生き急いでいた青春を取り戻す、meimuの2022年ならではの普遍的ポップ

Review
ポニーキャニオンとDIGLE MAGAZINEが新世代アーティストを発掘・サポートするプロジェクト『early Reflection』より、今おすすめのアーティストをピックアップ!第7回目はmeimuをご紹介。

「霧に飲まれた夢の中で。」をテーマに2021年3月から活動しているという男女3人組のmeimu。作曲、アレンジ、ミックス担当のM.mask、作詞、作曲、歌、ボカロPでもあるNaこ、作曲やキーボード、ギターなどのhiyoからなる彼らの作品性は2021年配信リリースの「煙」「かたっぽ」「Dry Eye」「Dream Land」の頃から徐々に変化しているようだ。今挙げた楽曲では<全国ハモネプリーグ2021夏>で優勝した男性ボーカルのHaRuがフィーチャーされており、チルアウトヒップホップやピアノポップをボカロPの文脈で昇華したような作品性が窺えるが、高難易度のボーカルではなく、DTMが作品作りの当たり前の手段になった世代が作る、完成度の高いポップミュージックに着地している。さらに、2022年リリースの初のアルバム『夢色透明』にはこちらも<全国ハモネプリーグ2021夏>で優勝し、ソロ楽曲もリリースしている牧野正虎をコラボシンガーとして迎えている。そこでmeimuがユニークなのは、男女ボーカルが織りなすすれ違いの表現というより、各々が相手のことを別々の場所もしくは各々の視点で思い、愛することで、なんとか自分という存在を維持しているような、主体の曖昧さが妙にリアルに感じられる部分だ。

素直なピアノポップから感じるmeimuの現在地

前出の作品群では男性も女性も、情熱的な恋愛の渦中にいるわけではなく、相手を通して自分を見つけようとしているニュアンスが強い。ヒリヒリした感情ではないけれど、どこか生きているのかそうじゃないのか輪郭がぼやけた日々の中で、自分が前進するきっかけを模索しているようでもある。その輪郭の曖昧さは、不安定な内容を歌いつつも音数を削ぎ落としたアレンジと、それでも自然に発生するグルーヴ、チルアウトヒップホップのテイストや、スキルをひけらかさないピアノによって生み出されていて、さらに、ふんわりと存在するNaこの声質や、男性のゲストボーカルもジェンダーレスなニュアンスに由来している。

ちなみにNaこは“nakotanmaru”名義でPIKASONICの「ドリームイーター」などに詞を提供しており、そこでは曲調に合わせてmeimuよりはソリッドな言葉も書いている。またhiyoはインスタグラムにて、米津玄師AdoAimerらのヒット曲のピアノカバーを公開。個人的にはwarbearBBHFのカバーが目立つあたりに彼女のメロディや作曲のバックボーンを感じた。

そこで今回紹介する「ミュージック」なのだが、これまでで最も素直なピアノポップの印象を受ける。ビートはチルアウトヒップホップ的だが、ドラムもベースも生音のアンサンブルに近く、オルガンのサウンドもどこか懐かしいソウルの匂いがする。そしてNaこメインというか、ほぼ全編彼女のボーカルで表現される“現在”はなぜか生き急いでいた10代や青春時代に本当は「そうでありたかった」二人を生きようとしているように思える。タイトルの「ミュージック」が持つ意味合いが少し大人になった彼らにとって、どう変化したのか、もしくは深まったのかを曲全体で表現しているように思えるのもグッとくる。1サビでは《イヤホン片耳ずつにつけてさ 僕らの話し声すらバックミュージックさ》という部分に、2サビでは《コーヒー片手にドライブしてさ 僕らの夢も乗っけてくれる ミュージックさ》と、実人生における音楽との自然な関わりが感じられるのだ。

『夢色透明』までの主人公の不安や迷いは、とりあえず置き去りにしていた青春を探しにいくという、意思へと前進したんじゃないだろうか。と、共に「meimuにとって音楽とは何か?」がサラリと表現された新たなフェーズとも言えそうだ。

RELEASE INFORMATION

Digital Single
「ミュージック」
2022年11月18日(金)
meimu

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meimu(メイム)

ボーカルのNaこ、コンポーザーのM.mask、hiyoからなる3人組音楽ユニット。2021年3月に活動をスタートし、精力的に作品を発表。2021年12月にHaRuが脱退し現体制となる。2022年5月にはコンセプトアルバム『夢色透明』を発表。

ポニーキャニオン運営のデジタルディストリビューションサービスearly Refelctionとレインボーエンタテイメントとの共同オーディション企画“early Discovery”にて8月度月間賞としてリリースアーティストに選出され、注目を集めている。

Naこの繊細で儚い歌声と歌詞、M.maskとhiyoのメロウかつどこか情熱的なトラックで、日々誰もが抱えてしまう悩みや葛藤に寄り添い背中を押せるような曲を目指して制作している。
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