“ネオソウル”の先へーーMimeが3rdアルバム『Bloom』で新たに見せたジャンルを超えたサウンド

Interview
2022年12月7日に3rdアルバム『Bloom』を発表した4人組バンドMime(マイム)。次世代のネオソウルバンドとして知られるMimeが今作で目指したのは、ジャンルのフォーマットを避けた音楽。これまで培ってきたものを超えて変化する意志が感じられる作品だ。今回はメンバー4人にメールインタビューを実施。

4人組バンドMimeが、2022年12月7日に3rdアルバム『Bloom』をリリース。Mimeの作品はその時々のバンドの状態が色濃く表現されている。“ネオソウル”や“アーバン”といったMimeの音楽的な核を示した1stアルバム『Capricious』、4人体制で再出発し変化の途にあった当時の現在地を示した意欲作2ndアルバム『Yin Yang』、そしてそれらに続くのが本作『Bloom』だ。

前作から約1年10ヶ月後に発表された『Bloom』は、タイトルの通り4人が育んできた成長が花開いたアルバム。都会的なサウンドは深みを増し、心地よいグルーヴで聴き手を引き込んでいく。また、エレクトロなトラックが印象的なダンスチューン「Put your gun down」や、SoulflexZINと共作した「Seed(feat.ZIN)」など新しい一面が垣間見えて、これまで奏でてきたジャンルの枠組みを超えて普遍性を見出そうという意志が感じられた。ただし、音楽性の軸を変えたわけではなく、あくまでMimeの歩んできた道の地続きにある作品となっている。

今回は、メンバー4人にメールインタビューを実施。制作エピソードやリファレンスとなった楽曲などを伺い、本作の魅力を深堀りしていく。

ZINとのコラボ曲も収録。『Bloom』で見せた“内側からの変化”

ー3rdアルバム『Bloom』のコンセプトを教えてください。

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TiMT(Drums, Prog):

前作『Yin Yang』の制作を終えて改めて見つめ直した上で、もう少し抑制の効いた、どこか平熱感のあるようなものを作りたいなというところは全曲通してコンセプトとしてはありました。

あとは全体的な印象として、ジャンル感を明確に打ち出すようなフォーマット的なものをできる限り避けて、曖昧でグレーなサウンドというところは意識しました。
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内野隼(Gt):

明確に制作初期からアルバムのビジョンがあったわけではないと思いますが、シンプルにコンパクトにソリッドな印象のものを目指すというのは全体の共通認識としてあったと思います。

『Bloom』というタイトルには、どのような想いを込めましたか?

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ひかり(Vo):

まず今回タイトルを決めるにあたり、内側から変化を起こそうともがく詩が多かったのでそれを表現できる言葉がいいなと。「Colorful Raindrop」の詩に出てくる《綻ぶ》という言葉が、つぼみが開き始める(+)の意味がある一方で“脆さ”(=縫い目がほつれるとか)も表現できて、その二面性も楽曲とマッチすると思い”Bloom”にしました。

“Bloom”という言葉のように、かたく結ばれていた蕾が少しずつほどけるように誰かの心を解く作品になれば嬉しいです。

ーリード曲「Seed(feat.ZIN)」は、SoulflexのZINさんを客演に迎えています。制作時に印象に残っているエピソードや、制作で刺激を受けた点はありましたか?

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TiMT(Drums, Prog):

ZINとは個人的には何曲か制作をしていて、トップラインの面では全信頼をおいていたので、こちらが上げたトラックにバッチリハメてきてくれた時には思わずにやけました。

改めて二人の歌が並んだ時に、ZINとひかりが持っているグルーヴやリリックの違いが面白かったし、対面でのRECを通じてお互いから引き出されたフレーズも随所に入れ込むことができて、いいコラボレーションになったと思います。
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ひかり(Vo):

私にはない引き出しから飛び出すZINさんの詩やトップラインがとても刺激的でした。何かが芽生える瞬間について、互いの考えをシェアしながら文通みたいに作り上げたのも思い出深いです。

ー「Put your gun down」をはじめ、本作ではコロナ渦以降の時世にインスパイアされた歌詞が多いように感じます。歌詞を書く際に意識した点は何でしょうか。

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ひかり(Vo):

自分の内側を見つめ直して、取り込んでから外へ発信していくことを意識しました。その際、詩で協力してもらっている高野いづるさんと私の考えを「なぜそう思っているのか」「どうしていきたいのか」と深掘りしながら作り上げました。

