カルトボーイ達に捧ぐ。Momが描くSF物語『21st Century Cultboi Ride a Sk8board』

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文: 黒田 隆太朗  写:井崎竜太朗 

架空のSF物語を綴った3rdアルバム、『21st Century Cultboi Ride a Sk8board』をリリースするMom。新作に張り巡らされた複数の視点を紐解く。

本作で歌われる「話がしたい」という欲求は、「考えてみよう」という提案に他ならない。私たちの生活について、社会について、そしてもちろん、愛すべき音楽について。幾重にも張り巡らされた情報(=音と言葉)で描かれる、架空のSF物語『21st Century Cultboi Ride a Sk8board』。これは音楽が洪水のように消費されていく時代に抗し、「聴く」という主体的な行為を取り戻す誠実な歌、そしてMomという作家による批評である。

藤子・F・不二雄の諸作や筒井康隆の『笑うな』からインスピレーションを得たという本作は、不吉でありながら笑いがちりばめた、諧謔的な作品である。言葉に誘われるように歪な響きを持った音像も、本作のムードには欠かせない要素だろう。藤子・F・不二雄が「SF」を「サイエンス・フィクション」ではなく、「SUKOSHI FUSHIGI」と訳していたことを思い出す。本作で聴けるのはそんな少し不思議なサウンド・コラージュである。

本作の過激さについて、Mom本人は「武装」と説明している。それはつまり、守るためのものであり、戦うためのものだろう。キーワードは「人間らしく」…彼が何と向き合っているのか垣間見える、そんなインタビューになった。

みんなが脳みそ通さずに惰性で動いている

ー架空のSFを描いた作品と言いつつも、作り手の怒りや悲観を感じるアルバムでもある思います。

はい、おっしゃる通りだと思います(笑)。今までと比べて構造としては複雑で、音楽の中に沢山のレイヤーがありますね。自分の意志やエモーションみたいなものも内在しているし、そこから想像力を膨らませてストーリーを作れたらいいなって思い作りました。

ー物語のある音楽を目指したのは何故ですか。

藤子・F・不二雄さんのSF短編だったり、それとフィーリングの近いところで、筒井康隆さんの『笑うな』というショート・ショートを読んだりしていて。そういうユーモラスでちょっと皮肉が効いている作風で、なおかつ現代を生きている中で感じる、どこか煮詰まっている気分を音楽で表現したいなっていう、そういう気持ちがありました。

ーSFってたとえば100年後だとか、遥か先の未来を描く人が多いと思うんですけど、『21st Century Cultboi Ride a Sk8board』の時代設定は「2040」になっていますね。

絶対生きていると思います(笑)。

ー比較的すぐ先の未来を描いた作品になっているのは、どういう意図があったからですか。

リアリティのあるものを作りたいと思ったんですよね。たとえば今の社会に蔓延してるものがさらに助長されていった時に、どうなってしまうんだろうっていう不安は当然あって。今感じているリアリティを作品に落とし込みたかった。

ーなのでSFと言いつつ、時代のドキュメンタリーにもなっているわけで、それはMomというアーティストの作家性なんでしょうか。

でも、SFって基本そういうものだという気もするので、そういう意味では結構純粋にSFを作ろうとしたのかな。それに今の社会情勢とか社会問題も、自分の身の回りの事に置き換えて考えてみたら辛いことだって実感しますよね。だから変えたいって思うわけで、そういう意味ではパーソナルなアルバムでもあるとは思います。

ー1曲目の「胎内回帰」で<話がしたい>と歌っていますし、3曲目の「食卓」というタイトルも、親しい人が集まる場所だと思います。“他者との対話”が、本作の根底に漂うテーマのように感じました。

そうですね。「食卓」は“1回真っさらにして喋ってみようよ”っていう曲かな。今って、対話が見えなくなるなって思います。

ーというのは?

みんなが脳みそ通さずに惰性で動いているっていうイメージがあるんですよね。何かに依存して生きてるうちに型にはまっていって、気づかない間に内在化されてしまっているんじゃないかという危惧があります。それは自分にも言えることなんですけど、自分の意志で動いているようで、実はその人がハマっている型があるような気がしていて。そうなっていく空気が嫌なので、疑って、省みることをしなきゃいけないなって思って書いています。

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黒田 隆太朗

平成元年生まれ、千葉県出身。ライター/編集。MUSICA編集部→DIGLE編集部。

PHOTOGRAPHER

井崎竜太朗

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シンガーソングライター/トラックメイカー。

現行の海外ヒップホップシーンとの同時代性を強く感じさせるサウンドコラージュ・リズムアプローチを取り入れつつも、日本人の琴線に触れるメロディラインを重ねたトラック、遊び心のあるワードセンスが散りばめられた内省的で時にオフェンシブなリリックに、オリジナリティが光る。音源制作のみならず、アートワークやMusic Videoの監修もこなし、隅々にまで感度の高さを覗かせる。

2018年初頭よりMomとしての活動を本格化。同年11月、初の全国流通盤『PLAYGROUND』をリリース。Apple Musicが選ぶNEW ARTISTにも選出され、渋谷O-nestで開催した初の自主企画は完売。

2019年5月、1stよりわずか半年のハイスピードで2nd ALBUM『Detox』を発売、タワレコメンに選出。翌月、chelmicoを招き渋谷WWWで開催したリリースパーティも完売させる。
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