黒澤明から得た緊張と開放のアイデア|世界的DJ・Cursesが日本に感じるシンパシーについて語る

Interview

文: Fled Tokyo(Tune ouT Tokyo/取材)、Aoi Kurihara(翻訳)  編:Miku Jimbo 

世界的に活躍するDJであり、アンドリュー・ウェザオールにも通ずるサイケデリック・アシッド・パンクのスタイルを確立するCurses(カーシス)が2023年2月に来日。インタビューを実施した。

ニューヨーク出身のCurses(カーシス)は、ベルリンを拠点に活動し、斬新な音楽スタイルを築く国際的なDJ。80年代のニューウェーヴやイタロ・ディスコのダークな側面、EBM(Electronic Body Music)を掴みどころのないボーカルとブレンドし、ダンスフロアにロマンティックな空間を作り上げる。

DC-10で行われた<Circoloco>のメインルームでのDJであろうと、<Nuits Sonores>のようなフェスティバルでのライブ演奏であろうと、Cursesは会場の規模に関わらず、すべてのダンスフロアにパンクとニューウェーヴのエネルギーをもたらす。

そんなサイケデリック・アシッド・パンクの雄であるCursesがこのたび来日。2月17日(金)表参道にあるVENT Tokyoへの出演を控えたCursesにインタビューを実施した。

黒澤明の作品に見出す共通点

ーベルリンを拠点に、ライブミュージシャン、DJ、プロデューサー、〈OMBRA INTERNATIONAL〉レーベルのボスとして世界的に活動されていますが、若い頃から音楽というクリエイティブな旅を始めたきっかけは何ですか?

すべては両親の影響です。 彼らはいつも家で音楽を流していて、私の父はオペラとクラシックが好きでした。オペラ座のドン・ジョヴァンニのライブリサイタルで、まだお腹の中にいる私が母親のお腹を激しく蹴っていたようです。彼らは私を“オペラ狂気のオルランド”から名付けようと考えたのです。

ー〈OMBRA INTERNATIONAL〉では、Permanent Vacation、Bordello A Parigi、Oráculo Records、Wrong Eraからベルギーの強豪N.E.W.S.まで、あらゆるレーベル/アーティストの作品をリリースしています。さまざまな国から影響を受けていると思うのですが、ここ日本のアーティスト、音楽、または文化からの影響はありますか?

実は私は、黒澤映画の大ファンです。 映画とヴィジュアル・アートは、音楽において不可欠な役割を果たし、感情とメッセージを伝えるのに役立っていると感じています。 黒澤明監督の『用心棒』(1961年日本公開)のような映画では、緊張感、シンプルさ、そして危険と感情の強力な解放という共通点を常に見つけてきました。また、イタリアの映画監督Federico Fellini(フェデリコ・フェリーニ)も同様です。 私は、歌とクラブ・ミュージックで緊張と解放、闇とロマンスを呼び起こそうとしています。 

ーシンセサイザーから制作用のドラムマシン、再生用のDJギアまで、日本のハードウェアは何十年にもわたって業界標準となってきました。 制作過程に日本のギアを取り入れていますか? また、最近気に入っているギアは何ですか?

80年代にRoger Linn(ロジャー・リン)がAKAIと提携して、ドラムマシンとサンプラーに関しては後戻りできなくなったと思います。 初めてのサンプラーはAKAIで、今でもCursesのライブバンドはAKAI「MPC LIVE」をすべてのドラムのメインスケルトン(骨格)として使っています。 

AKAIの他に、KAWAI「R-100」ドラムマシンの大ファンでもあります。16歳のときに「R−50」を持っていて、20代前半のときに100にアップグレードしました。 時代に左右されない定番のサウンドです。ベースのスラップやスネアに飽きることがありません。

Andrew Weatherallとの思い出

 ーAndrew Weatherall(アンドリュー・ウェザオール)は東京でもアイコンです。 彼は亡くなる前年の2019年8月にVENT Tokyoでプレイしたため、彼の生きた記憶は今でも日本に残っていると思います。2019年、彼が最後に主催したフランス南部・カルカソンヌで開催された<Convenanza Festival>に出演しましたね。The Guv’Nor(Andrew Weatherallの敬称)との思い出を教えてください。

彼は何と絶対的な伝説だったのでしょう。 Weatherallは謙虚でありながら多才で支援的なアーティストでした。どれほど成功していようと、新進気鋭であろうと、彼は時間をかけてアーティストの音楽を聴きました。Guv’Norにはたくさんの思い出がありますが、今でも一番印象に残っているのは、2019年の<Convenanze>のステージで「Goth Gene Vincent Sister of Mercy」として紹介されたことだと思います。 それは自信にもなりました。彼を失ったことは私たちにとって損失ですが、記憶の中で永遠に生き続けています。

ー2023年2月24日に再リリースされたLocal Suicide & Curses「It All Sounds The Same」が改良の上リマスターされたことで、次のレベルに引き上げられたと思います(※2019年にTusk Waxレーベルから数量限定で発売され売り切れていたが、再度リリース。現在はデジタルおよびヴァイナルで入手可能)。 2月17日(金)のVENT Tokyoで、Cursesの未発表曲や〈OMBRA INTERNATIONAL〉の未発表曲をプレイする予定はありますか?

未発表のCursesとOmbra INTL関連のものをVENT Tokyoでプレイすることは間違いありません!また、今後はいくつかの新しいコラボに加えて、SkelesysYounger Than Me as Y2Cとのコラボも予定しています。

前回の限定アルバム『Incarnadin』(Dischi Autunno)も同様にリリースされました。そしてパリのファッションブランド、サンローランとのいくつかのエクステンデッド・ミックスで、私は初めてDJを行います(ちょうど今週マスターを入手しました!)。

また、年末にリリースされる『NEXTWAVEACIDPUNX』コンピレーションを現在コンパイルしていることを発表できて、とても嬉しく思います。今回はエレクトロニックのライブアクトに焦点を当てています。いくつか例を挙げると、Nuovo TestamentoYears Of DenialULTRA SUNNPoison PointZaniasNeuromancerなどのアーティストや、Nitzer Ebbなどです。

今年は自分と友達からたくさんの新しい音楽が届きました。金曜日までにすべてをテストしてみるのに十分な時間があることを願っています。 その夜をとても楽しみにしています。

RELEASE INFORMATION

Curses
『INCARNADINE』
2022年リリース
Dischi Autunno

PROFILE

Curses(カーシス)

ニューヨーク出身、ベルリンを拠点に活動する国際的なDJ。2018年10月にJennifer Cardiniが主宰するレーベル〈Dischi Autunno〉からにリリースされたアルバム『Romantic Fiction』でデビュー。レーベル〈OMBRA INTERNATIONAL〉レーベルの運営も手掛けている。

【リンク】
BandCamp
https://cursesforever.bandcamp.com/music

OMBRA INTERNATIONAL on SoundCloud
https://soundcloud.com/ombrainternational

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