オルタナ、ポストロックの感触をベースにした“フォークシンガー”のドキュメント。聴き手の心情に溶け込むJohn Doeの新作

Review
ポニーキャニオンとDIGLE MAGAZINEが新世代アーティストを発掘・サポートするプロジェクト『early Reflection』より、今おすすめのアーティストをピックアップ!第82回目は、John Doeをご紹介。

今も世界のどこかで自分自身のドキュメンタリーのような音楽を黙々と作る人がいる。いにしえのフォークシンガーとは違い、DTMを駆使することが当然の創作手法になったとしても、スタンスとしてのフォークシンガーは存在する。そんなことを改めて意識させてくれたのがJohn Doeの音楽だ。同名義では2022年にアルバム『scene』をリリース。また、最近の活動としては先月このコーナーで紹介したシンガー、SAKIの『GlimpsesWorks -EP』で全曲の作曲とアレンジを担当。プロデューサーとしても才覚を見せる。また、岐阜を中心に活動する6人組オルタナティブバンド・my young animalのギタリストとしても活動。同バンドは2017年に辻友貴cinema staff)のレーベル〈LIKE A FOOL RECORDS〉からアルバム『Halo』をリリースし、2025年はLOSTAGEらとの対バンをはじめ主にライブ活動を行っていた。90年代オルタナティブロックやシューゲイザー、ポストロックを軸にしつつ、突き抜けた透明感を持つサウンドはSigur Rós(シガー・ロス)などアイスランドや北欧のバンドに通じる。

「ヒトとの関わりは双方向で行き来するもの」をテーマにした最新作

タイトルが示唆するように「見る」ことがテーマだと想像できたJohn Doeの1stアルバム『scene』。実際「視る」という楽曲も収録されており、作品の主人公は羨望や憧憬を抱きつつも今いる場所から動けないという軽い諦念を抱いていたように感じる。その感覚は音楽性こそ違えど、syrup16gに似た印象を受けた。そこに今回、3年ぶりとなるアルバムのタイトルは『HITOTOTOTIH』である。彼の心情になんらかの変化があったことは推して知るべし、だ。

「ヒトとの関わりは双方向で行き来するもの」をテーマにしたという本作。アルバムはそのテーマを示す「HITO To」で始まる。曲を通じて鳴らされる歪なビートが不安なムードを作るが、空間を拡張するシンセと光をイメージさせるアコギが、「生きるということ自体に絶対的な意味はないが、それでもただ毎日は進んでいく」という意味合いの歌詞とリンクしていく。淡々としているが前向きな気持ちをもたらす曲だ。ほのかな光は続く「並行」につながる。寒い国のフォークミュージックを思わせるアコギの響きだけでなく、マーチングっぽい短い打楽器の音が色彩を加えている。3曲目の「サイン」はフォークシンガーとギタリストとしての資質が全開になった曲と言えそうだ。わかり合えたと思ったすぐ後にやってくる別れを《いつも濡れた手のひらが 乾いていることに》と表現するセンスは的を射ている。だが、それがむしろ切ない。

乾いたビートと鳴り続けるレトロなアナログシンセの対照がユニークな「空隙」は歌詞を目で追わなければわからないぐらい繊細だが、きっと恋についての歌だ。もしくは秘密の共有についてだろう。《頬を染めて 斜に構えて ここぞって攻める》という歌詞が、ふわっと広がるシンセの音色と重なるとき、映画を観ている気持ちになる。そしてラストの「To HITO」は1曲目のサウンドスケープと共通しながら、漂うエレキギターのメロディが夕焼けを喚起する。もちろん聴くタイミングによってはこの曲のサウンドも一日の始まりである朝の風景を想起させる音に聴こえることもありそうだが、アルバムがひとつの円環を描いていると考えるとグッと自分ごととして引き寄せることができるだろう。オルタナティブロックやポストロックの音像や感触を根底に持った“フォークシンガー”のドキュメントはジャンルを意識することなく聴き手の心に染み込む作品を誕生させたのだ。

John Doe

RELEASE INFORMATION

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New Album『HITOTOTOTIH』

2025年12月20日リリース
Label:〈John Doe〉

【TRACKLIST】
M1.HITO To
M2.並行
M3.サイン
M4.空隙
M5.To HITO

▶︎配信URLはこちら

early Reflection

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early Reflectionは、ポニーキャニオンが提供するPR型配信サービス。全世界に楽曲を配信するとともに、ストリーミングサービスのプレイリストへのサブミットや、ラジオ局への音源送付、WEBメディアへのニュースリリースなどのプロモーションもサポート。また、希望するアーティストには著作権の登録や管理も行います。
マンスリーピックアップに選出されたアーティストには、DIGLE MAGAZINEでのインタビューなど独自のプロモーションも実施しています。

▼Official site
https://earlyreflection.com

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John Doe(ジョン・ドウ)

日本を拠点に活動するアーティスト。6人組オルタナティブバンド・my young animalのギタリストとしても活動するほか、シンガーソングライターの楽曲提供などプロデューサーとしての才能も発揮している。

オルタナティブやポストロックの要素をベースにしつつ、静けさの中に余韻を残すフォーキーな音楽を制作している。

2022年に7曲入りアルバム『scene』をリリース。最新アルバム『HITOTOTOTIH』を12月20日にリリースした。
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