「Put your gun down」は世界情勢の不安定さが加速した頃にできた曲。攻撃的な世の中や人に対して「あなたが構えた銃なんて私が下ろさせてやるんだ」と強気な気持ちを詩にしました。

「You Are Beautiful」はコロナ以降、自分に残るものと離れていくものが顕著に現れた気がしていて。そんな中、手放したくないものもある。例えば人との関係とか。でも互いの天秤がイコールではなくなったら? 傾きっぱなしの状態は執着心みたいなものに変わっていく。そんな”執着”や”手放すこと”をテーマにしました。とはいえ執着心も自分の愛らしい一部として受け入れてあげたいですね!

ー曲間をシームレスに繋ぐインスト曲「Enigma」が挿入されている点など、全8曲の流れにもこだわりを感じました。曲順やアルバムの構成、流れなどで意識された点はありますか?

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TiMT(Drums, Prog):

「Starchild」の特に前半のアレンジをより幻想的でアンビエンスの効いたものにしたいと考えた時に、そのつなぎとしての存在が必要だと思い、「Enigma」を作りました。

近藤に一発録りで弾いてもらったものにサウンドアレンジを施した、シンプルなものではありますが、あるとないとではアルバムの印象がすごく変わったと思います。その流れを軸として置いた上で、前後をつないでく形で曲順は考えました。

ー『Bloom』の収録曲でお一人ずつ気に入っている曲を挙げるとしたら、どの曲になるでしょうか?

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ひかり(Vo):

「Starchild」。私が初めて作曲に挑戦した曲。数年前ドキドキしながらデモを聴いてもらったのを今でも覚えてますが、あの時、「良いじゃん! 完成させようよ」と言ってくれたメンバーに感謝です。神アレンジのおかげで本当に良い曲に化けました。皆の力を借りて完成できたのは感慨深いです。
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内野隼(Gt):

「Put your gun down」。エンディングのVan Halen(ヴァン・ヘイレン)みたいなトーンのギターソロは普段あまりやらないから面白かったかなと思ってます。
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TiMT(Drums, Prog):

「Colorful Raindrop」。サウンド的にも引き算の美しさがあるし、ボーカルの温度感にかなりこだわりました。今までにないくらい引き気味で歌ってもらうことで、儚さと親密感の両方が出せたと思います。
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近藤邦彦(Key):

「Labyrinth」。メンバーで集まって0から作った印象が特に強い曲。前半から後半にかけての展開の仕方や、最後の盛り上がりなど、今までにないチャレンジングなアレンジになったなと思います。一曲の中にこだわりが詰まっています。

Kacy Hill、デヴィン・モリソン、ビビ、オスカー・ジェローム…『Bloom』と親和性の高い楽曲

ーアルバム制作のリファレンスとなった楽曲や、バンドの今のムードを示す楽曲は何でしょうか。また、選んだ理由も教えてください。

Kacy Hill「So Loud」

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TiMT(Drums, Prog):

歌の温度感、軽さと儚さを持ち合わせている質感。

Empress Of(エンプレス・オブ)「Dance for You」

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TiMT(Drums, Prog):

リファレンスにしたわけではないですが(この曲のほうがリリース後なので)、「Put your gun down」と近しいバイブスを持っている気がします。BJ Burton(BJ・バートン)のプロデュースワークはど真ん中を行かずに、絶対どこか変なのが好きです。

Devin Morrison(デヴィン・モリソン)「With You」

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近藤邦彦(Key):

90年代R&Bリバイバルがメンバーでも流行っていて、今作の音作りなどにも影響を受けていると思います。

SUMIN(スミン)、Slom(スロム)「THE GONLAN SONG」

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近藤邦彦(Key):

こちらも90年代リバイバル。プロデューサーSlomの音色、ミックスが耳を幸せにします。

Erika de Casier(エリカ・ド・カシエール)「Polite」

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ひかり(Vo):

ボーカルの上がり切らない温度感。

BIBI(ビビ)「Life is a Bi…」

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ひかり(Vo):

少しだるいねちっこさを感じる歌い方。ストリングスの展開。

The Marias(ザ・マリアス)「Little by Little」

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ひかり(Vo):

ボーカルとコーラスの塩梅。空気感たっぷりのMaría Zardoya(マリア・ザルドヤ)の声が大好きです。

Oscar Jerome(オスカー・ジェローム)「No Need At All」

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内野隼(Gt):

