文: 石角友香 編:Miku Jimbo
京都・立命館大学の軽音サークル“Rock Commune(ロックコミューン)”といえば、くるりを筆頭にキセルの辻村豪文、おとぼけビ〜バ〜、猫戦など個性あふれるミュージシャンを輩出してきたことで知られる。彼らのユニークさを育んだ要因として、基本的にコピーではなくオリジナルを軸にした活動を行うところにあるだろう。ここで紹介するTHE HAMIDA SHE’Sは同サークルで結成された現役バンドだ。2024年に1st EP『純情讃歌』をリリース。10代の男子らしく、恋愛に対する妄想を逞しくしつつ、世間には迎合するもんかと妙な潔癖さを貫く歌詞やストレートなギターロックなどから、初期のサンボマスターや銀杏BOYZを彷彿させる異様な熱量がたぎっている。音楽性から窺えるように生粋のライブバンドでもあり、2024年は6日に1回の割合でライブを行い、その総数は計57本を数えた。
2025年2月5日にリリースした2nd EP『あの娘のいない教室で』は『純情讃歌』が想いをよせる“あの娘”がどんな子で、どんなところに惹かれ狂おしい感情に苛まれ、結果、何も伝えられなかった、その先のストーリーが綴られる。ボーカル&ギターの奏太によると「“あの娘”を中心とした世界観をさらに広げて僕の青春と隣り合わせだった街のこと、友達のこと、音楽のこと、もちろん想いが届かなかったあの娘のことも赤裸々に歌いました」と、コメントしている。なんて正直でストレートなコメントなんだろう。しかも言葉の何倍も、その実像はヒリヒリと迫る。
フィードバックノイズが悲鳴のような1曲目の「BOYS DON’T STOP」で、まずグッとバンドアンサンブルが強化されたことに気づく。爆走することで涙を乾かしてしまうような2分に満たないショートチューンには、音楽を鳴らす仲間への眼差しと同時にこのバンドの意思表明も伺えるのだ。続く「豊平川」は具体的な地名をタイトルにしたことで、メンバーの中で共有される記憶が演奏にも反映されているのかもしれない。ロングトーンのストロークは車窓を飛び去っていく景色のようで、疾走する8ビートと相まって、ずっとここに止まってはいられない気持ちをかき立てるのだ。さらに「愛と平和のマーチ」では上辺だけの愛と平和の標榜に対して苛立ちと諦念を抱き、一見、冷静でシニカルな言葉をトーキングボーカルで表現する。それはほんの少しの優しさがあれば救われるのに、それさえジャッジされる今という時代についても触れていて、曲に奥行きを与えている。
続く「十九」は年齢を指すのだろうが、19歳という境目の季節をこれほど鮮明に思い出させる音と言葉のセンスに圧倒させられる。特に牧歌的な前半から、何かの前触れのようにギターが効果音を発すると、その後の少し大人になった僕たちが描かれる。シンプルでむき出しのスタイルでありつつ、曲として洗練されているのも1st EPからの大きな進化だ。ラストも「十九」に続いてリリカルでスケール感のある「雪の朝」。それまでも予感はあったが、このEP自体が時間軸に沿った物語になっていることがこの曲ではっきりする。歌の主人公は1st EPのとき同様、後悔ばかりしているが、別々の場所にいる“あの娘”に本当の気持ちを伝える手前まで強くなっているように思う。そしてアウトロでのメンバーのシンガロングには大先輩くるりの「東京」を彷彿させる部分も。これだけジャンルも時代もフラットになってどんな音楽にも手を出せる時代にあって、THE HAMIDA SHE’Sのロックバンドに懸ける夢はむしろすごく鮮烈なのだ。
RELEASE INFORMATION
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2nd EP『あの娘のいない教室で』
2025年2月5日(水)リリース
〈THE HAMIDA SHE’S〉収録曲
1.BOYS DON’T STOP
2.豊平川
3.愛と平和のマーチ
4.十九
5.雪の朝<THE HAMIDA SHE’S 2nd EP Release Tour「君の寂しさを抱きしめに行くツアー」>
※終了分は割愛
2025年3月6日(木)大阪・心斎橋Pangea
w/あすなろ白昼夢、mogariチケット
前売り¥2,500/当日¥3,000(+1ドリンク)
early Reflection
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