文: 石角友香 編:Miku Jimbo
“聴く映画“をテーマにしているだけあって、1曲ごとに若い男女がそこにいる情景が見えるような歌詞に引き込まれる、男女二人組ユニットSHIROIRO。作詞作曲を手掛ける「満月が好きです。」の楽曲と、話し声の延長にあるような“近さ“を感じる「シオン」の声で立体化する世界観は最小編成ならではの純度の高さを担保している。活動歴は長くないようだが、2021年に配信された6曲入りEP「デザート」では、自分を卑下する気持ちや、今いる状況から抜け出したい気持ちがヒリヒリするほど伝わってくる。そんなリアルな心情を生音のギターと打ち込みのジャズテイストや、チルアウトヒップホップ系のトラックに乗せている辺りはまさに近年のトレンドと共振する。
2021年にはアルバム『Nostalgia Bias』もリリースし、ピアノリフが効果的に取り入れられたトラックが増えたり、スィングするジャズテイスト、骨太なバンドサウンド、エレクトロなSEや環境音なども取り入れたりと、音楽的なレンジを拡大。1曲ごとの場面の情報量がアレンジ面でもグッと濃くなった。さらに2022年リリースのアルバム『顛沫』は通して聴くと、刹那的な関係にある男女双方の視点からの曲が時系列に並んでいるようで、その関係やおのおのの気持ちがつぶさに描かれていることで、長編映画のような印象を残す。ユニークなのは相手に向けて思いを吐き出すだけでなく、一人でいる時の孤独と自由なども描かれていることでリアリティが増幅している。曲調もさらに広がり、生のグルーヴ感も加わった。2つの指輪のアートワークも内容にリンクしているようだ。まさに耳で聴く映画の一つの完成形が『顛沫』だったのだろう。見て分かるように“顛末”がベースにある当て字なのだろうが、沫のような恋の後日譚というニュアンスに潜む哀しさとドライさが同居したタイトルだと思う。
物語を語る手付きの鋭さに磨きをかけて、SHIROIROが放つ新曲は方言のタイトルに意外性のある「飽きんといて」だ。雨音のイントロからすぐ歌に入る部分でシオンのボーカルの変化に気づく。息の要素の多いウィスパー寄りのあやうい声が耳に残る。コードカッティングでグルーヴを作るオケの完成度も増して、ポップスとして広く聴かれそうな印象だ。ほぼ歌始まりかつサビ始まりでもあるメロディラインがR&B調のフロウに乗り、切な苦しいシオンの声で「飽きんといて」という方言が飛び込んでくる瞬間の驚き。2番では《起きんといて》になり、方言の箇所だけは思いから浮き出した現実の呼びかけのようにも聴こえる。このいい違和感は音としても効果的で、“ん”が入ることで生まれるフックがこの曲をさらに特徴的なものにしている。雨音から始まったことでその日の天気や湿度に誘導しているのもうまい。3番での転調は盛り上がりを作るというより、歌詞にあるように《大人になって/振り返りたいね》と、曖昧な関係が続かないことを予感し、既に思い出になりかけている状態を演出しているようでもある。構成やアレンジで“聴く映画”の解像度を上げた会心の1曲と言えるだろう。
先のない恋や曖昧な関係を歌にするアーティストは枚挙に暇がないが、SHIROIROの物語を音楽にする手法は少し距離を置いて鑑賞できる。押し付けがましさはない代わりに、情景がリンクする瞬間の怖さや感情の動きは独特の肌触りを残すものでもある。単純に音やリズムの中毒性も高い。入り口が何であっても、踏み入れると癖になる音楽なのは間違いない。
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