文: 石角友香 編:Miku Jimbo
長らく邦楽ロックシーンではジェンダーレスな声質のボーカルが優勢だが、理由として淡白な声質が好まれるだけでなく、複雑な曲構成とのバランスもあるのかもしれない。その傾向はボカロ楽曲と声のバランスにも散見される。今回紹介するSATSUKIはポップやロックを軸に、エレクトロニックなサウンドで今のポップスを表現するシンガーソングライターだ。ジェンダーレスな歌声の聴感に加え、声の素直さやほんの少しの憂いが曲の個性を決定づけている。プロフィールを見返すと、オーストラリアで生まれ育ち、シドニー音楽芸術大学を卒業後、日本に拠点を移し関西を中心に活動中、とある。大阪のライブハウスや梅田でのバスキングをメインのライブ活動の場とし、2024年は<MINAMI WHEEL>にも出演。アジアでも存在感を発揮しており、2021年には台湾最大のロックフェス<大港開唱 MEGAPORT FESTIVAL>にも出演している。
出会いの経緯は不明だが、シドニー育ちのSATSUKIにとって、同じくシドニー拠点で活躍するサウンドプロデューサーTaka Perryとの制作は大きな転機だったと思われる。オーストラリアはもちろん、韓国、日本、中国などアジアのアーティストとコラボするTaka Perry。最近のヒットにはHYBE初のアメリカ拠点で活動する女性グループ・KATSEYEの「Touch」があり、日本のアーティストで言えばSIRUPの「GO!!」「GAME OVER」やAile The Shotaの「Eternity」「Foolish」を手掛けている。
SATSUKIは2020年にリリースした配信シングル「Zoning Out」からTakaとタッグを組んでいるが、その成果がまとまって聴けるのは2024年3月リリースのEP『so, yeah』、そしてそのリード曲「Miss U」だろう。英語と日本語を行き来する歌唱とリリックのスムーズさ、R&B寄りのスキルフルなボーカルも聴かせたこの曲には英語圏のリスナーのリアクションも多かった。2ステップを軸にしたハイパーポップがSATSUKIの存在を一つ押し上げた印象だ。
このタッグの最新形が、今回のシングル「ROLL WITH IT」だ。これまでの軽快なハイパーポップやアトモスフェリックなエレクトロポップからイメージを変え、蠢くシンセベースがダークなムードを演出し、うっすらとした悪夢を思わせるリリックをリアルに伝えていく。《夢に落ちて 1人目覚めて》という不安を誘うリリックはトラック全体が不安定な揺らぎを醸すミディアムテンポであることでリアリティを増幅し、淡々とした温度感のボーカルが秘密の告白をされているような気持ちにさせる。ただ、曲の始まりが飛行機搭乗時のアテンションで、アウトロにもアナウンスが流れることから、フライトの眠っているのか起きているのか判然としないあの感じも思い出す。リフレインされる《You just got to roll it》は「ただ転がるしかない」とも「ただ、それに身を任せるしかない」とも訳せるだけに、現実の体感もしくは精神的な状況、そのどちらにも受け取れる。そうした構造が何をもたらしてくれるかというと、SATSUKIの柔らかで素直な声質も相まって、不安をただ共有するという実はとても癒される効果を感じる。この曲が流れている時間と聴感にほっとする人は多いんじゃないだろうか。楽曲の良さでリスナー層が広がる可能性を感じずにいられない存在だ。
RELEASE INFORMATION
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New Single『ROLL WITH IT』
2024年11月27日(水)リリース
〈early Reflection〉
early Reflection
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