物語も感情も音で表す真性オルタナティブ・ギターロックバンド、aoniの1stフルアルバム

Review
ポニーキャニオンとDIGLE MAGAZINEが新世代アーティストを発掘・サポートするプロジェクト『early Reflection』より、今おすすめのアーティストをピックアップ!第25回目は、aoniをご紹介。

2023年の今、日本の若いバンドがこれほどNUMBER GIRLbloodthirsty butchersを思わせる鋼のギターサウンドを鳴らしていることにまず驚く。彼らはaoni。2016年の結成以降、下北沢のライブハウスを拠点に様々なオムニバスライブなどを精力的に行なっている4ピースだ。メンバーは山下なおと(Gt,Vo)、齋藤浩輔(Ba)、松川育人(Gt)、小林逸世(Dr)。パッと聴きは90年代から活動しているオルタナティブ・ギターロックバンドと遜色ないが、おそらくメンバーの世代からすれば周囲のバンドからは浮いている。2010年代後半に興った10代〜20代前半のグランジシーンとも趣きが違うことも興味深い。

4つの楽器の拮抗・融合で世界と向き合う快作

すでに4枚のEP、1枚のミニアルバムのほか、シングルも複数リリースしてきた彼らが結成8年目にしてついにリリースした1stフルアルバム『aonisai』。本作には先行配信された「dunk」「ALONE」といった新曲に加え、「BLUE」「DIVER」「donut」「FIELD」といった代表曲を再録して収録している。つまり自信のある楽曲を今の演奏で詰め込んだ、さらに先へ突き進むための名刺がわりのアルバムと言って良いだろう。

まず全編に渡って、ナンバガ、ブッチャーズ、もっと言えばASIAN KUNG-FU GENERATIONのギターサウンドが大好物な向きにはたまらないギターが鳴っている。これは大きい。その上で実はかなり多彩なギターロックが展開していることがアルバム1枚をまるっと聴かせるパワーたり得ている。投げやりなボーカルが妙味の「dunk」に始まり、シンプルにめちゃくちゃいいリフだなとにやけてしまう最高のエイトビーター・ナンバー「FIELD」、続いても最高峰のオルタナティブロックのギターリフが冴える「donut」ときて、そのニュアンスが続くと思いきや、パンク/ニューウェーブっぽさのある「oxygen」で意表を突かれる。バンドにとっては異彩かもしれないが、チョーキングで不安感を煽るようなギターとメロのない棒読みのようなボーカルに個人的にはアジカンと日本のオリジナルパンクの祖・FRICTIONが出会ったような深みを感じた。

インタールード的に挟まれるナイーヴなギターインスト「aonisai」も、このバンドの色をより理解させてくれる。そこから折り返し、今回再録された「BLUE」ではメロディが明快になり、全体像も爽快なギターロックへと音楽的なレンジを実感させるのだ。続く「glider」の滑空するような勢いのいい体感を経て、本作の中で最も歌メロの明快な「ALONE」へと繋ぎ、飽きさせない。終盤は夏の夜の儚い記憶と焦燥が掻き立てられるような「goodbye」のリリシズムに感銘を受け、この曲の登場人物と同一人物を想起させる「DIVER」へと繋がる印象だ。このラストの「DIVER」がいい。本作で唯一のマイナーキーのナンバーなのだが、一行目の歌詞にある《少年風を切って肌を締め付けた》という、自ら進んで孤独に突っ込んでいくような見事な表現と、ギターサウンドとフレージングがあまりに見事に一致している。もうそれだけでこのバンドを信用してしまう。歌詞の内容はイメージと体感がメインで、容易に理解できるものではないのだけれど、かと言って想像すら拒むような内容でもない。主に作詞はベースの齋藤が手掛けているようだが、彼のリリシズムと山下の媚びないボーカルがaoniの超然とした個性を際立たせているのは間違いないだろう。

10曲約33分というコンパクトなサイズながら、聴き終えた時、1本の映画を見たような、日常と地続きではあるが、旅に出たような感覚に陥る本作。何か一つのテーマやメッセージを言葉にすることなくひたすら4つの楽器が拮抗・融合するさまで世界と向き合う清々しい作品である。

INFORMATION

RELEASE INFORMATION

1st FULL ALBUM
『aonisai』
8月2日(水)リリース
aoni

収録曲
1. dunk
2. FIELD
3. donut
4. oxygen
5. aonisai
6. BLUE
7. glider
8. ALONE
9. goodbye
10. DIVER
※CD盤には「minute」を収録

LIVE INFORMATION

<aoni “aonisai” release tour>
※終了分は割愛

2023年8月27日(日)東京・新宿NINE SPICES
2023年9月2日(土)宮城・FLYING SON
2023年9月3日(日)福島・LIVE STAGE PEAK ACTION
2023年10月7日(土)福島・club SONIC iwaki
2023年10月8日(日)栃木・宇都宮 HELLO DOLLY
2023年10月22日(日)神奈川・Yokohama B.B.street
2023年11月25日(土)広島・福山MUSIC FACTORY
2023年12月9日(土)大阪・寺田町Fireloop
2023年12月17日(日)千葉LOOK
2023年12月30日(土)神奈川・横須賀かぼちゃ屋
2024年1月20日(土)石川・金沢メロメロポッチ
2024年1月28日(日)東京・吉祥寺WARP

early Reflection

early Reflectionは、ポニーキャニオンが提供するPR型配信サービス。全世界に楽曲を配信するとともに、ストリーミングサービスのプレイリストへのサブミットや、ラジオ局への音源送付、WEBメディアへのニュースリリースなどのプロモーションもサポート。また、希望するアーティストには著作権の登録や管理も行います。
マンスリーピックアップに選出されたアーティストには、DIGLE MAGAZINEでの動画インタビューなど独自のプロモーションも実施しています。

▼Official site
https://earlyreflection.com

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aoni

2016年結成、東京を中心にライブで頭角を現す4人組オルタナティブロックバンド。メンバーは、山下なおと(Naoto Yamashita/Gt,Vo)、齋藤浩輔(Kosuke Saito/Ba)、松川育人(Ikuto Matsukawa/Gt)、小林逸世(Issei Kobayashi/Dr)。ノイジーなギターと00年代の輝けるジャパニーズロックの影響が絶妙に掛け合った音楽性を展開し、下北沢で新たな震源となりつつあるオルタナティブロックシーンにおいて注目を集めている。

2023年8月から翌2024年1月にかけて、16箇所に及ぶ全国ツアー<aoni “aonisai” release tour>を開催中。
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