映像ディレクターやYouTubeの構成作家しても活動するPanの日常系ポップ「世界のどこかで君と」

Review

文: 石角友香  編:riko ito 

ポニーキャニオンとDIGLE MAGAZINEが新世代アーティストを発掘・サポートするプロジェクト『early Reflection』より、今おすすめのアーティストをピックアップ!第67回目は、Panをご紹介。

「道しるべ」が2023年に『early Refrection』のオーディションを通過し、同曲を1stシングルとしてリリースしたPan。小学4年生の頃から家にあったパソコンでYouTubeに投稿し始めたというデジタルネイティヴな彼は現在23歳。YouTubeの裏方チーム「こす.くま」に所属し、さまざまな動画の企画/映像/編集を手掛ける映像ディレクター/構成作家でもある。そんなバックボーンを持つだけに、自身のミュージックビデオも制作する。素朴な手触りとストーリーを持つ「道しるべ」の映像は、多数再生され、彼の映像作家としての知名度に納得する部分も。さらに、ユニークなのは彼がデジタルネイティヴでありつつ、かなり正統派のJ-POPを踏襲していることだ。

身近な世界観で大切な人に感謝を伝える曲

変わらない心で大人になることを恐れない。そんな気持ちを、弾むギターポップに乗せた「道しるべ」。未来への不安を抱えたSFロマンぽいLo-fiヒップホップ「まぼろし」。キラキラしたサウンドメイクとグルーヴィなビートでクオリティアップを実感させた「めぐり愛」では、何億もの人間が存在する地球上での運命の出会いを歌う。続く「羽根に乗って」では、ネオソウルっぽいよれたビートも取り入れ、彼の世代ならではのロマンチシズムを表現。特に《2人歩いてきたそれぞれ違う汚れたsneaker》というフックに、控えめながら背筋の伸びるような自信を見せるのもいい。そして近作「アモアネ」は、久々にギターをフィーチャーした踊れるロック。ここでも彼は運命の恋を信じている。もしかしたらそれは妄想かもしれないけれど、やさしく澄んだ声と魅力的なメロディがPanの世界に自然と導いてくれるのだ。

そして通算6作目で今年3作目となる「世界のどこかで君と」が配信リリースされる。これまで以上にポップな印象を残すのは、軽快なシャッフルビートと初めての女性ボーカル、実裏リコとのデュエットによるところが大きい。Panはセルフライナーで「誰しも大切な人とか忘れられない人っていると思うんです。この曲はそんな“大切な人”をテーマに書いた曲」と語る。ただ、その大切な人に感謝を伝えるタイミングは意外となく、あるとしてもタイミングがむずかしい。だから音楽で伝えようという思いに至ったという。素朴で軽快なギターポップに乗った、海の近い街やなじみの商店街などが映像として浮かぶ歌詞は、空想的なニュアンスの強いこれまでの彼の作品の内容に比べるとグッと身近だ。MVもPanの地元の小学校で撮影したらしく、フルバージョンにも期待したい。ちなみに前作「アモアネ」にもスピードアップバージョンが存在したが、今回のそれもユニークで、速い分ジェンダーレスに聴こえるPanの声、人工音声めいた実裏リコの声のデュエットもまた違った印象を残す。遊び心のベクトルがYouTube世代、なんである。

RELEASE INFORMATION

インフォメーション画像

New Single「世界のどこかで君と」

2025年5月21日リリース

EVENT INFORMATION

<音楽xお笑い 異なるカルチャーの融合点『プロムナード』>

2025年6月22日(日)at 東京・下北沢SPREAD
OPEN 17:30 / START 18:00
Ticket:ADV ¥3,000 / DOOR ¥3,500

アーティスト:
穂ノ佳(Band set)
皆川溺集合体
川辺素(ミツメ)
Quw
飯澤 遥土
Pan

芸人:
サノライブ
どんぐりたけし
清水駿平
高木払い
ヤッホイ
わさびビックバン
ユクトモ
記念受験

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Pan(パン)

長野県出身、22歳のシンガーソングライター。2023年から音楽活動を開始。同年3月25日にリリースした1stシングル「道しるべ」が、ポニーキャニオン主催の新世代アーティスト発掘プロジェクト『early Reflection』の2023年3月度リリースアーティストに選出。作詞作曲も自身で手がけるのはもちろん、リリースした楽曲のMVの監督/撮影/編集も自身で行い、独特の世界観を作り上げている。

さらに、YouTubeの裏方チーム「こす.くま」に所属し、登録者10〜1000万人のYouTuberの企画/撮影/編集を担当。
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