文: 石角友香 編:Miku Jimbo
初めて作った楽曲で「出れんの?サマソニ」に応募し、<SUMMER SONIC 2015>のステージに立つ機会を獲得。2017年リリースの1stミニアルバム『行けたら行くね』収録の「元カノの成分」がYouTubeで100万回再生を記録した。その後、2020年にはミニアルバム『彼女がいなければ孤独だった』でメジャーデビューを果たしたシンガーソングライター西片梨帆。テンプレートの幸せの定義に疑問を持ち、女の子が時折見せる意外な強さや、その裏にある弱さや儚さを自分の言葉で綴る歌詞は、彼女と同世代のリスナーを中心に支持を集めてきた。その後メジャーを離れ、ライブ活動は行いつつもしばらくリリースがなかったが、2024年12月に約2年ぶりのシングル「天使はいた」で、歌い続ける意思を示してくれた。
前出の「天使はいた」はアコースティックなサウンドと繊細なエレキギターのループで構成される、これまでとは一味違うフォークロアなサウンド。歌詞も「傷を見せることでぎりぎり人と繋がってきたこれまでと違い、普通に話したくなった」(大意)というセルフライナーから窺える、彼女なりに獲得した前進が反映された楽曲だった。そして2025年に入り、久々にバンドサウンドで録音した「振り向かないで」をリリース。骨太なオルナタティヴギターロックのアンサンブル、淡々としたスローテンポ。恋人なのか親なのか、大事な人だからこそ言いたいことを素直に言えなかった主人公が、人との近い距離に怯えなくなっていく心情がじんわり伝わるショートチューンだ。肝心なことを潔く告げる、西片の資質が明快な楽曲でもある。
そして仕切り直し後の3曲目のリリースが今回の「Hope you like it.」。タイトルが示唆するように、2年前に渋谷WWWで開催した単独公演と同名であり、そのライブから続く物語が描かれている。この曲がもたらす感情は、感傷や悲しみ、未練を含みながらそのどれとも違う何かをもたらす。タイトルも踏襲されているが、歌始まりのフレーズは《I hope you like it I think you like it》、気に入ってもらえたら嬉しいです、というニュアンスだ。この初対面めいた言葉が、実はもう会えない人に向けた言葉であることを曲が進むにつれて理解する。淡々と刻まれるギターリフ、素朴なアンサンブルは’00年代のUSインディっぽさを醸し、時々空気が揺らぐような澄んだギターフレーズが響くぐらいの、ごくシンプルな構成だ。このシンプルさが、巻き戻せない時間をむしろ強く実感させる。極めつけは、主人公は“またあなたが誰かに出会って、自分に似たところがあれば生きていける”と歌うところ。自分に似た人を好きになる勝ち誇る気持ちというより、自然と私に出会う前にはなかった要素があなたに残るという意味だろう。これは「元カノの成分」にも通じる西片の考え方だ。そして彼女自身も“あなたのいないわたしができても それはただの人なだけだからーー要らない”と歌う。感傷や悲しみ、未練と、出会いという奇跡が拮抗している。しかも熱さや情念とは真逆の甘く透明な彼女の声は、むしろ心の柔らかい部分にそっと触れる。ちょっと、いや、かなり震えるような名曲の誕生である。
RELEASE INFORMATION
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New Single『Hope you like it.』
2025年4月30日(水)リリース
〈14〉
early Reflection
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