文: 石角友香 編:Miku Jimbo
青春パンクを彷彿させる、速くて言いたいことを詰め込んで、今できる演奏もすべてブチ込む貪欲さと、勢いだけじゃないメロディの良さ。そして「生きているとこんなことあるよね」が、醒めた達観にはどうしてもならない構造を持った歌詞。組んだばかりのバンドに共通する青くさい普遍性と、平均年齢20歳という現代の若者が逃れられない社会との関係性。そうした要素がごくシンプルなロックに溶け込んでいるのがサウルスだ。音楽大学の受験会場で聴いたやまだ(Vo,Gt.)の楽曲に衝撃を受けたあらち〜(Gt.)がバンドに誘い、大学合格後、くるみ(Ba.)とふぬ(Dr.)を誘って、2023年に結成。下北沢を中心にライブ活動を行い、これまでに4曲を配信している。また、ライブを目撃したイベンターの推薦を受け、今年2月に<でらロックフェスティバル>への出演を果たすなど、関東以外にも活動の場を拡大している。
2025年第一弾となる「地獄の果て」がデビューシングルにもなるサウルス。これまで配信してきた楽曲はできることとやりたいことを無邪気に積載した印象が強かった。例えば「わっしょい!!!!」は青春パンク的なあふれる元気と、幸せになりたいけどなれないことにむしろ生きている実感を得ている歌詞に光るものを感じた。しかも歌メロのポップさや、やまだとくるみのはっきりと男女ツインボーカルと言い切れないぐらいのラフさも個性に感じられた。さらにどの楽曲でも、あらち〜の唐突ですらあるギターソロやタッピングはパッと聴きミスマッチなようでいて、やりたいことは全部ブチ込む自由なスタイルとして痛快。そのうえ楽しいだけじゃないヒリヒリする現実も表現しているようで、論理的なバンドアレンジのメソッドを超えて、このバンドらしさを構成しているように思う。
これまでの無邪気さは保ったまま、1曲の完成度を突き詰めてきたのが今回の「地獄の果て」なんじゃないだろうか。サビ始まりで、カウパンクのようなファストなビートが耳に飛び込んでくるイントロがまずキャッチー。だが、歌詞は《地獄の果てに辿り着いた/目に見える景色に慣れてしまった/疲れを知らないあの人は/何をいままで見てきたんだろうな》と、取りようによってはかなりシリアスな内容なのだ。資料によると「仕事や学業、満員電車と闘いながら懸命に生きるすべての人へ贈るアンセム」とあるが、冒頭の歌詞だけではわからない展開が、曲が進むに連れ待っている。だが、シリアスさに感心するより、いくつかの時間と視点を織り交ぜ、グッと底上げされたやまだの表現力に感嘆してしまう。アレンジも歌を明快に聴かせるシンプルなもので、ひたすら疾走するビートが“地獄の果て”や、“疲れを知らない”体感を押し上げている。
ちなみにプロデュースはOfficial髭男dismのサポートやsumikaの楽曲編曲などでおなじみの宮田‘レフティ’リョウ。枝葉を切って曲の強さを際立たせたのは彼の仕事ではないだろうか。親しみやすい顔をしてびっくりするほど気づきをくれるバンド、サウルス。覚えておいて損はない。
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