われて、久々にギターを弾いたんです。それをきっかけにRomanesco Roman加入の誘いを受けて、音楽的にもかなり良いバンドだったので加入しました。

ーsaeriさんとKDさんは、もうバンドを組まない!という気持ちまであったのに、それを覆されるほどの魅力が、Romanesco Romanにはあったんですね。

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KD(Gt.):

そうですね。このメンバーで鳴らすのがとても楽しいですし、バンドをやる喜びを再確認させてくれた存在ですね。

ー2024年10月の結成以降は、ライブというより制作をメインに活動されている印象があります。

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Katsuta(Ba.):

そうですね。良い音楽を作りたいという思いが個人的に強かったのですが、それはライブ欲とは別だったんですよね。音楽家として、まずは“音楽を生み出す”という行為を達成したかったので、そういった過ごし方に振り切りました。

ー5人で活動することが決まり、楽曲制作を行なうなかで、Romanesco Romanで成し遂げたい目標や音楽性は明確化したんですか?

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Katsuta(Ba.):

音楽性でいえば、オルタナに軸を置きながらもシューゲイザーやインディロック、ドリームポップといった、洋楽ライクな音楽ですね。そこにアイコニックなsumiのボーカルや歌詞が加わることで、自分たちならキャッチーさもミックスさせていけると感じたので、それを追求しています。

ー皆さんのルーツは、どのような音楽なのでしょうか?

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Katsuta(Ba.):

僕の音楽的ルーツはASIAN KUNG-FU GENERATIONではあるんですけど、バンドを意識した原点は、ハロルド作石先生作の漫画『BECK』ですね。漫画なのでもちろん音は鳴っていないんですけど、バンドのカッコよさはそこで強く感じました。あとは、大学生になってから聴いた、cinema staffからも大きな影響を受けています。彼らの音楽性や活動は、僕らが目指すバンド像に近いです。難しいことをキャッチーにやるという、大衆性とコアな部分のバランス感がちょうどいいと思っているので、自身のルーツ・ミュージックではありますね。
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キシモトタクヤ(Gt.):

ギターを始めるきっかけであり、これまでの人生で一番聴いてきたのは、ゆらゆら帝国です。特にライブ音源には衝撃を受けました。自分のプレイに影響を与えてくれたのは、Yeah Yeah Yeahs(ヤー・ヤー・ヤーズ)です。シンプルなのにカッコいい。あとは、Mogwai(モグワイ)の静と動を使い分けるところや、初期のRadiohead(レディオヘッド)には感銘を受けています。
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saeri(Dr.):

私のすべての音楽の原点はCharaです。そこからオタク的にハマっていったのは、高橋優RADWIMPSリーガルリリーユレニワですね。今まで自分がやってきたバンドはポップスやロックが多いです。
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KD(Gt.):

初めて買ったCDは、ストレイテナーの『Dear Deadman』でした。このとき小学生だったんですけど、本当は、ドラマ主題歌だったレミオロメンの「粉雪」のCDを買おうとしていたんです。でも、“3人組”“髪の長いボーカル”“カタカナのバンド名”という情報だけを頼りに手に取ったのが、『Dear Deadman』で(笑)。それで、ここを起点にロックを聴き始めました。両親も音楽が好きで、父親はハードロックやグランジ、母親はJ-POPなども聴いていました。学生時代には残響系の音楽が流行っていたので、cinema staffやthe cabsを聴くようになり、大学生時代には90年代のエモを聴いていましたね。プレイに影響を受けているのは、名越由貴夫さんや、元Death Cab for Cutie(デス・キャブ・フォー・キューティー)のChris Walla(クリス・ウォラ)といった燻銀的なギタリストです。
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sumi(Vo. / syn.):

最初に買ったCDはYUIですね。バンドを始めようと思って聴いていたのは、GO!GO!7188です。「片思いファイター」という曲を聴いて、「強くてカッコいい!これを歌いたい!」と思ったんですけど、音域や声質の違いもあって全然歌えなかったんです。それで、ボーカルではなくベーシストとしてバンドを始めました。その後、相対性理論に出会い、その声を張らない自然体で個性的なボーカルに魅了され、そこから改めて歌を歌うようになりました。

アイデアに対して誰も否定的にならない。信頼度の高い空気感で生まれる楽曲たち

ー今回、1st EPとなる『もう行くね』をリリースされましたが、今作のコンセプトや作品の方向性は元々決まっていたんですか?

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Katsuta(Ba.):

いや、なかったですね。自分たちが本当に良いと思える曲をたくさん作っていくなかで選んでいった珠玉の6曲です。

ー歌詞は全曲sumiさんが書かれているということで、作詞においてはどういう作り方をしているんでしょうか?

