感覚的に瞬間を捉える言葉と声。SAKIの1st EP『GlimpsesWorks』

Review
ポニーキャニオンとDIGLE MAGAZINEが新世代アーティストを発掘・サポートするプロジェクト『early Reflection』より、今おすすめのアーティストをピックアップ!第80回目は、SAKIをご紹介。

意味のある歌詞でなくても、そもそも人間の声はそれ自体が情報量を持つ。いにしえの人間が声色や高低で意思疎通が可能だったのも何か納得できる。と、話が大きくなってしまったが、今回紹介するSAKIは散文詩のような歌詞と、音として言葉が素直に届く透明感あふれる声が特徴的なアーティストだ。モデルと音楽家を兼業する彼女は17歳のとき、UA中村佳穂の作品のプロデュースなどでポップシーンでも名を馳せる荒木正比呂らによるプロジェクト、GASJAMの「Aster」に作詞と歌唱で参加。2023年にはSoundcloudに投稿した自身のオリジナル曲「spring」が阪急博多百貨店ファッションフロアのコンセプトムービーに起用。また、同年、DJ MOTIVE率いるエレクトロニックかつサイケなバンド、deadbundyのアルバム『Neu Radio』にゲスト参加している。いずれもポストジャンル的な志向の音楽性だったが、彼女なりのポップソングを提示した2024年のシングル「CIDER」からはソロアーティストとしての活動を本格的にスタートさせた。また、今年7月にリリースした「tooku」では、心にあった何かが言葉にした瞬間にこぼれ落ちてしまう様をミニマムな電子音に乗せ、リリカルに表現。Apple Musicの『最新ソング:オルタナティブ』とYouTube Musicのプレイリスト『J-POP ON THE RISE』に選出されたほか、多くの音楽媒体でも取り上げられた。

日常の感情やときめきの断片を音楽として形作り、残す営み

1st EPとなる『GlimpsesWorks』は「CIDER」にも参加していたJohn Doeこと尾野祥平がプロデュースを担当。インディーロックバンド、my young animalのギタリストでもあり、ソロやサウンドデザイン、プロデュースなど多岐にわたり活動するミュージシャンだ。収録曲は全6曲。『GlimpsesWorks』というタイトルは“glimpse=垣間見る”と“works=作品”を意味する造語で、「日常の中で見える感情やときめきの断片を音楽として形作り、残すことに向き合うという意味が込められている」とのこと。

1曲目の「Profile」はSAKIの声のレイヤーとシンプルなピアノを軸に、オルガンの和音に移行していく流れがホーリー。もともとJohn Doeの結婚式用に彼が書いた曲にSAKIが歌詞を書いたというのも納得だ。次く「CIDER」はシングルよりひんやりした感触に変わったリミックスバージョン。透明感のある生音のギターや静かに話すぐらいの歌のテンション感が、直感的な歌詞の世界を不思議と近いものに感じさせてくれる。最もバンドサウンドの躍動感があふれる「Debut」は2分に満たないショートチューンで、そのことが“条件が揃っていなくても流れに身を任せてみよう”という歌詞の意味にフィットする。心の動きとテンポはリンクするものだが、曲の尺も然りなのだ。

本作中、唯一John Doeが作詞した「遊泳」は、水中で歌えたら?という仮定がなされたのではと思しき、口の中に何か入っているような面白い発声に耳がいく。水中では言葉を発することはできないけれど、その代わりに地上とは違う身体の自由もあるのだということを感じられる曲だ。また、「方円」という耳慣れない単語がタイトルの曲ではシンセサウンドが広げる背景音に、これまでで最も強く遠くへ放つようなボーカルを聴くことができる。ちなみに“方円”とは仏教の偈(げ・仏徳を讃えたり教理を述べたもの)のひとつである水は柔軟故にどんな形の器でも自らの形を変えて寄り添うことに由来するらしい。そしてラストの「on reading」は本作中最もナチュラルな聴きごこちのナンバーで、読書中に自由に空想の翼が広がる開放感が表現されている。6曲すべてが異なるジャンル感であることから、SAKIの本格的な自己紹介であると同時にアーティストとしてのスタンスも表明しているのだろう。概してショートチューンが多く、もう少し展開が欲しい曲もあるが、そこは今後の作品にも注目していきたい。

RELEASE INFORMATION

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1st EP『GlimpsesWorks』

2025年11月14日リリース
Label:〈SAKI〉

▶︎配信URLはこちら

early Reflection

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early Reflectionは、ポニーキャニオンが提供するPR型配信サービス。全世界に楽曲を配信するとともに、ストリーミングサービスのプレイリストへのサブミットや、ラジオ局への音源送付、WEBメディアへのニュースリリースなどのプロモーションもサポート。また、希望するアーティストには著作権の登録や管理も行います。
マンスリーピックアップに選出されたアーティストには、DIGLE MAGAZINEでのインタビューなど独自のプロモーションも実施しています。

▼Official site
https://earlyreflection.com

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SAKI(さき)

14歳よりモデル活動を開始し、現在は並行して音楽活動を行う。透明感のある歌声とミニマルなビートで、内面の揺らぎや心の景色を描き出す。

荒木正比呂(GASJAM)、星優太(WOZNIAK)、DJMOTIVE(deadbundy)、尾野祥平(JohnDoe/my young animal)など多彩なアーティストとのコラボレーションや、Web CMへの楽曲提供、写真と詩を掛け合わせたアート作品の制作など、その活動は多岐にわたる。

2024年に1st シングル「CIDER」をリリースし、ソロでのアーティスト活動を本格始動。2025年11月に1st EP『GlimpsesWorks』をリリースした。
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