ベッドルームから自然へセーフプレイスを拡張したMariana in our Headsの1stアルバム

Review
ポニーキャニオンとDIGLE MAGAZINEが新世代アーティストを発掘・サポートするプロジェクト『early Reflection』より、今おすすめのアーティストをピックアップ!第23回目は、Mariana in our Headsをご紹介。

京都と大阪を拠点に活動するドリームポップバンド(現在は“スピリチュアル・ドリームポップ”と自称している)Mariana in our Heads。2014年に始動し、2017年に7インチ・シングル「Anemone / Yarn」と1st EP「Since You Get Home」を〈Sailyard〉よりリリースしている。EPはタイトルが示唆するように“社会からの逃げ場”としての部屋やベッドルームの情景を具現化した、まさに額面通りのドリームポップを体現。同時にビートや音像はインディーポップのそれでもあり、ギターサウンドやビートとシンセサウンドのバランスはいい意味でまだ素朴な手触りを残していた。2018年以降はUSの名門インディーポップ・レーベルである〈Sunday Records〉のコンピレーションに参加するなど、国内外のインディーポップ/ドリームポップ・ファンに愛されてきた。最近ではシンガポールのSobsのジャパンツアー大阪公演で共演。他のエリアの対バンがDYGLLuby Sparksらで、もちろんサウンドは違うが、心持ちのベクトルには近いものを感じる。

持ち味をブラッシュアップ。収録曲順で聴くことで見える現在のバンド像

前作EPから約6年を経てのリリースとなる待望の1stフル・アルバム『Landscapes』。アルバムに先駆けて単曲が配信リリースされてきたため、サウンドの変化はすでに感じられているかもしれないが、ぜひアルバムの曲順に聴いてほしい内容に結実している。第一印象としてはさまざまな意味で大人になったバンド像が伺える。サウンドの磨き方や深度、解像度が圧倒的に上がっているという意味でだ。

特にアルバム前半に新たなアプローチが聴けるのだが、1曲目の「Ether」で、グッと存在感を増したベースサウンドとトライバルなタムに耳がいく。丹念に重ねたシンセのレイヤーやNatsumi Yamashita(Vo,Gt)のフラットで素直なボーカルなどはこのバンドのシグネーチャーとして不変だが、曲全体のイメージはいつかどこかで感じた自然の風景だったり空気だったりする。メンバーによると今作では従来のベッドルームポップ的な現実逃避を“人の手の行き届いていない、原風景的な自然”に拡張したといい、まさにアルバム冒頭から真意を実感する。一瞬入るガットギターのような生音にハッとするドラマチックなマイナーのミッドバラード「Shadow」、ラテンパーカッションのビートも聴こえ、バレアレックなニュアンスもある「Arkham」など、ベーシックにはシンセのレイヤーがありつつ、あらゆる場所に原風景的なサウンドが散りばめられている。どこでどんな音が鳴ることによって現代に生きる私たちが細胞レベルで記憶している自然と彼女たちの音楽が共振するのか?がわかるような仕掛けも面白い。

中盤にはこれぞインディーポップな「Next Night」や、妄想の夏が鮮明に立ち上がるような「Nostalgia」、クリアな音像で“夢のような現実”と“現実のような夢”を往来させてくれる「Bloom」など、そもそものバンドの持ち味もブラッシュアップ。インディーポップとは言葉では言い尽くせない感覚の記憶再生装置なのだとつくづく思わせる。終盤の「Imitation」ではオケの中で歌が光を放つようなミックスが印象的で、実は曲ごとに歌のミックスが異なる細かい仕事を実感できる。それもバンドと付き合いの長いレーベルメイトの高木恒志(Pictured Resort)も共に成長してきた証左だろう。また、平易な英語詞を淡々と歌うYamashitaの歌の内容は聴くだけでは意味がとれないかもしれない。だが、研ぎ澄まされた平易な言葉の連なりに見る濁りのないイノセンスは、だからこそシンセのレイヤーの奥で鳴っているのがちょうどいいぐらい、本当のことを表現している。機会があればぜひ歌詞カードを読みながら聴いてほしい。心地よい揺らぎに耽溺するだけじゃない、気づきがそこにはある。

RELEASE INFORMATION

1st Full Album『Landscapes』

7月5日(水)リリース
Sailyard

early Reflection

early Reflectionは、ポニーキャニオンが提供するPR型配信サービス。全世界に楽曲を配信するとともに、ストリーミングサービスのプレイリストへのサブミットや、ラジオ局への音源送付、WEBメディアへのニュースリリースなどのプロモーションもサポート。また、希望するアーティストには著作権の登録や管理も行います。
マンスリーピックアップに選出されたアーティストには、DIGLE MAGAZINEでの動画インタビューなど独自のプロモーションも実施しています。

▼Official site
https://earlyreflection.com

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Mariana in our Heads(マリアナ・イン・アワー・ヘッズ)

京都〜大阪を拠点に活動するドリームポップバンド。2014年に始動し、2017年に7インチ・シングル『Anemone / Yarn』、1st EP『Since You Get Home』をリリース。2018年以降はUSの名門インディー・ポップ・レーベル〈Sunday Records〉のコンピレーション作品へ参加。

なお、メンバーのTakuya Morimoto(Dr)はインディー・ポップ・バンドBarbaraでも活動。Shun Kagawa(Syn, Key)は「Solitude 2:14am」名義でビート・テープを3作品発表している。
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