文: riko ito
SO-SO、RUSY、KAJI、Koheyという4名のヒューマンビートボックス・プレイヤーからなる関西発のクルーSARUKANI。ビートボックスの世界大会<Grand Beatbox Battle 2021>にてSO-SOとRUSYのペア、SORRYがタッグループ部門で日本人初の世界チャンピオンに輝いたほか、SARUKANIとしてもクルー部門で世界2位を獲得するなど、日本を代表するビートボクサー集団としての地位を確立している。
そんな彼らが、最新EP『THE WEAPON OF BEATBOX』を2023年4月3日にリリースした。収録曲「WE SAIKYO STRONG」や「HA-NI-HO-HE-TO-I-RO」で音楽シーンに爪痕を残していくようなグループとしての勢いを体感させつつ、ソロ曲で各々の技量の高さも示した今作。ライブのような臨場感と人間の口から発せられる音のみで構成されているとは信じがたいほどの重厚感、それぞれが違った個性を持つ4人だからこそ生み出せる高揚感があり、日本のビートボックスシーンを変えていこうという熱量の高さを体感できる作品に仕上がっている。
今回はメンバー4人にメールインタビューを実施。それぞれのルーツ、最新EP『THE WEAPON OF BEATBOX』のコンセプトや制作背景、ビートボックスシーンに込める想いと今後の展望について話を伺った。
SO-SO:
少年時代は劇団でミュージカルをやってました。中学生の時はSEKAI NO OWARIを中心にJ-POPなどを聴いていて、ある日YouTubeでREZZ(レズ)の曲をたまたま聴いた時から、ベースミュージックの虜になりました。Kohey:
ビートボックスを通じてダンスミュージックをメインに音楽が好きになりました。RUSY:
僕は昔、姉の影響でK-POPや洋楽を沢山一緒に聴いて育ってきました。そしてリズム感や相対音感の習得は両親がエレクトーン教室に通わせてくれていたのが大きかったと思います。また、中学生の頃にBillie Eilish(ビリー・アイリッシュ)の存在を知り、同い年ながらものすごく引き込まれる彼女の世界観や歌詞、曲調に人生で初めて音楽を聴いて鳥肌を立てて感動していました。今でも彼女の音楽は大好きでずっと聴いています。KAJI:
僕の音楽ルーツは『Dance Dance Revolution』という音楽ゲームです。幼少期にゲームをよくプレイしており、中でもNAOKIさんの楽曲(「PARANOiA」、「TRIP MACHINE」など)は今の自分の音楽スタイルに強く影響を与えています。数年経ってインターネットを使い始め、ニコニコ動画やFlashで有名だった電波ソングを好んで聴くようになり、その後VineでSkrillex(スクリレックス)の楽曲が流れてきたことがきっかけでEDMに釘付けになりました。ーSARUKANIの作品は、ジャンルの枠組みを自由に行き来する音楽性が印象的ですが、グループの音楽性に影響を与えているアーティストはいますか?
SO-SO:
SARUKANIはあまり他のアーティストを参考にしていません。なぜならビートボクサー4人という構成で音楽をやっているアーティストがいないからです。ー個々としても高い技量と実績をお持ちのみなさんですが、グループだからこそできると感じていることや、4人の化学反応を実感した瞬間のエピソードなどはありますか?
SO-SO:
音のレイヤーを生演奏でできることです。マイク4本だけでもかなり色んな音を生み出すことができます。Kohey:
僕ら4人の得意技がそれぞれ違っていて、僕なら高速ビート、SO-SOさんは喉ベースや声系のサウンド、KAJIさんはインパクトのある打撃音、RUSYは重低音など…。これらをうまく組み合わせると音の棲み分けが上手くいったり、すごく良い音が完成したりしますね。RUSY:
SARUKANIは4人それぞれ個性があって、それぞれ全員にできることできないことが均等に分かれていたり、性格も4人全員が違う為とにかくバランスが良いと楽曲制作の時によく思います。「こんな音出る人いる? 俺出るよ!」みたいなやりとりがとても楽しいです。KAJI:
SARUKANIというクルー自体が絶妙なバランスのもとに成り立っており、楽曲制作においての役割分担を個々がしっかり把握しているので、1人で考え得ないアイデアで常に溢れているところが強みだと思います。ー新EP『THE WEAPON OF BEATBOX』のコンセプトを教えてください。
SO-SO:
和訳すると「ビートボックスという武器」になります。ビートボックスのさまざまな強みを詰め込んだ一本録りから180トラック以上の壮大な曲まで幅広い楽曲が収録されています。Kohey:
EPの名前の通り、僕らの武器(音楽)はビートボックスだというメッセージを込めて作りました。RUSY:
4人それぞれの口から出た音でプロデュースされたビートボックス楽曲や、メンバーごとの楽曲をふんだんに詰め込みました。口から出ている音だとはにわかには信じがたいサウンドの楽曲を楽しんでいただきたいです。KAJI:
今回のEPはタイトル通り、今僕たちが持っている最強の武器を見ていただく、RPG序盤のキャラ紹介のようなイメージのEPです。個人のソロ曲や4人で制作した曲、あなたはどの曲がお好みか、じっくり聴き込んでみてください。ー今回のEPの制作過程を教えてください。
Kohey:
先にシングルでリリースした「HUMANBORG」を筆頭にKAJIプロデュースの「BEATBOX JANKEN」や SO-SOプロデュースの「The Weapon of Beatbox」、そしてそれぞれのソロビートボックス楽曲が完成していく、という流れで完成しました。ー全8曲の流れにこだわりを感じましたが、曲順やアルバムの構成などで意識された点はありますか?
