バンドであることの喜びが弾む。The Whoops新体制、初の新曲「ハニーとマスタード」

Review
ポニーキャニオンとDIGLE MAGAZINEが新世代アーティストを発掘・サポートするプロジェクト『early Reflection』より、今おすすめのアーティストをピックアップ!第13回目は、The Whoopsをご紹介。

ラッパーは身体ひとつでできるし、トラックメイカーは楽器では作れない音楽を鳴らせる。けれど、やっぱりバンド最高!と思えるバンドがThe Whoops(ザ・フープス)だ。既に活動歴10年選手になろうかという彼ら。インディポップ/ギターロックの旨味を閉じ込めたメロディとアンサンブル。そしてフロントマン・ミヤタ(Gt,Vo)の書く日本語詞が醸し出す、青春の苦味や甘酸っぱさ、ある日見た風景や心象をあくまでも彼個人の感覚で書いているにも関わらず、音と相まってリスナーに化学反応を起こす冴えた筆致はシンプルなバンドミュージックの最高峰だ。加えて、2022年5月に活動再開と同時に脱退してしまった前ベーシストの森確実の芸人顔負けのキャラクターというか、それも許容する、いわば生きていることのあらゆる側面がバンドに還元される、The Whoopsの懐の深い在り方を愛してやまない人も多いことだろう。

新体制の4人編成でタイトな音像を実現

時間を巻き戻すと、シンプルなバンドサウンドだけでなく、ピアノやシンセサウンドも取り入れた「踊れない僕ら」が新鮮だった1stフルアルバム『Time Machine』を2019年6月にリリース。精力的に東名阪ツアーや遠征を実施していた渦中にコロナ禍に突入。ライブ活動の低減により制作中心の活動にシフトした結果が、宅録による音源を収録したミニアルバム『TAPES and LOVE』と『TAPES or DIE』に結実。当初、ZINEとしてリリースされた収録曲は現在、ストリーミングサービスでも聴くことができる。演奏に拘らず、エディットされた音源の中にも溢れるミヤタのメロディの良さ、ベッドルームミュージックだからこその距離の近さも、また新鮮だった。その後、ミヤタの第一子誕生により、2021年に活動を休止。そして2022年5月にようやく活動再開となった矢先に森が勇退。再開後の初ライブにミヤタの実弟・ジュニアがギターで参加し、以降4ピースバンドへ転向し、同年11月24日には新ベーシスト・アサノを加え新体制が固まった。

新生The Whoopsの第一弾楽曲「ハニーとマスタード」はバンドという有機的なアンサンブルを目一杯楽しんでいるようなフレッシュなポップ・ロック。フィードバックノイズのイントロからして、その楽しさが横溢おういつしている。ザクザク刻まれるリズムギターと歌メロの裏を行くフレージングはギターが2本になったことを明快に反映しているが、音数は少なく、ギミックもない。ギター1本の頃のリバーヴィーなニュアンスに比べるとグッとタイトな音像だ。しかも曲の尺も短い。ミヤタが手掛ける歌詞は《嘘を絵に描いたロックンロール/僕たちがでっちあげた嘘を塗り替える》と、1Aではロックンロールという妄想を自分たちが描き替える気概を感じるが、2Aでは《嘘を塗り替えたパンクロック/夜ふかして書き上げた嘘を繰り返す》と、人称が誰かは分からないが、パンクも言わばロックの中の妄想だと捉えているように感じる。もしくは“嘘”というのは最高の夢であり可能性だとも捉えられる。青春の勘違いを俯瞰しているようでもあり、その勘違いを愛し抱えたまま歌い続けている印象もある。因みにタイトルもユニークだが、ハニーは英語で“満足な期間”の、マスタードはフランス語で“むかっ腹を立てる”ことの比喩に使うそうで、これは私の妄想だが、意欲満々なときと失望を繰り返すのはまさに人生そのものじゃないかと思うのだ。この妄想が当たりじゃなくても、The Whoopsは日常に発見をもたらしてくれるバンドであることは間違いない。既にライブ活動もギアが入った新体制。我々のライフソングの続きをもっと聴きたい。

RELEASE INFORMATION

NEW SINGLE「ハニーとマスタード」

2023年2月1日(水)
THISTIME

▼配信リンク
https://lnk.to/honey_and_mustard

early Reflection

early Reflectionは、ポニーキャニオンが提供するPR型配信サービス。全世界に楽曲を配信するとともに、ストリーミングサービスのプレイリストへのサブミットや、ラジオ局への音源送付、WEBメディアへのニュースリリースなどのプロモーションもサポート。また、希望するアーティストには著作権の登録や管理も行います。
マンスリーピックアップに選出されたアーティストには、DIGLE MAGAZINEでの動画インタビューなど独自のプロモーションも実施しています。

▼Official site
https://earlyreflection.com

SNSで記事をシェア

SNSフォローで
最新カルチャー情報をゲット!

The Whoops(ザ・フープス)

埼玉県北浦和にて結成。日常、昔見ていた景色、失恋、青春を濃縮還元したかのような4ピースロック・バンド。メンバーは、ミヤタ(Gt,Vo)、スナガ(Dr)、ジュニア(Gt)、アサノ(Ba)。

2021年の活動休止ののち2022年5月に活動を再開するが、「ベースがおもしろくないということに気づいてしまった」ために森確実が脱退。同時期にミヤタの実弟・ジュニアがサポートギタリストとしてライブに参加する。2022年11月24日、ジュニアと新ベーシストのアサノが加入し4人編成となり、2023年2月に「ハニーとマスタード」を発表。

2023年2月26日(日)には下北沢BASEMENT BARにて、アフターアワーズをゲストに迎えたツーマン企画<The Whoops x THISTIME 20th ANNIVERSARY "THE PEACE" Vol.2>を開催予定。
閉じる