文: ヨシヤアツキ
ー今回のコラボのきっかけはなんだったんですか?
TPSOUND(以下、TP):
lute(ルーテ)のワークショップで会ったんですよね。タカノシンヤ(以下、タカノ):
そうだね、web上ではお互い知ってて、spotifyの関連アーティストのトップにお互いが表示されていた事もあったんです。でも実際には会ったことはなくて。ある時にluteのワークショップに僕とナギー a.k.a.kentaro nagata(以下、ナギー)が行って最前列で真面目に構えていたら、後ろに座ってたTPから話しかけられて。TP:
僕は以前、ライブハウスの店長やっていたんですが、そこにナギーさんが何回か出演していたのを覚えてたので話しかけてみたんですよ。タカノ:
お互い顔出しをしてないので普段から誰かに気づかれることもないので驚きましたね(笑)。ーそこで意気投合したという感じですか?
TP:
ワークショップの時はみんな前列にいたし、なんか熱量が一緒だったというか。ワークショップが終わった後に原宿の中華料理屋に飲みにいって、そこでかなり色々話して、コラボしてみようって話になったんですよね。タカノ:
また違う日に次はTuneCoreのワークショップがあったんですけど、そこにナギーと行ったら偶然またTPが居たんですよ。その時にはコラボが決まっていたのでお互いの意識を再確認したというか。とにかくコラボが決まってからの制作のスピード感はとても早かったですね。ーなぜセミナーに行こうと思ったのですか?
TP:
僕らはちょうど術ノ穴のレーベルを抜けて、自分たちでやって行こうと思っていたところだったんです。サブミッションメディアの仕組みをちゃんと理解したくて参加しました。タカノ:
僕はナギーに誘われて一緒に行くことにして。僕らも自分たちでプロモーションを考えるので興味ありました。ー意識が同じ方向に向いていたんですね。その他、お互いの共通点ってありますか?
タカノ:
僕らは以前の取材でも話したんですけど、基本楽曲制作は直接集まることなく、それぞれが制作したものをデータでやりとりしてクラウドで管理しているのですが、City Your Cityもやり方が似てるというか、k-overさんは北海道にいるので、遠隔でデータのやり取りして曲作っているんだよね?TP:
ここ2年くらいはk-overが北海道で僕は埼玉にいるので、そんな感じですね。ー制作方法が結構近かったんですね。
TP:
そうですね、あと分かりやすいのは顔を出してないっていうことですよね。ー僕も最初に浮かんだのがそれでした。
タカノ:
楽曲も親和性あると思います。City Your Cityの曲はペーソスを感じるんですよ。切ないよね。Frascoも結構哀愁あるって言われているので、そこも似ているかなと思います。k-over:
確かに哀愁感はありますね。ー共通点が多いとはいえ、一緒に楽曲制作するのは初めてですよね。実際やってみていかがでしたか?
タカノ:
今回は完全分業制で制作したんですよ。トラック担当がTP、メロディー担当がk-overさん、歌詞担当が僕で、ボーカルとデザイン担当が峰さん、ミックスとマスタリング担当がナギー。全員が1人でそれぞれの担当の制作をしました。ー制作順に合わせて一人ひとり製作ポイント伺いたいです。まずはテーマからお願いします。
タカノ:
TuneCoreのセミナーの帰りが夏の夜で、夏いいよねっていう話をしたんです。その流れでざっくり、夏をテーマにすることが決まりました。平成最後の夏だし。TP:
トラックはR&Bなんですけど、80年代のディスコっぽい感じとかアイドルソング好きで、それを意識して作りました。間奏はお祭りの意識で、三連祭りビートっぽいリフを途中の間奏と混ぜてみたら結構ハマりました。僕的に峰さんの歌声の雰囲気が80年代のアイドルっぽいと感じていたので合うかなと思いました。ーそれを受けてk-overさんがメロディー付けをされたんですね。
k-over:
TPからトラックもらって僕がメロディーを作るのがCity Your Cityのいつものやり方なんですが、今回もそうでした。トラックに関しての説明がない時もあるんですけど、聴いたらだいたいTPのやりたいことは分かるんですよ。たまに大外れすることもありますけど...(笑)。今回は80年代シンコペーションっぽい感じでいきたいのかなと思ってメロディーをつけてみました。ーピッタリですね!!
