文: 石角友香 編:Kou Ishimaru
20代前半の若いアーティストに過剰なドラマ性を付与するつもりはない。が、自分が生きていくためのよすがとして早くから音楽を作り始め、iPhoneのGarageBandでトラックメイキングから録音まで行った初作『光』で世に出た彼女が、思いの外早くさまざまなアーティストと協働した作品をコンスタントにリリースしたことに、単なる成長以上の勇気と決意を見出したのは私だけではないと思う。デジタルネイティヴであり、生まれた時から決して明るい先行きが保証されているわけではない世代感。古い洋楽、オルタナティヴR&Bやネオソウル、さらに現行のJ-POPを自分のものとして吸収してきた音楽的背景。同じようなプロフィールを持つシンガーソングライターは存外多いだろうが、ワタナベ・メイは何かひとつのジャンルに拘泥することはない。それよりも楽曲を通じて、ある瞬間や関係の中の真実めいたものを聴後に残す。それは言葉だけでなく楽曲の構築や音選びありきのシナジーであり、意匠のユニークさを越えた普遍性に着地する。
2nd EP『Hazy』は他者とのコミュニケーションという新たな試行に飛び込んだ楽曲がひとつにまとめられたものだ。曲順はリリース順とは異なっている。M1はEP中最もウォームな「世界の本音」。社会と個人のどちらも世界と捉え、変革を促せることについては実現していこうとするというと硬いが、DUBFRANK(SAIRU)が作り出すモタり気味のビートのネオソウルが自然な受容を可能にしている。M2はコラボの初作となった大沢伸一の作曲編曲による「彗星」。宇宙の果てに吸い込まれそうなベースラインの深さに、初めて聴いたとき同様ゾクゾクする。切な苦しい声の魅力に加えて、まっすぐ突き通すスタイルも聴けるのはワタナベがこの楽曲でボーカリストとして相当の歌い込みや試行錯誤を経た結果でもあるのだろう。宇宙空間での孤独の疑似体験は歌詞の内容のみならず、大沢プロデュースの曲構成と音像の成せる技だ。
宇宙から仲間が集うリビングに着地した体感を得るM3「Smoky Blue Berry Jam」。他者とのコラボはここで初めて生バンドという新たなフェーズを迎える。共編曲とギターに玲山(chilldspot)、ベースに関谷友貴(TRI4TH、Kurofune)、ドラムに荒田洸(WONK)を迎え、絶妙な音の抜き差しとレイドバックするビートでゆらぎを生み出す。艶とストイックさの両面を感じさせるワタナベのボーカルも新鮮だ。そしてEPラストに待望の新曲「ともだち」がセットされた。作詞作曲はワタナベによるもので、フックの効いたマイナーメロディはJ-POP色が強め。同時に歌いだしの《ともだちたくさんいらないなんて》にギョッとする。そのままワタナベにとっての“ともだち”がレトリックも含みながら進行していくのだが、これって、意外に子どもの頃から、いい歳をした大人まで共通する感覚なんじゃないだろうか。編曲にはSpecial Favorite Musicの久米雄介を迎え、ミニマムなトラックとThundercat(サンダーキャット)ばりのよく動くベースラインが、シニカルな歌詞の世界にハマっている。おのおの異なる個性を持つ4曲は人間ワタナベ・メイの勇気と覚悟が詰まった自己紹介と言えそうだ。

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