文: 石角友香 編:Miku Jimbo
若者世代が再解釈したシティポップでもあり、ボカロPが作るラップ楽曲のようでもあり、時には90年代のビッグビートやUKロックの片鱗が見えたりもするかなりオールラウンドなクリエイター、それがLUAだ。本人はシンガーソングライター・ギタリストを自称しているが、「ポップであることを恐れない」を標榜している通り、まさに2020年代らしいポップメーカーだと思う。幼少期にハワイ・ホノルルで過ごした彼は両親の影響で、Earth Wind & Fire(アース・ウインド&ファイアー)、Michael Jackson(マイケル・ジャクソン)、Prince(プリンス)、山下達郎らの音楽を自然に吸収。楽器はギターからスタートし、自身の高い声が若干コンプレックスだったようだが、ソングライティングをするようになってからは自ら歌うことを決心。その決心が他のシティポップやブラックミュージックをベースとしたバンド/アーティストと決定的に異なる個性になっていて、一度聴いたら忘れられない楽曲の強度につながっていると感じる。
2018年に5曲入りEP『ユーフォリア』でデビューし、早速、その収録曲「魔法使いの恋」が川谷絵音のラジオ番組でピックアップされたことは音楽ファンなら知る人も多いだろう。小気味いいギターカッティング、デビュー作としては驚くほど完成度の高いトラック、第一線のミックスも含めてリスナーを唸らせたわけだが、ここでもいい違和感が残るジェンダーレスで幼いボーカルが際立っていた。その後もラップ要素やボカロPが用いそうなワーディングが冴えている「スワロウテイル」、Fatboy Slim(ファットボーイ・スリム)を想起させるビッグビートに近いナンバー「Long,Long,Wrong」、Cheryl Lynn(シェリル・リン)の名曲「ガット・トゥ・ビー・リアル」のスウェイビートを再構築した「Don’t Stop The DOKKYUN!!」など、往年のダンスミュージックも現代のJ-POPのトレンド要素も驚くほど自然に共存させるセンスにワクワクさせられた。
そして今回デジタルリリースする9作目のシングル「想定外」。ボサノヴァを軽く電脳化したニュアンスのビートに、季節感が溢れるシアーなシンセと生音のアコースティックギターのカッティングを合わせる妙味が心地いい。大きな山はない淡白な構成だが、細かいシーケンスが組まれており、日曜日の夜という憂鬱の代名詞のような時間についやってしまう妄想の広がりが体感を伴う。さりげないからこそ構成力が光る。そこはポップス職人であるプロデューサーの鈴木Daichi秀行の手腕もあるのだろうけれど、楽曲そのもののアイディアが優れていることは相違ない。
正体を現さず、MVもポップスの名シーンなどを盛り込んだアニメーションで表現しているLUA。ポップスの新しいあり方をどんどん更新してほしいアーティストだ。
RELEASE INFORMATION
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Single『想定外』
2024年7月17日(水)リリース
〈Cubic Records〉
early Reflection
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