安藤裕子が歌う恋の歌。4年半ぶりのアルバム『Barometz』に込めた小さなドラマ

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文: 黒田 隆太朗  写:木村篤史 

安藤裕子が4年半ぶりのオリジナルアルバム『Barometz』をリリース。トオミヨウ、Shigekuniをプロデューサーに迎え、「恋の物語」を描いた真意とは。本作完成までの道のりと、そこに込めた思いに迫る。

安藤裕子の声は特別だ。彼女が歌えばそこにドラマが生まれる。『頂き物』以来、4年半ぶりのオリジナルアルバム『Barometz』がリリースされた。12曲の恋の話をしたためた、素晴らしいアルバムである。

ざっと振り返っておこう。安藤裕子は『頂き物』を発表した後、前レーベルから独立。ライブ活動は続けつつ、創作に関してはしばしのお休みの期間に入ることとなった。彼女はその頃から、代表曲を組み込まない新曲ばかりのセットリストでステージに立つようになる。それまでの殻を破るような「新しい自分の歌」を探していたのだろう。彼女のそうした姿勢には、鬼気迫るものがあったように思う。言ってしまえば本作は、そんな4年半の中で掴んだ確信が音楽になったものである。

さて、コロナ禍によっていくつもの問題が噴出し、多くのことが変わろうとしている。2020年がこんな1年になるとは、誰も予想していなかっただろう。だが、未曽有の世界だからこそ「夢は置いておきたかった」と彼女は語っている。とびきり儚く、ほろ苦いのに愛くるしい、そんな恋模様が描かれたアルバムについてじっくり話を聞いた。

ようやく大人として立てた

ー4年半ぶりのアルバム『Barometz』、素晴らしい作品です。ご自身にとってはどんな作品になりましたか。

ようやく自分らしく立てたイメージがあります。よくよく考えると私は20歳の頃から曲作りをしているので…長っ(笑)。

ー(笑)。

人がひとり、大人になるくらいの時間が経ってるんですね。

ーようやく自分らしく立てた、というのは?

昔は自分がどういうものを作りたいか、人に伝えるのが難しかったんですよね。若い頃はとても言葉が下手で、知識もなかったからよく泣き散らし、泣いて泣いて泣いて「ひえーっ!」ってなって(周囲と)ぶつかることもあったんです。でも、デビューが決まってからは「人と仲良く暮らしたい」って気持ちもあって、それからはディレクターとアレンジャーの3人で、安藤裕子という音楽を作る作業を長くしていくようになるんですね。

ーそのおふたりの存在が、安藤裕子という音楽には不可欠だったと。

もちろん私が詞曲を作るし、世界観に関しては私が旗振りしてくんだけど。彼らのほうが知識があるし、世代も離れていたから、アドバイスをもらう部分は常にあったんですね。ただ、4年前に一度お休みして、そこから再び自分が立とうと思った時、今度は教えてくれる先輩が周りにいなかったし、私も長年やってきたことでいつの間にかに蓄えられた知識があったので、今回は自分が大人として立って作った作品なんです。作曲の半分ほどはプロデューサーのふたりにお任せしてますけど、今までよりも安藤裕子という個人が色濃く出た作品になった思います。ようやく私が主役として音楽を作った実感がありますね。

ー一昨年には『ITALAN』というセルフプロデュースの作品も発表されています。あの作品を経たからこそ、今作が生まれたところもあるんでしょうか。

そうですね。『ITALAN』は自分の欲求に走るというか、私が何をやりたいのか、音楽って何が楽しいんだろうかってことを思い出すための作業でした。なので周りの人には理解されないだろうと思いながらやっていた部分もあったんですけど…トオミヨウ君とShigekuni君がそういう楽曲を凄く面白がってくれたんですよね。

ー自由に創作できたところがあったと。

初期衝動を思い出す時間でした。だから私にとって、凄く糧になった作品ですね。安藤裕子はずっとポップスというフィールドでやってきたわけですけど、その音楽を楽しんでくださっているお客さんにも喜んでもらいつつ、自分らしく自由に振舞える音作りをしようという気持ちは今回の作品に繋がっているかなと思います。

ーなるほど。

『ITALAN』を出した後に“ITALANチビバンド”というものを作って、これまたアヴァンギャルドなライブをしていたんですよ。それをやり終えてShigekuni君と作り出したのが「箱庭」とか「一日の終わりに」で、トオミ君も混ぜてアイドルが主催しているライブに出させて頂いたんです。それがこのアルバムのスタートとして凄く楽しいライブだったんです。

ー安藤さんがアイドルとライブ?

2018年の後半にアコースティックライブをやっていて、そこではいわゆる旧布陣というか、いわば王道の安藤裕子に新曲を少し混ぜてもらうようにやっていたんです。だけどそれが難しかったんですよ。新しい自分を探さなきゃって思いが混ざってるから、ワクワクしていたというよりは、どうあるべきかを考えながらライブをしていたところが強かったんです。でも、それをやり終えた直後の12月ぐらいに、下北沢でアイドルが主催しているライブで3曲だけ歌わせてもらう機会があって。そのライブが凄く楽しかった。アイドルファンの方々も、絶対私の事は知りもしないんだけど、めちゃくちゃ優しくて。これが音楽の楽しさだよなっていうことを知るスイッチになったんですね。

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この記事を作った人

WRITER

黒田 隆太朗

平成元年生まれ、千葉県出身。ライター/編集。MUSICA編集部→DIGLE編集部。

PHOTOGRAPHER

木村篤史

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1977年生まれ。シンガーソングライター。
2003年ミニアルバム「サリー」でデビュー。
2005年、月桂冠のTVCMに「のうぜんかつら(リプライズ)」が起用され、大きな話題となる。
類い稀なソングライティング能力を持ち、独特の感性で選ばれた言葉たちを、
囁くように、叫ぶように、熱量の高い歌にのせる姿は聴き手の心を強く揺さぶり、
オーディエンスに感情の渦を巻き起こす。
物語に対する的確な心情描写が高く評価され、多くの映画、ドラマの主題歌も手がけている。
ライブ・ステージの評価も高く、バンドセットとアコースティックセットの2形態で、全国を細かく廻っている。
CDジャケット、グッズのデザインや、メイク、スタイリングまでを全て自身でこなし、
時にはミュージックビデオの監督まで手がける多彩さも注目を集め、
2014年には、大泉洋主演 映画「ぶどうのなみだ」でヒロイン役に抜擢され、
デビュー後初めての本格的演技にもチャレンジした。

2018年にデビュー15周年を迎え、初のセルフプロデュースとなるアルバム「ITALAN」を発売。
2019年6月には、15周年を締めくくる全国4箇所のZeppツアーを開催。
6月12日には新曲「恋しい」を配信リリース。
7月には、BSテレ東土曜ドラマ9「W県警の悲劇」の主題歌に新曲「鑑」が決定。
7月27日に配信シングルとしてリリースする。

2020年8月26日に待望となるアルバム「Barometz」をリリースする。
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