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sumi(Vo. / syn.):

Katsutaが原案として持ってきてくれるデモは、ほとんど完成系に等しいくらいしっかりとしたものなんです。それを聴いて歌詞やフレーズを想像していく作り方なので、完全に曲先行ですね。そこから自分なりに、サウンドに合った物語を作っていきます。
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Katsuta(Ba.):

実は僕が渡すデモ音源は、sumiのボーカルや歌詞が乗ることを前提としている訳ではないんですよ。というのも、自分のなかで良いと思える状態に形成しつつ、あとはsumiが考えるメロディや歌詞次第で変化させていいと思いながら渡しています。なので、原型とは違う仕上がりになることも多いです。イレギュラーが重なって、さらに面白いものになることも多いですし。

ーそこから詰めていくのは、スタジオで?

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Katsuta(Ba.):

そうですね。用意してきたものをスタジオで合わせながら、持ち帰るときは持ち帰って、次のスタジオでまた合わせる、という方法で今作は作っていきました。それぞれのパートに任せることが多いので、スタジオとスタジオの間にラリーをすることはあまりないです。
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キシモトタクヤ(Gt.):

こういう制作方法は、僕自身初めてで。今まで組んできたバンドは、セッション的な感じで詰めていくことが多かったので、事前にデモが用意された上で詰めていくという方法は刺激的でした。Katsutaもデモにも遊びがある状態で投げてくれるので、やりやすいです。
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KD(Gt.):

僕も自分主体でやっていたバンドは、弾き語り状態からアイデアを詰めていくパターンだったので、全部の楽器が入っているデモが送られてきたときは衝撃でしたね。Katsutaがギタリストじゃないからこそ生み出せる余白があるので、自分が思いついたアイデアを盛り込みやすいというのも特徴ですね。
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Katsuta(Ba.):

5曲目の「枯れた惑星」なんかは、元々はギター2本のアルペジオが重なって、一定のビートが鳴り続けるようなサッドコア調の泥臭い曲だったんですよ。でも、sumiがシンセサイザーで隙間を全部埋めてくれるようなアレンジを提案してくれて、ドリームポップ的な要素が混じり合った曲に変わっていきました。
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saeri(Dr.):

あと、本当にスタジオの空気感が良いんですよね。今の話にあったように、こうしたほうがいいんじゃない?というアイデアに対して誰も否定的にならずに、じゃあ一回やってみよう!と自然になる。次のステップに進むために滞りなく動ける空気ができあがっているので、コミュニケーションが取りやすい環境がありがたいです。

ーキシモトさんとKDさんが仰っていたようなアレンジありきの余白というのは、Katsutaさんも意識的に作っているのでしょうか?

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Katsuta(Ba.):

そうですね。例えば、今作の1曲目にある「Thinking out」は、ハードロック調の印象的なギターソロがあるんですけど、元々そこはソロではなかったんですよ。全員で120%の楽曲を作っていくという指針があるからこそ、良くなる為に変化させていくことに対して躊躇しないという気持ちはあります。

人との別れや過去の自分との決別についての作品

ー柔軟な考え方のもとで作られていくメロディに、sumiさんはどのようなフローで歌詞や世界観を付与していくのでしょうか?

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sumi(Vo. / syn.):

「Thinking out」については、Katsutaが送ってくれたデモ上でふんわり載せていたボーカルが《Thinking out》と歌っていたので、そのまま拝借しました。そこから、曲の雰囲気に合わせつつ、「主人公は何を考えているんだろう?」というふうに考えていって、作詞していきました。

ー今作の歌詞は、全体的に主人公ありきのフィクションではあるけれど、そこにリアルな感情を投影している印象を受けました。

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sumi(Vo. / syn.):

まさしくその通りです。基本的にはフィクションなんですけど、やっぱり全曲にsumi自身の感情が少しずつ入り込んでいるなと思います。1曲ずつ登場人物は違うんですけど、全部の曲が違う考え方のようにも見えるし、でも自分自身が入り混じっているようにも聴こえるので、不思議な気持ちになることもありますね。歌い方もそれぞれの曲に合わせて結構変えていて。特に「羽化前夜」や「Thinking out」については、可愛くて強い女の子というイメージがあるので、ライブでは表情も意識しています。

ー「枯れた惑星」は特にフィクション色が強い歌詞世界ですよね。退廃的と言いますか。

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sumi(Vo. / syn.):

この曲は、短編映画を作ろうという思いで歌詞を書いていきました。そういう制作はずっとしてみたかったので、楽しかったです。

ー作詞経験はこれまでもあったんですか?

