文: 石角友香 編:Miku Jimbo
すでに3作のアルバムをリリースしているバンドだが、2023年の3rdアルバム『Mindwash』におけるサウンドメイクの進化と洗練にハッとさせられたリスナーもいるんじゃないだろうか。大阪北摂発の3ピースバンド、Re:nameがさらにその存在感を示すであろう新作『Give Me All Of Your Life』をリリースした。海外のポップスが持つメロディやサウンドメイクと共振する曲のムードは彼らの少し先輩であるSHE’SやFIVE NEW OLDなどにも共通する印象があるが、メインソングライターである高木一成(Vo.&Ba.)は現在20代半ば。彼が影響を受けたというThe 1975にしろ5 Seconds of Summer(ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー)にしろ、意識的にRe:nameの音楽へ取り入れたというより、当時10代の柔軟な感受性がこれらを吸収。原体験的なセンスを構成したんじゃないだろうか。彼が書く日本語と英語がシームレスに響き合うリリックや、メロディを重視した日本語のあて方は、ごく自然だからだ。
前出の『Mindwash』収録の「prettyfine :)」がFM802の2023年3月度ヘビーローテーションを獲得し、関西のリスナーに広く浸透した後、<MINAMI WHEEL>や<RADIO CRAZY>への出演で、ライブパフォーマンスの評価も上がったタイミングで、この『Give Me All Of Your Life』収録曲も先行配信されてきた。2023年11月から毎月、「AM」「24/7」「sea u again」と連続リリースしてきた3曲を含む全6曲は“あなたのすべてが欲しい”という強気なタイトルを裏打ちするように、生活のあらゆる場面に寄り添う多彩なアプローチを見せている。
1曲目の「Light」は本作で唯一、ヤマケン(Dr)の作詞曲。闇も潜り抜けてきたと思しき二人の絆がプリミティヴなビートとよく似合うおおらかなオープニングだ。続く「24/7」は24時間、一週間、つまり四六時中という意味に取れるが、どうやら遠距離恋愛中の焦りというより、会えない時間が自分の本当の思いに気づかせるニュアンス。愛らしく洗練されたピアノポップのアレンジが前向きな気持ちを加速させる。続く「sea u again」は曲が進んでいくにつれて、別れの状況かと思っていたテーマが変化していく歌詞の構成にハッとさせられる。ローを支えるシンセベースや、空間を彩る上モノのシンセと高木の柔らかな声質が融合したアトモスフェリックな仕上がりだ。
一転、タイトなビートが生身の衝動を体感させるショートチューン「People」は終わってしまった関係にも受け取れるし、叶わなかった望みとも取れるが、そのせいで逃避してしまう人間の感情を歌にしている。だが、あくまでもサラッとした聴感を保ち、他の優しく柔らかな曲の中に存在することでむしろその感情が際立つような曲順もいい。生身のビートで言うと、続く「AM」も近い聴感なのだが、歌詞にアルバムタイトルのフレーズが登場し、ある種アルバムのとっかかりかつ軸になっている強さがある。ビートはスクエアで疾走感があるが、Soma(Gt)のストロークによるギターサウンドは驚くほどロングトーンで、過ぎていく時間と変わらずに続く気持ちを想起させる。もちろん、それは歌詞と同時に聴いているから感じることでもある。未知の他人だった二人が未来を想像し始める時の、どちらかと言えば不安の方に寄り添う内容がとても誠実で、同時に甘やかな愛おしさも同居しているのがRe:nameの個性だと思う。また、サビで綴られる言葉数の多い歌詞に色をつける流れるようなメロディの独特さにも耳がとらわれる。
そしてラストは全編英語詞の「Stupid Things(I’ve Done)」。爪弾かれるアコースティックギターとうっすら漂う靄のようなシンセがナチュラルな神聖さを醸すこの曲は内面に葛藤を抱えた男の歌だ。日本語では描きにくい短い小説のような描写とストレートな言葉はただ感覚的に聴いても染み入るものがあるし、意味がわかればこのバンドの成長の度合いもより理解できるだろう。日本の20代半ばのインディーズバンドというカテゴリーをいい意味で軽々飛び越えていきそうな、痛快なミニアルバムの到着である。
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