2020年代のオルタナティヴ/インディポップ・バンドHomepatiesの2ndEP「AB」に見る前向きな自問

Review
ポニーキャニオンとDIGLE MAGAZINEが新世代アーティストを発掘・サポートするプロジェクト『early Reflection』より、今おすすめのアーティストをピックアップ!第21回目は、Homepartiesをご紹介。

Pixiesピクシーズ)やNirvanaニルヴァーナ)に代表される90年代オルタナと2010年代以降のインディポップが邂逅し、現在の日本に着地した感じのHomepatiesの音楽。そもそもはギター&ボーカルのヒラタが一人で始めた音楽グループで、当初の楽曲には初期スーパーカーのようなイノセントで無敵なイメージや、サニーデイ・サービスのフォーキーさ、時にYogee New Wavesのメロウネスを感じる楽曲世界を展開していた。その後、リードギターにツジオカ、ベースにタニガミアオイが加入したことで、生身のバンドサウンドが構築された印象だ。インタビューによるとヒラタがコロナ禍突入以降の日常を“家で一人でホームパーティーをしているよう”と感じ、誰もがそうである状態をポジティヴに捉えたのが複数形のHomepatiesということらしい。

3人で確立した“Homepatiesらしい”オルタナサウンド

2021年の1stEP「happy」以来となるニューEP「AB」は昨年から配信リリースしてきた「Friday Night」「Lovely」「Waterfall」「Outline」という異なるニュアンスを持つ4曲に新曲2曲を加えた全6曲で構成されている。1曲目のリードトラック「I know that」はイントロから堂々たるオルタナティヴロックで、現在のメンバーに固定してから“何々っぽい”という形容が薄れてきた、その強度が示される。他者との繋がりや満たされることに対する疑念を認める清々しさのようなものすら感じるオープナーだ。また、サビ前に鋭く切り込んでくるツジオカのソロも素晴らしい。ヒラタのバックボーンにはNUMBER GIRLもあるようだが、ツインギターの意義や潔癖なまでに旨味のあるギターサウンドを追求する姿勢はそんな背景も影響しているのかもしれない。さらに先行配信された「Outline」ではタニガミの重いベースがまさにオルタナだし、歌メロとユニゾンするラインも然り。愛されて守られることが当たり前の年齢を過ぎて何を思うか。そんな内容だ。ギターサウンドの旨味で言えば3曲目の「Waterfall」もまさにそうで、音選びや一つひとつのストロークをしっかり刻むこと、ひいては一つひとつのプレイに意味を込めたアレンジが刺さる。歌詞は滝壺にダイブするか否か迷っている様子なのだが、それは現状を飛び越えていくことの比喩なのだろう。

4曲目の「Lovely」も既発曲で、この曲で一気にフォーキーでメロウなバンドの側面が現れる。タイトル通りラブリーな曲調だが、主人公は自分が《甘いところだけあつめて》いることに自覚的だ。小さなプライドが邪魔して自分の殻を破れないでいるのは「Waterfall」の主人公と通じるところもある。8ビートや16ビートだけじゃないアンサンブルとリズムにユニークな部分が窺える「Friday Night」。週末、仲間と飲んでいるのか一人なのかはわからないが、おそらく自分の本音が見えたのだろう。素面でいるときは蓋をしている理想や夢、もしくは窮屈に感じる現実。煽るわけでもないし、パーティーチューンでもない。だからこそ、静かに内側で燃え切らない小さな炎を抱えている人には共振する部分があるんじゃないだろうか。人に同意を求めているようで、実はどこまでも自問している様子はラストの「Ne」も同じだ。夏に聴きたい8ビート、というのも抽象的だが、青春の残滓を体内に残したまま、少しずつ大人になって、要領も良くなったとしても、“自分にないものは都合よく否定したいよね”と自分に確かめる。どこまでも透き通っていくようなシューゲイズサウンドに乗せて、こんなことを歌われたら、誰でもとは言わないが、オルタナティヴロックにやられた音楽好きは自分に正直にならざるを得ないだろう。パンクもネオアコもインディポップも、このどうにもならない青い感情が存在証明だった。きっと彼らもその系譜に生きてるんじゃないか? そう思わせる普遍的な何かをHomepatiesも持っている。

名古屋のシーンというとヒップホップが強いイメージがあったけれど、どうやら新しいバンドシーンも豊穣なようだ。注視していきたい。

INFORMATION

NEW EP「AB」

2023年6月7日(水)リリース
Homeparties
カセット価格:¥1,650(税込)
カセット取扱店舗:
FILE UNDER RECORDS、stiffslack(名古屋)
FLAKE RECORDS(大阪)
LIKE A FOOL RECORDS(東京)
HOLIDAY! RECORDS(ネットショップ)

収録曲
1.I know that
2.Outline
3.Waterfall
4.Lovely
5.Friday Night
6.Ne

LIVE INFORMATION

LIVING FUNERAL
Burial Etiquette / undermark 「Post Marked Stamps #1」
Homeparties「AB」W Release Party

2023年7月8日(土)at 東京・西荻窪FLAT
ADV/DOOR:¥2,000/¥2,500(+1drink)
OPEN/START:13:00/13:30

出演:undermark、Homeparties、Crows Caw Loudly、ENSA、raika、Not It? Yeah!、ILL JOE、merimeriyeah、scorch away、WEEP
FOOD:たこ焼きパーティー(食べ放題¥500)

early Reflection

early Reflectionは、ポニーキャニオンが提供するPR型配信サービス。全世界に楽曲を配信するとともに、ストリーミングサービスのプレイリストへのサブミットや、ラジオ局への音源送付、WEBメディアへのニュースリリースなどのプロモーションもサポート。また、希望するアーティストには著作権の登録や管理も行います。
マンスリーピックアップに選出されたアーティストには、DIGLE MAGAZINEでの動画インタビューなど独自のプロモーションも実施しています。

▼Official site
https://earlyreflection.com

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Homeparties(ホームパーティーズ)

名古屋を拠点に活動するバンド。メンバーは、ヒラタ(Vo,Gt)、ツジオカ(Gt,Cho)、タニガミアオイ(Ba,Cho)。2021年2月に1stシングル「Navy」をリリース。その後、2022年に現体制となる。オルタナティブロックやインディロックをルーツとし、お気に入りのプレイリストに入れて、何度も聴いてもらえるようなキャッチーな楽曲作りを目指している。
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