最低限の音数で、一つ一つの音がセクシーでイケイケです。今年よく聞いていました。

Mimeにしか出せないサウンドを見つめ直して形にしたい

ー『Bloom』制作の際に苦労した点など、印象に残っているエピソードを教えてください。

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TiMT(Drums, Prog):

スタジオでデスクに向かって4人で集まって制作する形態を取ったのが初めてで、集まったところから0→1を組み上げていく最初の取っ掛かりを見つけるまでが難しかったです。

あとはドラスティックにアレンジの方向を転換するのも結構難しかった。逆に細かいアレンジの詰めは集まって進める中で、その場でジャッジして色々なアイデアを試すことができたので、やりやすかったです。
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ひかり(Vo):

歌唱のイメージはあるのに、自分の表現に落とし込むことが難しかったです。特に「Colorful Raindrop」は声色や強弱を微調整しながらtry&errorの繰り返しでした。解がないからこそ、これからも色んな表現方法を模索していけたらと思います。

ー本作の制作で新しく挑戦したことはありますか?

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内野隼(Gt):

ネオソウル的なギター演奏を意識的に避けるというか、別のアプローチをトライするということを意識していました。
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近藤邦彦(Key):

個人的にはキーボーディストとして前作よりもシンセやピアノの音色面でより曲の世界観に彩りを添えられたかなと思います。間奏部でのソロにも、メンバーのおかげでたくさん挑戦させてもらえました。

ー前作『Yin Yang』は、4人体制となったバンドの過渡期の状態を素直に表現した作品でしたが、本作『Bloom』はどのような位置づけとなっているでしょうか?

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内野隼(Gt):

『Yin Yang』の延長線上にあるもので、段々といろんなことのバランスが取れてきたのが『Bloom』だと思っています。

ー2024年、Mimeは活動10周年を迎えます。2023年はそういった節目を意識した活動も増えてくるでしょうか? 現時点での目標やこれからの展望を教えてください。

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TiMT(Drums, Prog):

あまり意識せずに流されずマイペースに。改めて自分たちにしか出せないサウンドを見つめ直して、たくさん実験して形にしていきたいと思います。
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近藤邦彦(Key):

今回もそうでしたが、この4人でしか作れないものがあると思っているので、これから自分たちが作るものにも自らワクワクしています。そんな自分たちや作品たちを楽しんでくれる人の輪を、地道にでも大きくしていけたらと思います。
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ひかり(Vo):

ジャンルに捉われすぎず、自分たちの色んな可能性に挑戦していきたいです。ツアーやフェスにも参加できたらいいなと思います。
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内野隼(Gt):

Mimeにしかできないサウンドをもっと作っていきたいですね。

進化し続けるMimeの現在のムードは、ライブでも体感できる。例えば『Bloom』リリース翌日に行われたワンマンライブでも多彩なアンサンブルで観客を魅了し、4人の現在地を示してくれた。2022年末に出演する<RAIKO -来光- RISING COUNT DOWN 2022→2023>をはじめ、ライブ情報は公式サイトやSNSなどで確認してみてほしい。

INFORMATION

3rd ALBUM『Bloom』

2022年12月7日(水)
Situation.Tokyo/NATURAL FOUNDATION Recordings

DL&ストリーミング
https://linkco.re/4NxpYB8d

EVENT INFORMATION

<RAIKO -来光- RISING COUNT DOWN 2022→2023>

2022年12月31日(土)
shibuya eggman
Open:18:30
Start:19:00(終演時間25:00前後予定)
http://eggman.jp/schedule/schedule-20209/

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DIGLE編集部

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Mime(マイム)

メンバーは左より、内野隼(Gt)、ひかり(Vo)、近藤邦彦(Key)、TiMT(Drums & Prog)。
2014年2月、東京で結成。2016年6月に自主盤1st Mini Album『LIGHTS』、2018年9月に1stフルアルバム 『Capricious』をリリース。2020年4月より現在の4人体制で再始動し、2021年2月に2ndフルアルバム『Yin Yang』を発表した。

なお、メンバーそれぞれが別プロジェクトでも活躍している。ひかりはTokimeki Recordsにボーカルとして参加し、内野(Gt)はLast Electroでも活動中。TiMTはPEARL CENTERのメンバーとして活動していた(2022年9月29日解散)。近藤(Key)はMichael Kaneko等のサポートとしてライブ等に参加している。
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