Kohey:
「The Weapon of Beatbox」は「HUMANBORG」を匂わせるような演出で作られていて、そこからEPの幕開けとして「HUMANBORG」、メンバーそれぞれのソロ曲を聴いてもらい、その後僕とSO-SOが制作したシネマティック大作感満載の「WE SAIKYO STRONG」で締めるという、SARUKANIチームのプロデュース能力を堪能してもらう構成を意識しました。ー今作にはKAJIさんの「SCORPION」、RUCYさんの「Bounce Like」、Koheyさんの「Stuck」といったソロ曲が収録されています。グループ全員での楽曲と違いを感じた部分や、ソロ曲だからこそ挑戦できたことはありましたか?
Kohey:
「Stuck」は、バトルスタイルという普段の僕のビートボックススタイルとは違うニュアンスを取り入れていて、音楽/ショーケースとしても楽しんでもらえるような流れのある作品をイメージして作りました。グループの楽曲とは違い、1人だからこそより“ヒューマン”の要素を感じやすいと思うので、そういう風な部分でも楽しんでもらいたいです。RUSY:
今回のメンバーソロ楽曲はKAJI、RUSY、Koheyの生録音ビートボックス音源になっています。一本録りなのでトラック数が一つに収まっています。やはりビートボックスの面白さでもあり良さだと思います。KAJI:
「SCORPION」は、僕がYouTubeチャンネルで展開している『KAJIのオタクラジオ』(通称『KAJIラジ』)にて、視聴者と一緒にネタづくりをしようという企画のもと完成した一曲です。タイトルから曲中で使われたサウンドまで、僕1人だけでは絶対に成し得なかった渾身の一作であり、こうした制作過程も込みで僕自身のビートボックスに対するマインドを少し変えてくれた、思い入れのある一作です。ー『THE WEAPON OF BEATBOX』収録曲の中で気に入っている楽曲を1曲挙げるとしたら、どちらになるでしょうか?
SO-SO:
「WE SAIKYO STRONG」ですね。2年前に作った曲ですが、今でもこれよりクオリティの高い曲を作るのは相当難しいです。Kohey:
「HUMANBORG」がお気に入りの楽曲です。ボーカルはもちろん、人の口のみで奏でるサウンドで加工感も一切出さずロックを作るという、ビートボックスの可能性を押し広げた一曲だと思っています。RUSY:
「Bounce Like」です。僕はもともとループステーションをメインに活動していて、5年ぶりにソロバトルの部門にエントリーする際に作った楽曲です。頭を柔軟にしてフリースタイルセッション感に重きを置いたのでとても聴き馴染みもよく、ビートボックスを100%感じることができると思います。KAJI:
「BEATBOX JANKEN」ですね。僕が初めてプロデュースしたSARUKANIの楽曲なので、正直今回のEPの中では思い入れが何よりも強いです。アイデアこそ固まったものの制作途中で何度も心が折れそうになったんですが、メンバーの助けをフルに借りたおかげで過去の自分の作品の中でも格段に大好きになったクラブバンガー×エンターテイニングなものになりました。ー「WE SAIKYO STRONG」は2021年にリリースした「WE SAIKYO」を意識した楽曲かと思いますが、この楽曲に込めた想いや制作において工夫した点を教えてください。
SO-SO:
ゴジラやトランスフォーマーの予告編を見て音作りなどを研究し、ハリウッド映画のような壮大な世界観を口から出る音だけで作ってやるという想いで作りました。Kohey:
この楽曲を作るきっかけの一つに「映画館で『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』を観た」というものがあって、映画のワンシーンを観ているようなシネマティック感はそこからきていると思います。あとは“WE SAIKYO”の名に恥じない最強の曲を作ってやろうという気持ちがめちゃくちゃ色濃く出てますね(笑)。後半のハートビートと共に聞こえてくる機械音はトランスフォーマーの変形シーンからインスピレーションを受けて作りました。ーSARUKANIの楽曲には勢いがあり、リスナーが聴いた時に気持ちが高揚するものが多い印象ですが、こういったアプローチはライブでのパフォーマンスや盛り上がりを想定しているのでしょうか? また、楽曲作りにおいて大事にしていることを教えてください。
Kohey:
今回のEPの楽曲はライブでのパフォーマンスや盛り上がりは想定しながら作っていますね(クラウドコントロール面などでも)。KAJI:
僕たちが間違いなく良いと信じるものを作ることと、偶然生まれたアイデアを逃さないことです。僕たちはエンターテイナーでありアーティストでもあるので、楽曲制作に対する姿勢は何よりも誠実で妥協せずにいたいです。そして音楽に限らず、さまざまな要素からアイデアを引っ張ってくることがSARUKANIらしさを引き立てると考えています。音楽のフィールドに留まらずに動くということはメンバー全員が共通の考えだと思います。ー今回の制作を通して新たに気づいたことや、挑戦したことはありましたか?