k-over:
サビのところは海で女の子が跳ねてるところをイメージしていて。あえてずらすような感じです。あとは歌い方については、僕は感情が表に出てる歌い方をするんですけど、峰さんは真逆なのでどっちにしようか悩みましたね。一旦は自分の歌い方で作ったんですけど、みんなで議論して結果感情を表に出さない感じに落ち着きました。あと、元々は僕がコーラスを入れるという話だったんですよ。掛け合いみたいになったらいいんじゃないかと思ったんですけど、その時にはナギーさんのミックスが上がってて、僕の入る余地がないくらい素晴らしいミックスだったんです。入れる必要ないかなと思いながらも自分のコーラスを加えてみて、みんなに相談してみてなくてもいいんじゃないかという話になったので、やはり間違ってなかったなと思いました。
こういうのは化学反応と一緒で、投げて戻してを繰り返すことで良いものができると思っているので、こだわりは勿論あるんですけど、俺はこれだ!という感じで頑固にいくのではなく柔軟にやっていきたいと思っています。
ー次が工程3、歌詞ですね?
k-over:
僕が鼻歌で作ったメロディーに即日で歌詞つけてたよね。タカノ:
今やりとり見返してたら47分で書いてましたね(笑)。僕は人が作ったメロディーに歌詞をつけることが初めてだったんですけど、k-overさんのメロディーを聴いた時にバチッときて、1回本能的に書いてみようと思って書いてみたんです。そこから微調整というか、意味付けをしました。なのでこの時点でタイトルが「My summer Your summer」とは決まっていたんですけど、“My summer=現実世界の自分の夏”、“Your summer=SNS上のみんなの夏”という設定は決まってなかったんです。歌詞とタイトルを照らし合わせて意味付けしていきました。峰らる:
この曲のグラフィックデザインを作る時に私がこの歌詞は何を伝えたいの?ってシンヤ君に聞いて、歌詞の意味づけをやったよね。ナギー:
これ、Frascoあるあるで、普通だったら歌を録音する前にそれを聞くはずなんですけど、歌を撮り終わって、デザインをする時に歌詞の意味を聞くんですよね(笑)。タカノ:
それが距離感のあるボーカルという1つの武器になっているんですよ。で、意味なんですけど、“僕らはいつも換気扇の下で言葉を吐いては、煙のように吸い込まれ、溶けあい、なくなり、消えてゆく”っていうのはTwitterやInstagramなどのSNSのタイムラインで投稿が流れていく感じをイメージしていて、他にも“通り過ぎる過去”とか、“赤や青、緑の光の中”というのはSNS上のキラキラした世界=Your summerが通り過ぎていく感じとリンクしてます。それと対称に“ソーシャルから離れて”夏の夜に佇んでいる=My summerというもう1つの視点があって、「それぞれの夏」を描いているんです。ー歌詞全体を見た時、“ログイン”と“ログアウト”というワードが印象的だったのですが、これも最初から書かれていたんですか?