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sumi(Vo. / syn.):

実は、かなり昔に書いたことがあったんですけど、すごく評判が悪かったんです…。なので作詞には躊躇した部分もあったんですが、Katsutaの作る曲との相性が良かったおかげで、今ではすんなり言葉が出てくるようになりました。最初は1ヶ月考えても全く出てこないときもありましたね…。
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KD(Gt.):

それぞれの曲にしっかりとした芯があるよね。
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saeri(Dr.):

Katsutaは語感に対してメロディをつけていき、sumiがそれに物語や感情を肉付けしていく作業って、なんというか、ふたりが曲の中で生きる人間を作っているような感じなんですよね。なので、歌詞を聴いて叩き方を変えるという作業を結構しました。ちょうど最近も、今作には入っていない曲の制作でスタジオに入ったんですけど、その曲のテーマがラブソングだったので勝手にハッピーエンドを想像して叩いていたんです。でも後からsumiに歌詞を確認したら、結構愛憎交じりの内容だったので、叩き方を変えました(笑) 。Romanesco Romanは、歌ありきのバンドだと思っているので、そういうふうに「歌を聴かせるためにどう演奏するか?」という思考は常に念頭にありますね 。
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Katsuta(Ba.):

歌詞を活かしたいという共通認識を持ちつつも、どの曲も楽器が活き活きとしているので、そこは今作の聴きどころの一つだと思います。

ー曲順については、序盤〜中盤にかけてはキャッチーさが際立つ楽曲が続き、終盤に向かってはシューゲイズ色の濃い曲に移り変わっていってフィナーレを迎えるというストーリー性を感じますが、この流れも試行錯誤されたんですか?

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Katsuta(Ba.):

これは偶発的といいますか、構想ありきの流れではなかったですね。フルアルバムで全曲通して一貫性を感じさせる作風ももちろん好きなんですけど、今作に関しては自分たちの名刺がわりの1枚になる前提で作っていたので、バンドの幅を少しでも多く見せたいという気持ちがありました。さまざまなジャンルのテイストをRomanesco Roman的解釈で提示したいという思いもあったので、この選曲と曲順になりましたね。

ー歌詞の内容やサウンドは退廃的で陰鬱な雰囲気がありつつも、どの曲も希望が宿っているなと感じましたし、それがタイトルの「もう行くね」という言葉に集約されているようにも思いました。

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sumi(Vo. / syn.):

タイトルは、6曲揃った時点で私が決めました。それぞれの曲の共通点が、人との別れや過去の自分との決別だったので、そういった出発点のような作品になったなという印象から、この言葉を付けました。
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Katsuta(Ba.):

口語的な言葉なので、「タイトルとして使うのはどうなんだ?」とも思ったんですけど、意味を掘り下げていくにつれてこの言葉がピッタリだなと思い直しました。

ー始まりを象徴するような今作を無事に完成させたことで、今後の活動もまた楽しみですね。

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Katsuta(Ba.):

そうですね。年内に名古屋でのリリースパーティ、来年にはフルアルバムをリリースしたいという構想があるので、それに向けて鋭意制作中です。大きな一歩を踏み出す為に、引き続きしっかりと純度の高い、良い楽曲を届けていきたいと思います。

RELEASE INFORMATION

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Romanesco Roman 1st EP『もう行くね』

▼CDリリース
2025年7月10日(木)

▼配信
2025年6月10日(火)

Tracklist:
1.Thinking out
2.lonely girl
3. 羽化前夜
4. 観覧車
5. 枯れた惑星
6. 晩冬

early Reflection

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early Reflectionは、ポニーキャニオンが提供するPR型配信サービス。全世界に楽曲を配信するとともに、ストリーミングサービスのプレイリストへのサブミットや、ラジオ局への音源送付、WEBメディアへのニュースリリースなどのプロモーションもサポート。また、希望するアーティストには著作権の登録や管理も行います。
マンスリーピックアップに選出されたアーティストには、DIGLE MAGAZINEでの動画インタビューなど独自のプロモーションも実施しています。

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Romanesco Roman(ロマネスコ・ロマン)

2024年4月結成の5人組バンド。 メンバーは(Vo. / Syn.) sumi 、(Gt.)キシモトタクヤ、(Gt.)KD、(Ba.)Katsuta、(Dr.)saeri。インディロック、シューゲイザー、ドリームポップを内包したバンドサウンドにアイコニックに漂うボーカルを乗せた、メランコリックな雰囲気とキャッチーさを兼ね備えた楽曲で注目を集めつつある。
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