SO-SO:
KAJIの歌声をアナライザーで見たら、倍音があまりにも多くて笑いました。Kohey:
ガッツリ歌うボーカルを起用したのは「HUMANBORG」が初めてでした。KAJIさんにシャウトとかさせてるし(笑)。 ビートボックスはダンスミュージックの要素を色濃く継いでますが、ドラムや効果音のみのインストだけでなくちゃんと歌モノも作れるんだなと今回実感しましたね。RUSY:
ソロのビートボックス楽曲をリリースすることですね。普通はDAW上で綺麗に置き換えられたものをリリースするのですが、そうではなく口から出た生音源をリリースしてみたら想像以上に好評をいただけていてとても嬉しく思います。KAJI:
インプットとアウトプットをしたのち、それらをいかに自分の思考の外から壊しにいくかが僕の制作スタイルだと気づきました。良いアウトプットをいかにぐちゃぐちゃにしてしまうか。これは楽曲制作でも、普段のビートボックスでも一緒ですねー2023年4月7日より札幌を皮切りに全国7都市ツアー<IROHANIHOHETO>をスタートしましたが、現段階の手応えや、ファイナル公演に向けてどういったツアーにしていきたいかを教えてください。
RUSY:
ご来場くださった皆様にビートボックスを全身で浴びていただき、世界でSARUKANIにしか奏でられない音楽をお届けできたらいいなと思っております。皆様がビートボックスを用いたライブをもっと観たいと思っていただけるようなツアーにしたいです。KAJI:
ツアーの手応えは正直かなりあります。最初の北海道公演は最初から最後まで盛り上がりっぱなしで、何より声出しと撮影がOKになったことが大きく達成感を与えてくれました。ー世界大会<Grand Beatbox Battle 2023>の本戦が今年の10月に東京で開催されますが、本戦に向けた意気込みなどをお伺いできると嬉しいです。
SO-SO:
史上初めて日本でGBBが開催されるということで、やはり母国ということもあり、たった一つ「優勝」という目標を掲げ、最高のショーケースをこれから作っていきます。ービートボックスシーンをどのように盛り上げていきたい、またはどういった変化をもたらしていきたいと考えていますか?
Kohey:
ビートボックスは元々、楽器の再現などのイメージが強いですが、モノマネやコピー品としてではなくビートボックスならではの良さや可能性を、ビートボックスというある種の楽器/音楽として広げていければいいなと思っています。RUSY:
ビートボクサーとしてではなく、1人のアーティストとして分け隔てなくブッキングしていただけるような機会が沢山増えていってほしいなと思っています。ー2022年は1st アーティストブック『猿蟹大百科』刊行や主催イベント<BEAT X FES 2022>の開催など、さまざまなことに挑戦をされていました。今後共演してみたい人やチャレンジしたいことを教えてください。
SO-SO:
人生で成し遂げたい夢の一つですが、ビートボックスの音だけで映画を作りたいです。Kohey:
大型フェスに立ちたいですね。僕らの生パフォーマンスは簡単に言ってしまえば「人からとんでもない音が出てる、すごい!!」と絶対なると思うし、あらゆる人達を楽しませるポテンシャルを秘めていると思っています。是非多くの方に知ってもらいたいです。RUSY:
SARUKANIとしては海外のフェスイベントにも露出していきたいと思っていて、個人としてもですがヒット曲を出して更にメジャーなアーティストに近づきたいです。KAJI:
挙げ出すとキリがないのですが、個人的に共演したいアーティストで言うとReolさん、石野卓球さん。音楽関係者以外だとVTuberグループROF-MAOのYouTubeに出演したいですね。RELEASE INFORMATION
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SARUKANI NEW EP『THE WEAPON OF BEATBOX』
2023年4月3日リリース
▼Track List
1.The Weapon Of Beatbox (Prod: SO-SO)
2. HUMANBORG (Prod: Kohey)
3. SCORPION by KAJI
4. BEATBOX JANKEN (Prod: KAJI)
5. HA-NI-HO-HE-TO-I-RO
6. Bounce Like by RUSY
7. Stuck by Kohey
8. WE SAIKYO STRONG (Prod: SO- SO&Kohey)▼各種ストリーミングURL
https://linkco.re/GEsmTQsN
EVENT INFORMATION
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SARUKANI 全国7都市ツアー<IROHANIHOHETO>
2023年4月7日(金) 札幌 ペニーレーン24
2023年5月13日(土) 福岡 DRUM LOGOS
2023年5月19日(金) 仙台 Rensa
2023年6月16日(金) 名古屋 ボトムライン
2023年7月9日(日) 広島 クラブクアトロ
2023年7月14日(金) 東京 Zepp DiverCity TOKYO
2023年7月22日(土) 大阪 Zepp Namba▼ツアー特設サイト
https://irohanihoheto.sarukani.net/
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