文: 石角友香 編:Kou Ishimaru
坂本櫻は非常に多作なシンガーソングライターだ。ある時期は毎日1曲以上作曲していたといい、正式なリリースとしては25曲が配信プラットフォーム上で聴くことができる。それは彼女がピアノと歌(歌詞とメロディ)を同時に即興的なスタイルで生み出せることが理由なのではないだろうか。どこか瞬発力を要する短歌や詩の創作に近いオリジナリティの輝きを感じる。4歳からピアノを始め、故郷長崎の豊かな自然の中で育った坂本は学生時代には吹奏楽部でパーカッションやクラリネットなどの演奏を経験。それが現在のピアノ以外のインストゥルメンツも手がけ、サンプリングも行う素地なのだろう。上京後はコロナ禍に直面するも、ライブ配信を経て、状況が緩和したのちは路上ライブやストリートピアノでの演奏を行い、2022年11月には1stワンマンライブを実現。2ndワンマンライブのチケット販売目標達成を機に、それまで応援してくれたファンへの<お礼参り>として47都道府県全てでストリートピアノやインストアライブを行うタフさも持つ。
時系列が前後するが、2021年リリースのシングル「アンダーグラウンド」の、簡素な環境でのピアノ弾き語り動画をご存じだろうか。単にまだ知名度のない存在が上を目指すというより、随所に文学青年のような瑞々しさと少しの屈折を感じる歌詞。それを柔らかさと強い意志が共存する歌声で放つ様に撃ち抜かれた人も少なくないだろう。
その後、リズムやシンセストリングスなども取り込んだポップチューン「ピンクサイダー」(2021年)、ジャズのコード感のある「a piece of cake」(2022年)、シティポップとネオクラシカルが融合した「アオハル。」(2023年)、複数のピアノサウンドとドラマチックな構成で、楽曲の奥行きを増した「落葉」(2024年)、ボカロクリエーター、nu_imiがトラックを提供した「時を覗きこんで」(2024年)、ピアノと少しのSEだけでダークファンタジーに通じる世界を表現した「醒めない夢」(2025年)と、年に2〜4作品のペースでリリースしてきた。
また、スタジオジブリ作品の主題歌制作を熱望する彼女。2025年1月にはスマートフォン / PC向けゲーム『メメントモリ』の新キャラクター「アルトリア」テーマ曲「Warrior(Radio Edit)」の歌唱を担当したことで、ファン層を拡大した。今年に入ってからも1分半のショートチューンだが、聴く人を力づける手紙のような「君へ」、純粋で気高い“君”の存在が自分を生かしている、そんなメッセージが感じられる「遠路」をリリース。「遠路」では弦楽奏者やアレンジャーを迎え、よりスケール感のある音像を獲得している。いずれも言葉選びと主人公の在り方に潔癖な側面が見えるが、これは坂本のキャリア当初から一貫したトーンであり、それが多岐にわたる曲調に筋を通している。
早くも2026年3曲目のリリースは今の季節にこそ聴きたい1曲。「sakura」と題されたこの曲は繰り返し寄せる波のようなマイナーキーのピアノリフが、困難という波をかき分けて泳ぐような仮想の体感を生み出す。もしくは夜明け前のもっとも暗い時間のイメージだろうか。彼女の敬愛するジブリアニメの音楽のように、自然や大きな存在を想起させるピアノ、そして歌のメロディがある。春のある時期にだけ鮮やかに咲き、他の季節にはその気配を消す桜に、誰も知らない努力や続いていくその人の人生が重なるように感じる歌詞。そしてこのタイトルは坂本の名前でもある。そう考えると彼女自身が桜として、誰かの努力や人生を静かに見守っているとも取れる。マイナーのメロディが、歌詞の文末にだけメジャーコードで終わるのも示唆的だ。心を突き動かすような大曲とはまた違う、心を調律したい時に聴きたい美しい小品。

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