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文: 黒田 隆太朗 写:遥南 碧
幾何学的だが情熱的、無機質であり有機的、クラブミュージックとバンドサウンドの融合、R N S Tの音楽にはいくつもの二面性が存在する。幼馴染み3人、陽(Vo&Prog)、宇宙(G)、Sanson(B)からなるバンドであり、彼らは6月にアルバム『-』をドロップしている。自身らの音楽性を拡張した新作だ。
本作を語る上では、まず何をおいてもSalvaged Tapesというレーベルの解説が不可欠である。Black Boboiで活躍しているermhoiも以前リリースしていたレーベルで、昨年からは年間テーマを設定し、それに沿った作品作りをアーティストと共に行う企画を行っている。2年目となる本年は、「Juvenile(少年性)」をテーマに2組のアーティストが作品を発表。そのひとつがR N S Tによる『-』である。かつては多くのレーベルがジャンルをある程度統一することでカラーを打ち出してきたが、ジャンルの意味が融解し、シーンの流れが目まぐるしく変わる今、新たなロールモデルを打ち出そうとしたのかもしれない。Salvaged Tapesは1年毎に流動的に音楽の楽しみ方をプレゼンテーションしているように思う。
外部からの縛りを設けられることによって、これまでのどの作品とも違う新作を作れたというR N S T。そうした彼らの新たな魅力を多角的な視野で捉えるため、かねてから親交があった河合里美(広告音楽プロデューサー)氏を招き対談を敢行した。それぞれ異なる分野で活躍する4人の会話を楽しんでほしい。
ーまずは皆さんのバックグラウンドから聞かせてください。R N S Tのメンバー3人の、フェイバリットの音楽は何ですか?
Sanson:
自分はパンクロックとメタルですかね。宇宙:
僕はコーネリアスです。ーコーネリアスは、このバンドの今の音楽性に通ずるものですね。
宇宙:
ギターだけでなく、彼が出すコンテンポラリーな音像には凄く影響を受けました。陽:
僕は特にこれというものはなく、このバンドが結成した時はアンビエントやノイズ、コンテンポラリー・ミュージックなどの音楽を聴いていました。当初は我々もそういった活動をしていて、そこからは自分達の音楽を作ることに専念していきました。※R N S Tが選曲した影響を受けた楽曲プレイリスト
河合里美:
3年くらい前に初めてライヴを観たんですけど、その時はミニマル・アンビエントを生音でやっているみたいな感じでしたよね?宇宙:
そうですね。最初はリズムは出ていなかったです。ー音楽性が変わっていったのは何故ですか?
陽:
それは本当に単純な話で、リズムマシーンを買ったんです。練習で使ってみたら面白くて、そこから自然と自分が作る音楽にもリズムが入っていきました。ーなるほど。一方河合さんのご職業についても伺えますか。
河合里美:
テレビやWEBに出ている広告やイベント映像の音楽を作っています。立場としては制作進行なので、アーティストさんや作曲家さん達に発注してディレクションしながら一緒に作っていく感じです。世の中で流れているCMは、私のような立場の人が付いて作られていることが多いです。ーR N S Tとはどういった仕事で関わったんですか?
陽:
「RETHINKING TOBACCO」っていうwebの動画がありまして、今年の頭に河合さんからの依頼でR N S Tが楽曲制作をさせていただきました。河合里美:
丸1日一緒に音作りしましたね、朝から晩まで(笑)。Sanson:
雪降ってましたよね。河合里美:
そうそう! 雪降ってた。ー(笑)。一緒に制作した楽曲は『-』の中には入っていないんですよね?
陽:
そうですね。でも、「Bloom」は近いのかな。河合里美:
それめっちゃ思いました(笑)。宇宙:
たぶん同じコードを使っています。時期的にも被ってたよね?陽:
そう。だからそこは微妙にクロスしている。ー広告音楽を作った時期と新作の制作が重なっているということは、どちらも外部からテーマを設けられた制作なので、今年の頭くらいはがんじがらめになっていたとも言えますか?
Sanson:
はい(笑)。頭おかしくなるかと思いました。宇宙:
陽くんはインフルエンザになったり、5kg痩せたりしましたね(笑)。でも、外から縛られた方が自分たちだけではできないものができるんですよね。ー河合さんはR N S Tにどういう企画を依頼したんですか?
河合里美:
その時は<SXSW(South by Southwest)>に出展するプロジェクトの依頼でした。「RETHINKING TOBACCO」はタバコが食糧危機を救う可能性を秘めていることを伝えるもので、バイオテクノロジーを利用してタバコに別の植物の接木をしても植物が成り立つことを発見したプロジェクトです。将来環境が破壊されて植物が減ってしまったとしても、その技術があれば食料不足に陥らないという内容でした。先進的な技術でもあるけれど、扱っているものは有機的なものですし、R N S Tさんはエレクトロっぽいこともされている反面バンドでの生演奏もされているので。両方の側面があるという意味でうってつけだと思ってお願いしました。ー1日制作を共にしたと言っていましたが、そういった広告の映像用の楽曲を作る時には、ある程度細かいオーダーをしていくものなんですか?
河合里美:
そうですね。監督からサンプルの音楽が上がっていました。それはFennesz(フェネス)のアンビエントで途中からビートが入ってくるような曲で、それに近いようなものをお願いしました。あと、構成も決まっていましたね。宇宙:
結構具体的でしたよね?河合里美:
前半が「退廃的」で、真ん中が「研究室」で、後半が「希望」。陽:
「希望」でマイナー調に行くわけにもいかないから、そうすると自ずと道順が決まっていくんですよね。ー最初と最後はなんとなくイメージが沸くんですけど、「研究室」っていうのはどういう音を求めてのテーマなんですか。
河合里美:
研究室っていうのは無機質なビートです。普通のビートだけだったら尺が長いし飽きがきちゃうので、そのビートの中に変則的なものを取り入れてもらったり、1つひとつ音を変えてもらったりして、ちょっと違和感のあるビートが連続しているようなものになりました。ー広告音楽プロデューサーという立場から見て、R N S Tはどこに他のバンドとの違いがあると思いますか。
河合里美:
まず対応力が高いと思います。引き出しも多いですし、ニーズに答えようと頑張ってくれます。宇宙:
頑張ってくれます(笑)。ー非常に大人だと。
一同:(笑)。
河合里美:
音選びから一緒に作ってくれる人達ってそう多くはないので、段階を踏みながらきちんと共有して構成していく姿勢は凄いなと思います。もちろん技術的にも優れていて、特に面白かったのが、今回音作りしていく中でずっと「リモコン」っていう言葉を使っていて。何のことだろうと思ったら、Sansonさんがテレビのリモコンを出してきてベースにピピピって当て、そこで出た音を録音しているんですよ。ーそんな技があるんですか?
Sanson:
赤外線で音を拾うんです。それを歪ませてフィルターをかけたりしていきます。河合里美:
普段は見ない技術が沢山ありましたね。POPULAR
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