タカノ:
そうですね、自分の中で無意識に歌詞の意図は整っているんでしょうね。その意図を探す作業を後からやるイメージだと思います。ー想像できないです…。これで曲の土台が完成して、そこに実際に歌を入れたのが峰さん。
峰らる:
はい。さっきも言ってましたけど、k-overさんが作ってくれたのがすごい抑揚がついてるメロディーで、いつものFrascoのフラットな感じとは違ったので、抑揚ある歌とフラットな歌の2つを録音して、LINEのアンケート機能を使って多数決をとったんですが、結局フラットな歌の方が1票多くて、そっちが採用されました。今回の製作ではLINEの色々な機能使ったよね。タカノ:
投票のタイトルが「峰の節回し」だったなぁ(笑)。投票、グループ通話、スケジュール調整とかを駆使しましたね。ーそして最後のミックスマスタリングはナギーさんですね。
ナギー:
コラボなんでCity Your CityらしさとFrascoらしさをどう活かすかっていうことを考えて制作しました。僕はどちらかというと最大公約数をとりたくないタイプなんですよ。いつも僕が良いと思ったものを出して他の意見を聞きたいんですけど、今回はCity Your Cityらしさは出したかったので80年代を意識してミックスしましたね。タカノ:
TPかなり感動してたもんね。TP:
めっちゃ良かった、凄く良かった(笑)。リバーブとディレイの感じが最高でした。ナギー:
曲自体はCity Your Cityっぽいメロディアスな感じなのに、ボーカルがフラットだからサビが全然盛り上がらないと思って、そこは何パターンか作って試行錯誤しました。最終的にk-overさんのコーラス、サビだけ入ってるんですよ。k-over:
知らなかった、ありがとうございます。ー文字通り、5人でそれぞれの得意分野を持ち寄って制作された楽曲なんですね。
ナギー:
わりと今って、アーティスト同士が共同で楽曲制作するのが盛んになってきているので、だんだん自然になってくるかもしれないですよね。タカノ:
面白かったよね、すごく。曲以外のところでもジャケットにかほこ。ちゃんに協力してもらったり、彼女のようなインフルエンサーと一緒にできたのも良かったよね。それぞれが分業して制作した楽曲ですけど、アイデアに関してはそこにいる全員で案を出し合えました。ーチームとして効率が良いですね。話にも出てきましたが、ジャケットのモデルをインスタグラマーのかほこ。さんにお願いしたのも皆さんで決めたんですか?
タカノ:
ジャケットに関しては、City Your Cityはジャケットに写真を使うことが多くて、Frascoはグラフィックが多いから、今回は峰さんが作ったグラフィックを使って写真を撮るという案が出たんです。LINEで話し合っていたのでその時にイメージを峰さんがイラストで書いてくれて。で、TPがこういう感じでどうですかと言って書いたイラストがこれで(左)
一同:ハハハハハハ!!
ナギー:
これ最高(笑)。タカノ:
それってつまりこういうこと?って峰さんがイラスト(右)を書き直してっていうこともありましたね(笑)。TP:
結局、作ったグラフィックをTシャツにして誰かに着てもらって、その写真を撮ることになったんです。誰に着てもらおうか考えてて、元々City Your CityのことをTwitterで呟いてくれてて、一度お会いしたことがあったかほこ。さんが浮かんできたので提案したんです。オファーしたら快く受けてくれました。楽曲の内容的にも合いましたし、良かったです。ーこのデザインは全部峰さんが?
峰らる:
そうです。シンヤ君と歌詞の意味を整理しながら、「My summer=現実世界の自分の夏とYour summer=SNS上のみんなの夏を象徴するようなもの」というモチーフを考えた時に、My summerはキャッチーで自分の夏楽しんでるよ、みたいな感じでクリームソーダ。Your summer はスマホになりました。タカノ:
そう考えると結構シニカルだよね。峰らる:
捉え方によっては自分の夏が楽しくって、相手の夏を鼻で笑ってるみたいな感じだねって言われることもあるんですけど、私はそんな風には思ってなくて、“それぞれ”という感じのイメージなんです。今回MVも制作したのですが、このデザインを動かして動画にしているんです。途中でクリームソーダが飲まれる瞬間があったり、ちょっとした細かい動きも見てもらいたいですね。MVの中の出てくる画像はジャケットの撮影に行った時に撮ってもらったオフショットを入れていて、そう言った見所もあります。
タカノ:
撮影はカメラマンのカズシ(※)だけでなくyorocineの米ちゃんも協力できてくれて、みんなで集まって、渋谷、原宿、表参道あたりで撮ったんだけど。あの日すごい雰囲気も良くて、そのあと飲みに行ってカラオケに行って結局朝まで一緒に居たんです。それがまさに僕のMy summerを象徴するような出来事でしたね、僕の中ではその時に平成最後の夏を実感しました。ナギー:
平成ってまさにSNSとかネットの時代だと思うんですよ、そんな平成の最後の夏にぴったりな内容になりましたよね。TAG;
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