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文: 石角友香 編:Miku Jimbo
グローバルで認知されるJ-POPといえばアニメタイアップが真っ先に思い浮かぶ。曲の特徴として、他のエリアでは珍しい複雑な構成や転調の多さなどが挙げられるが、それらは日本独特のボカロP文化がバンドシーンやシンガーソングライターのシーンと交差してきた背景があるだろう。今回紹介するのはJ-POPのトップランカーとして活躍するアーティストへの楽曲提供やプロデュース、編曲、ライブサポートを手掛けるRyo‘LEFTY’Miyataが世界各国のアーティストとコライト・コラボレーションを通じてJ-POPソングスを創作し、12ヶ月連続で世界に発信するプロジェクト「Make J-POP with」の記念すべき第一作だ。
ここでもう少しRyo‘LEFTY’Miyataのワークスについて紹介すると、これまでの主な作曲作品はSixTONES「Curtain Call」、eill「ここで息をして」「フィナーレ。」、Superfly「Ashes」、BE:FIRST「Betrayal Game」、yama「MoonWalker」などがあり、海外のR&Bに通じるスタイリッシュな側面や、理屈抜きにカッコいいと思えるフックがふんだんに盛り込まれていることが分かる。また、編曲作品はOfficial髭男dism「Choral A」やsumika「Phoenix」、川崎鷹也「愛の歌」、ALI「SHOW TIME feat. AKLO」など、バラエティに富んでおり、マルチプレイヤーである強みを活かしたホーンや鍵盤のアレンジに光るものが窺えつつ、決して奇を衒った仕上がりになっていないのも彼の持ち味と言えそうだ。加えて、Official髭男dismやBE:FIRST、eill、Superfly、sumikaらのライブサポートとしても、マルチな活躍を見せている。
かつてはボカロPとしても活動し、2012年〜2018年には音楽ユニット“イトヲカシ”として精力的にライブ活動も行っている。この頃の経験や知見もLEFTYの作品へ大いにフィードバックがあるだろう。ヒゲダンのライブなどを見ていても、恐るべき瞬発力とミュージシャンシップで、今やバンドに欠かせない音とパーソナリティで存在感を示しているからだ。
さて、冒頭に書いた通り、今回は単曲ではなく、12ヶ月続いていくプロジェクトである。ボーカリストでもあり、詞曲を共作したのは2023年にデビュー25周年を迎えた音楽ユニット、SURFACEの椎名慶治。そしてラップを担当したBACK-ONのMC、TEEDAも作詞に参加している。ちなみにLEFTYはSURFACEの近作にもアレンジで参加しているので、今回のタッグも“なるほど”な腑に落ち感がある。
なのだが、そうした予備知識があろうとなかろうと、この「MemoReal」という曲のスタイリッシュさやキャッチーさは頭抜けている。バウンシーなシンセが作り出すモダンなエレクトロ×R&Bなトラックにパワーとスキルを兼ね備えたボーカルが滑り込み、しかもヒップホップ調のフロウも乗りこなすあたりはまさに現在のポップチューン。TEEDAのスムーズなラップも耳に心地いい。展開するストーリーは自分のせいで終わってしまった関係の苦い後悔と、楽しかった時の記憶を行き来する男の心情だ。タイトルの「MemoReal」は歌詞にも登場する《Memory vs Real》に由来するようで、おそらく記憶は美しく改竄されているという意味でもあるのだろう。しかも、単に現行の海外のポップチューンに倣うだけなら後半のドラマチックな展開や、椎名のJ-ROCKオリエンテッドなボーカルじゃなくて良いのだ。一瞬で耳を掴み、スリリングな構造にリスナーを引き込むこのスタイルこそが、「Make J-POP with」たる所以だろう。驚きに満ち、繰り返しているうちに何度も聴いている……中毒性の高い1曲だ。
INFORMATION
New Single「MemoReal(feat.椎名慶治&TEEDA)」
2023年12月20日(水)リリース
OIKOS MUSIC外部リンク
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